先に結論
- 財形貯蓄の利子非課税枠は550万円。この金額は1994年から一度も変わっていません
- その間に一般労働者の月額賃金はおよそ2割上がりました
- 40代で枠に届いてしまい、積立額を月1,000円まで下げて調整している人が実際にいます
- 厚生労働省の審議会で、非課税枠・年齢制限・預替えの見直しが議論されています
- まだ決まっていません。 2026年12月の税制改正大綱が節目です
給与明細に「財形」という天引き項目があっても、その非課税枠が32年間据え置かれていることまでは、あまり知られていません。
2026年7月15日、厚生労働省の労働政策審議会でこの見直しが議題になりました。決まったわけではありません。 ただ、何が問題として挙がっているかは、議事録から読み取れます。
財形貯蓄とは何か
勤労者財産形成促進法にもとづく、給与天引きの貯蓄制度です。1971年(昭和46年)に始まりました。
3種類あります。
| 種類 | 目的 | 積立期間 | 契約時の年齢 | 利子の非課税 |
|---|---|---|---|---|
| 一般財形貯蓄 | 自由 | 3年以上 | 制限なし | なし |
| 財形住宅貯蓄 | 住宅の取得・増改築 | 5年以上 | 55歳未満 | あり |
| 財形年金貯蓄 | 60歳以降の年金受取 | 5年以上 | 55歳未満 | あり |
非課税になるのは住宅と年金の2つだけです。一般財形貯蓄の利子には、通常どおり税金がかかります。
非課税になる金額
財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄をあわせて、元本550万円までの利子等が非課税です。
財形年金貯蓄のみで、生命保険・損害保険などによるものは払込ベースで385万円までとなります。
なぜ550万円で止まっているのか
この金額の沿革を、厚生労働省が分科会で説明しています。
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1971年(昭和46年) | 財形制度の創設 |
| 1975年 | 非課税限度額を100万円→500万円に |
| 1982年 | 財形年金貯蓄制度の創設 |
| 1994年(平成6年) | 非課税限度額を500万円→550万円に |
| 1994年〜2026年 | 変更なし |
32年、動いていません。
その一方で、賃金は動きました。厚生労働省が同じ分科会で示した賃金構造基本統計調査によれば、一般労働者の所定内給与は平成6年と比べておよそ2割上がっています。

枠が変わらなくて、何か困ることってあるの?

枠に届いてしまう人が出てきます。 そこから先は、積み立てを止めるか、非課税をあきらめるかの二択になります。
550万円に張り付いている人は、実際にいるのか
分科会には、財形を扱う労働金庫連合会が呼ばれ、自社のデータをもとに説明しています。
40代から非課税限度額の550万円近くに達している人が相当数いる、という報告のあと、こう述べています。
限度額が550万円に近くなったらどんな手続をしているのかといいますと、積立てを休止したり、あとは積立額を最低の1,000円まで減額したり、上限を超えないように調整している方がいらっしゃいます。
出典:厚生労働省「第36回労働政策審議会勤労者生活分科会 議事録」(令和8年7月15日)
制度に合わせて、積み立てのほうを止めているという状態です。50歳以上では、契約できる上限年齢の55歳になる前に駆け込みで申し込む動きも見られる、という報告もありました。
いま何が議論されているのか
分科会で事務局が示した論点は、大きく4つです。
検討されている4つの視点
- 非課税財形の加入開始可能年齢の上限(現在55歳未満)をどうするか
- ポータビリティ — 金融機関が財形業務をやめた場合などの預替えを認めるか
- 非課税限度額550万円をどうするか
- 財形住宅貯蓄の払出要件 — 現在は住宅の購入と大規模リフォームが対象
1つ目について、事務局はこう説明しています。
高齢者雇用安定法における法制度の整備でございますとか、高齢者の就業期間の長期化等を踏まえ、加入開始可能年齢の上限のあり方についてどう考えるか
3つ目については、こうです。
現行、年金・住宅を合算して550万円が上限とされているところ、この取扱いをどう考えるかというものでございます。
出典:いずれも同上
労働金庫連合会は、年齢制限の引上げ・非課税限度額の引上げ・ポータビリティの拡充の3点を要望として述べています。委員からも、加入年齢と非課税枠の引上げについて前向きな意見が出ました。
いつ決まるのか
ここから先は、まだ決まっていません
分科会は検討の途中です。この記事に書いた4つの論点は、方向性ですらありません。 どれも「どう考えるか」という問いの形で示されている段階です。
決まるまでの道筋は、こうなります。
- 労働政策審議会 勤労者生活分科会で検討する(いまここ)
- その結果を踏まえて、厚生労働省が税制改正を要望する
- 12月の税制改正大綱に盛り込まれるかどうかが決まる
- 盛り込まれれば、翌年の法改正へ
厚生労働省は令和9年度の税制改正要望に、「中小企業退職金共済制度及び勤労者財産形成促進制度の見直しに伴う税制上の所要の措置」をすでに挙げています。労働政策審議会で検討を行い、その結果を踏まえて措置を講ずる、という書き方です。
なぜ税制改正が必要になるのか
非課税限度額の550万円は租税特別措置法に、加入年齢の55歳未満は勤労者財産形成促進法に規定されています。
厚生労働省が分科会で説明したとおり、どちらを変えるにも法律の改正が必要です。省令や運用の見直しでは動きません。だから12月の大綱が節目になります。
いま財形を使っている人が確認しておくこと

決まっていないなら、いま何もすることはないよね?

1つだけあります。自分がいま枠のどのあたりにいるかを見ておくことです。もし引き上げられたとき、動けるかどうかが変わります。
残高照会で見ておくこと
- 財形住宅貯蓄と財形年金貯蓄の合計残高が、550万円のどのあたりにあるか
- 枠に近づいて積立額を下げたまま放置していないか
- 55歳が近い場合、契約できる年齢の上限に達していないか
引き出すときの注意
見直しの話とは別に、財形住宅貯蓄・財形年金貯蓄には払い出しの制限があります。ここは現行制度の話で、決まっていることです。
目的外の払出しは5年さかのぼって課税されます
国税庁は、目的以外の払出しが行われた場合、原則として5年間さかのぼって課税されるとしています。
ただし、平成28年4月1日以後に行った災害等一定の事情による目的外の払出しについては、遡及課税を行わない特例があります。
「貯まっているから使おう」と考える前に、その払出しが目的に合っているかを確認してください。
まとめ
- 財形貯蓄の利子非課税枠は、財形住宅・財形年金あわせて550万円
- この金額は1994年から動いていない。その間に賃金はおよそ2割上がった
- 40代で枠に達し、積立を止めて調整している人が実際にいる
- 厚生労働省の分科会で、非課税枠・年齢制限・ポータビリティ・払出要件が議論されている
- まだ決まっていない。 2026年12月の税制改正大綱が当面の節目
- 動かすには法改正が必要(非課税枠は租税特別措置法、年齢は財形法)

このサイトでは、決まる前の議論も追いかけます。 決まってから知るのと、議論の段階で知っておくのとでは、動ける幅が違うからです。
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出典
- 厚生労働省「第36回労働政策審議会勤労者生活分科会 議事録」(令和8年7月15日)
- 厚生労働省「令和9年度厚生労働省税制改正要望について」
- 厚生労働省「勤労者財産形成促進制度(財形制度)」
- 国税庁 タックスアンサー No.1316 財形住宅貯蓄
- 国税庁 タックスアンサー No.1319 財形年金貯蓄
本記事は2026年9月8日時点で公表されている内容に基づいています。この記事で紹介した見直しの論点は、いずれも決定事項ではありません。 財形貯蓄の取扱いや残高は、勤務先および契約している金融機関にご確認ください。
よくある質問
財形貯蓄の非課税枠はいくらですか?
財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄をあわせて、元本550万円までの利子等が非課税です。財形年金貯蓄のみで生命保険・損害保険などによるものは、払込ベースで385万円までとなります。一般財形貯蓄に利子非課税はありません。
550万円の非課税枠はいつから変わっていないのですか?
1994年(平成6年)に500万円から550万円へ引き上げられて以降、変わっていません。厚生労働省の資料によれば、その間に一般労働者の所定内給与は平成6年比でおよそ2割上昇しています。
財形住宅貯蓄や財形年金貯蓄は何歳まで始められますか?
契約締結時の年齢が55歳未満であることが要件です。この年齢制限は勤労者財産形成促進法第6条第2項に定められており、引き上げるには法改正が必要になります。
目的以外で引き出すとどうなりますか?
財形住宅貯蓄・財形年金貯蓄を目的外で払い出した場合、原則として5年間さかのぼって課税されます。ただし平成28年4月1日以後に行った災害等一定の事情による払出しには、遡及課税を行わない特例があります。
非課税枠の引き上げはいつ決まりますか?
まだ決まっていません。労働政策審議会の勤労者生活分科会で検討中で、厚生労働省は令和9年度税制改正要望に見直しを盛り込んでいます。例年12月に公表される税制改正大綱が、当面の節目になります。


