遺族年金はいくら出るか|生命保険の保障額を決める前に計算する

遺族年金はいくら出るか|生命保険の保障額を決める前に計算するのイメージ 公的保険のトリセツ

先に結論

  • 遺族年金は 遺族基礎年金遺族厚生年金 の2階建て
  • 遺族基礎年金(令和8年度)は 847,300円 + 子の加算。ただし 「子」がいないと出ない
  • 遺族厚生年金は、亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の 4分の3
  • 厚生年金の加入が短くても 300月(25年)加入したものとみなして計算される
  • 遺族年金は 非課税
  • 生命保険の必要保障額は「遺族の生活費 − 遺族年金 − 貯蓄 − 配偶者の収入」で決まる

生命保険を検討するとき、保障額をどうやって決めましたか。

「なんとなく3000万円」「営業の人に勧められた額」——もしそうなら、その金額は根拠がありません。

遺された家族には、公的年金から 遺族年金 が支給されます。この金額を計算せずに保険の保障額を決めるのは、すでに持っているお金を無視して買い物をしているのと同じです。

医療費については高額療養費制度、働けなくなったときの収入については傷病手当金を扱いました。この記事は3つ目、遺された家族の生活費の話です。

この記事の立場

私はFP2級を持っていますが、ここに書くのは制度の説明です。特定の保険商品を勧めることも、やめるよう勧めることもしません。金額は令和8年度のものです。

遺族年金は2階建て

日本の公的年金と同じ構造です。

対象内容
遺族基礎年金(1階)国民年金の加入者全員定額。ただし子がいる場合のみ
遺族厚生年金(2階)厚生年金の加入者(会社員・公務員)報酬比例。子がいなくても出る場合がある

会社員なら両方、自営業なら1階だけ。この差が非常に大きく効いてきます。

遺族基礎年金:子がいる家庭への給付

受け取れる人

死亡した方に生計を維持されていた 「子のある配偶者」または「子」 です。

ここでいう「」には年齢の定義があります。

「子」の定義

  • 18歳になった年度の3月31日までの子
  • 障害等級1級・2級に該当する場合は 20歳未満

つまり 末子が高校を卒業する年度末で、遺族基礎年金は終わります。子どもが独立するまでの期間限定の給付だと理解してください。

そして重要なのは、子がいなければ遺族基礎年金は1円も出ないということです。

金額(令和8年度)

区分金額(年額)
遺族基礎年金(子のある配偶者が受けるとき)847,300円
子の加算(1人目・2人目、各)243,800円
子の加算(3人目以降、各)81,300円

子が2人いる配偶者なら、

847,300円 + 243,800円 × 2人 = 1,334,900円(年額)
月あたり約 111,000円

遺族厚生年金:会社員・公務員の上乗せ

金額の計算式

亡くなった方の 老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3 です。

遺族厚生年金 =(A + B)× 3/4

A = 平成15年3月までの平均標準報酬月額 × 7.125/1000 × その期間の加入月数
B = 平成15年4月以降の平均標準報酬額   × 5.481/1000 × その期間の加入月数

「平均標準報酬額」は、賞与も含めた平均月収のようなものだと考えてください(過去の分は現在の価値に再評価されます)。

加入が短くても300月で計算される

ここが、あまり知られていない重要な点です。

在職中の死亡など一定の要件に当たる場合、厚生年金の被保険者期間が300月(25年)に満たなくても、300月加入したものとみなして計算されます。

20代・30代で亡くなった場合、実際の加入期間は数年しかありません。それをそのまま計算すると年金額が極端に小さくなってしまうため、最低25年分は保証する設計になっています。

300月みなしの効果

加入10年(120月)でも、計算上は 25年(300月)加入したものとして遺族厚生年金が算出される。若い世帯ほど、この仕組みの恩恵が大きい。

中高齢寡婦加算

一定の要件を満たす妻には、40歳から65歳になるまでの間、遺族厚生年金に加算があります。

令和8年度の中高齢寡婦加算:635,500円(年額)

末子が18歳年度末を過ぎて遺族基礎年金が終わったあと、妻が65歳で自分の老齢基礎年金を受け取り始めるまでの「空白期間」を埋めるための加算です。

なお、遺族基礎年金を受けられる間は、中高齢寡婦加算は受けられません。

計算してみる:会社員・妻・子2人の場合

条件を置いて計算します。

前提

  • 夫は会社員、平均標準報酬額45万円
  • 厚生年金の加入は平成15年4月以降のみ、加入10年(120月)で在職中に死亡
  • 妻と、18歳年度末までの子が2人

遺族厚生年金

加入120月 → 300月みなしで計算

報酬比例部分 = 450,000円 × 5.481/1000 × 300月 = 739,935円
遺族厚生年金 = 739,935円 × 3/4 = 554,951円(年額)

遺族基礎年金

847,300円 + 243,800円 × 2人 = 1,334,900円(年額)

合計

554,951円 + 1,334,900円 = 1,889,851円(年額)
月あたり 約157,000円

しかもこれは 非課税。手取りで月約15.7万円が、末子が18歳年度末を迎えるまで続きます。

この金額はあくまで一例です

平均標準報酬額、加入期間、加入時期(平成15年3月以前があるか)によって金額は変わります。正確な額は年金事務所か「ねんきんネット」で確認してください。 ねんきん定期便に記載されている報酬比例部分の見込額からも、おおよその見当がつけられます。

それで、生命保険はいくら必要か

必要保障額の考え方はシンプルです。

必要保障額 = 遺族の生活費・教育費の総額
             - 遺族年金
             - 配偶者の収入
             - 貯蓄・退職金
             - 住宅ローンの団体信用生命保険で消える住宅費

上の例なら、遺族年金だけで年189万円、18年間で 累計3400万円 ほどになります。ここに配偶者の収入と貯蓄が加わります。

さらに、住宅ローンを組んでいる方は 団体信用生命保険 を忘れないでください。契約者が亡くなればローンは完済され、以後の住居費は管理費・固定資産税などだけになります。持ち家世帯では、これが必要保障額を大きく引き下げます。

つまり、多くの家庭で「なんとなく3000万円」は過大です。逆に、次のケースでは必要保障額が大きくなります。

保障を厚くすべきケース

  • 自営業・フリーランス — 遺族厚生年金がない。遺族基礎年金だけで、しかも子が18歳年度末を過ぎたら終わる
  • 子どもがいない、または子が独立している — 遺族基礎年金が出ない
  • 賃貸住まい — 団信がないので住居費が丸ごと残る
  • 配偶者に収入がない、または収入が少ない

会社員・持ち家・子ありの世帯と、自営業・賃貸・子なしの世帯では、必要な保障額は桁が違います。他人の「平均」を参考にしても意味がありません。

2028年4月に大きく変わる予定

2025年(令和7年)に成立した年金制度改正法により、遺族厚生年金の見直しが2028年4月から段階的に施行される予定です。

誰が新しく「5年の有期給付」の対象になるのか

ここは男女で範囲がまったく違います。ニュースで「遺族年金が5年で打ち切りに」とだけ聞いて不安になっている方が多いので、正確に書きます。

新たに5年の有期給付の対象になる範囲
(子がいない)60歳未満
(子がいない)2028年度末時点で40歳未満

※いずれも「18歳年度末までの子がいない」場合

ここが一番の誤解ポイント

2028年度に40歳以上になる女性は、この見直しの影響を受けません。 現行どおり、期間の制限なく受け取れます。

「40代・50代の妻も5年で打ち切られる」という理解は誤りです。40歳未満の妻と、60歳未満の夫が対象です。

そもそもの狙いは男女差の解消です。現行制度では、子のない妻は年齢を問わず受給できる一方、子のない夫は55歳未満だと受給できません。この不均衡をならすため、夫の側を新たに対象に含めつつ、若い妻については有期給付に寄せていくという組み替えになっています。

対象になる妻の年齢は、2028年4月から長い期間をかけて段階的に引き上げられる予定です。

給付水準は上がる

有期給付になるかわりに、有期給付加算が上乗せされます。厚生労働省は「現在の遺族厚生年金の額の約1.3倍となります」と説明しています。

遺族基礎年金の子の加算額も増える

同じ改正パッケージに、遺族基礎年金の「子がいる場合の加算額」の増額が含まれています。厚生労働省は 年間約23.5万円 → 28万円 と説明しています。

金額の基準時点に注意

厚生労働省が示している「約23.5万円」は改正を検討していた時点の額です。子の加算額は毎年度改定されるため、令和8年度の実際の額は243,800円(この記事の上の表のとおり)です。増額後の水準がいくらになるかは、施行時点の改定率次第です。

施行は2028年4月の予定です

この記事の金額と仕組みは、2026年9月時点の現行制度のものです。 改正の詳細は今後の政省令等で固まります。将来の設計を考えるときは、必ず日本年金機構・厚生労働省の最新情報をご確認ください。

なお現行制度でも、30歳未満で子のない妻が受ける遺族厚生年金は5年間の有期給付です。

まとめ

  • 遺族基礎年金(令和8年度)は847,300円+子の加算。子がいなければ出ない
  • 遺族厚生年金は報酬比例部分の3/4。加入が短くても300月みなしで計算される
  • 中高齢寡婦加算は年635,500円(40〜65歳)
  • 遺族年金は非課税
  • 会社員・妻・子2人のモデルケースで月約15.7万円
  • 生命保険の保障額は、この金額を引いてから決める

「もしもの時に家族が困らないように」は正しい動機です。でもいくら足りないのかを計算せずに買う保険は、多すぎるか少なすぎるかのどちらかです。

まずねんきん定期便を開いてください。話はそこからです。

出典

本記事は2026年9月6日時点の公表内容に基づいています。年金額は毎年4月に改定されます。掲載の金額は令和8年度の額です。個別の受給額・要件は、年金事務所または「ねんきんネット」でご確認ください。

よくある質問

遺族基礎年金の「子」とは何歳までですか?

18歳になった年度の3月31日までの子です。障害等級1級・2級に該当する場合は20歳未満まで対象になります。つまり末子が高校を卒業する年度末で、遺族基礎年金は終わります。

子どもがいないと遺族年金はもらえないのですか?

遺族基礎年金はもらえません。遺族基礎年金は「子のある配偶者」または「子」が対象だからです。ただし亡くなった方が厚生年金に加入していれば、子がいなくても遺族厚生年金は支給される場合があります。

自営業だと遺族年金は少ないのですか?

少なくなります。自営業(国民年金の第1号被保険者)の場合、遺族厚生年金がないため遺族基礎年金だけになります。しかも子が18歳年度末を過ぎると、それも終わります。会社員世帯と比べて備えるべき金額は大きくなります。

厚生年金の加入期間が短くても遺族厚生年金は出ますか?

出ます。在職中の死亡など一定の要件に当たる場合、厚生年金の被保険者期間が300月(25年)に満たなくても、300月加入したものとみなして計算されます。若くして亡くなった場合でも金額が極端に小さくならないための仕組みです。

遺族年金が2028年から5年で打ち切りになると聞きました。私も対象ですか?

男女で範囲が違います。新たに5年の有期給付の対象になるのは、18歳年度末までの子がいない人のうち、夫は60歳未満、妻は2028年度末時点で40歳未満の方です。2028年度に40歳以上になる女性は見直しの影響を受けず、現行どおり期間の制限なく受け取れます。「40代・50代の妻も打ち切られる」という理解は誤りです。なお有期給付になる場合は有期給付加算が上乗せされ、厚生労働省は現在の額の約1.3倍になると説明しています。

遺族年金に税金はかかりますか?

かかりません。遺族基礎年金も遺族厚生年金も非課税です。所得税も住民税もかからず、受け取った額がそのまま生活費に使えます。

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