住宅ローンが払えなくなったら|破産の前に何が起きているか

住宅ローンが払えなくなったら|破産の前に何が起きているかのイメージ 家と住宅ローン

先に結論

  • 自己破産した1,233人のうち、自分名義の持ち家があったのは22人(1.78%)でした
  • 少ないのは住宅ローンが安全だからではなく、その手前で売っているからです
  • 売って終われるかどうかは、残債と売却額のどちらが大きいかだけで決まります
  • それは残高証明書と周辺の相場が分かれば、今すぐ計算できます
  • 詰まる手前には、返済方法の変更個人再生の住宅資金特別条項があります

「住宅ローンで破産」という見出しを見かけます。けれど記録を調べると、破産まで行った人の中に持ち家はほとんどありません。

この記事では、実際に何が起きているのかを、裁判所の記録調査と公的機関の資料から整理します。

自己破産した人に、持ち家はどれくらいあるのか

日本弁護士連合会は、全国の地方裁判所で確定した破産・個人再生の記録を、3年おきに調べています。2023年の調査は、破産1,233人分です。

住居の形はこうなっていました。

住居形態割合
本人所有1.78%(22人)
家族所有19.30%
持ち家でない74.21%(915人)
記入漏れ4.70%

負債の原因も、住宅とは離れたところにあります。複数回答での順位です。

原因割合
1生活苦・低所得65.86%
2病気・医療費26.44%
3生活用品の購入18.00%
4失業・転職17.36%
14住宅購入6.08%

平均の負債額は1,084万2,551円、平均の月収は13万8,038円でした。単身世帯が43.63%で、1997年の調査開始以降で最も高くなっています。

みぞれ
みぞれ

住宅ローンで破産する人は、あまりいないってこと?

しぐれ
しぐれ

そう読むのは早いです。 破産に持ち家が少ないのには、別の理由があります。

では、払えなくなった人はどうしているのか

行き詰まった人がまず取る行動は、家を売ることです。

そして売って残債を返し終われば、どこにも記録が残りません。 裁判所にも、信用情報機関にも行きません。ふつうの中古住宅の売買として市場に紛れます。

だから統計に出てくるのは、売っても終われなかった人だけです。 破産の22人も、その残りです。

「統計がないこと」自体が答えになっています

私は、返済が苦しくて家を売った人の件数を探しました。公的な統計はありませんでした。

私は、無いのは調査されていないからではなく、手続きとして残らないからだと考えています。

傍証はあります。国土交通省の令和6年度住宅市場動向調査では、住み替え前の住宅の処分方法は、どの住宅の種類でも「売却した」が最も多くなっています。注文住宅を建てた世帯が戸建てを処分した場合で83.3%です。

ただしこれは住み替えた世帯の調査であって、返済に困って売った人の調査ではありません。ここは混同しないでください。

家を売れば、それで終わるのか

差は、売却額が残債を上回るかどうかです。ここだけで、その後の道が分かれます。

状態どうなるか
アンダーローン売却額 > 残債通常の売買。記録は残らない
オーバーローン残債 > 売却額差額の返済方法を決める必要がある。ここから先が任意売却・個人再生・破産
しぐれ
しぐれ

つまり「詰むかどうか」は、売る前に分かります。

自分がどちら側かを確かめる

必要なのは2つだけです。

  1. 残債 … 金融機関から届く残高証明書、または年末残高等証明書で分かります
  2. 売却額の目安 … 同じ地域・同じ広さ・同じ築年数の成約価格を見ます

チラシに出ている売出価格ではなく、成約価格を見てください。 売出価格は「その値段で売りたい」という希望で、実際に売れた額とは違います。

2つが分かれば、引き算するだけです。

差が出たときの見方

  • 売却額が残債より大きい … 売れば終わります。手数料と税金を引いても残るかを確かめてください
  • 売却額が残債より小さい … 差額をどう返すかが問題になります。この段階なら、まだ選べる手が残っています

詰まる手前で使える制度(1)返済方法の変更

延滞する前に相談してください。 金融機関には、返済方法を変えるメニューがあります。

住宅金融支援機構(旧・住宅金融公庫、フラット35の窓口)の場合、3つの型が示されています。

内容向いている状況
Aタイプ返済期間の延長など(元金の支払いの一時休止を含む場合がある)失業や病気で収入が減った
Bタイプ一定期間、返済額を減額する一時的に月々を下げたい
Cタイプボーナス返済分の変更・取り止めボーナス返済が重い

いずれも手数料はかかりません(2026年9月10日時点の公表内容)。

ただし機構は、変更中および変更期間が終わったあとも返済を続けられることを確認するとしています。「返済が続けられる見込み」が前提なので、延滞が積み上がってからでは選べる幅が狭くなります。

相談先は機構ではなく、返済中の金融機関(申込先の金融機関)です。

しぐれ
しぐれ

制度があっても、使える時期を過ぎると使えません。 ここが一番の落とし穴です。

詰まる手前で使える制度(2)個人再生の住宅資金特別条項

家を残したまま、住宅ローン以外の借金を圧縮する手続きがあります。住宅資金特別条項(住宅ローン特則)です。

日弁連の2023年調査では、個人再生を申し立てた人の41.05%がこれを使っています(前回調査は37.99%)。

何ができるのか

裁判所の説明書には、こう書かれています。

基本的には,住宅ローンの滞納分を3年計画等で支払えば,期限の利益を失わなかったこととして,抵当権等の実行を阻止できます。

そして、ここを誤解しないでくださいという注意も付いています。

ただし,注意してもらわなくてはならないのが原則として全体の金額(利息や元金等等)を減額してもらえるわけではなく,住宅ローンの返済を繰り延べできるという特則ということです。

住宅ローンは減りません。 減額の対象になるのは、住宅ローン以外の債務です。

誰でも使えるのか

条件内容
建物の所有再生債務者本人が所有する建物であること
居住自分の居住用であること。店舗兼居宅なら床面積の2分の1以上に居住
ほかの担保住宅の建設・購入・改良以外の資金の債権について担保権が設定されていないこと
抵当権の範囲土地だけに抵当権が設定されている場合は使えません

「事業資金の担保に家も入れている」という形だと、この条項は使えません。

期間を延ばす型もある

支払いが困難な場合は、10年の期間延長(リスケジュール型)を選べます。

再生計画が終わるまで、元本の一部の支払いを猶予する計画も立てられます(民事再生法199条4項)。

ただし年齢の上限があります。 70歳を超える計画は立てられません(65歳の人は5年の延長が限界)。

この199条4項の利用は、前回調査の1.49%から6.58%に増えています。 期間を延ばして家を残す人が増えている、ということです。

保証会社が代わりに払ったあとは、6か月です

保証会社が代位弁済した場合、弁済日から6か月以内に申し立てないと、住宅資金特別条項を定められません(民事再生法198条)。

代位弁済の通知が届いた時点で、期限が動き始めています。

なお、開始決定がされると強制執行は中止されます。

競売も止められます。住宅資金特別条項を含む再生計画の認可の見込みがあると認められれば、申立てにより競売手続の中止を命じることができます(197条)。

個人再生そのものの条件

  • 将来にわたって継続的または反復して収入を得る見込みがあること
  • 住宅ローン等を除いた借金が5,000万円以下であること

小規模個人再生の最低弁済額の目安は、住宅ローンを除いた総額で決まります。

住宅ローンを除く総額最低弁済額
100万円未満総額全部
100万〜500万円100万円
500万円超〜1,500万円未満総額の5分の1
1,500万〜3,000万円300万円
3,000万円超〜5,000万円総額の10分の1

原則として3年で分割して支払います。ただし裁判所は、最低弁済額さえ払えばよいわけではないとしています。保険の解約返戻金や退職金見込額などを合計して、破産した場合の配当額のほうが大きければ、さらに高い金額でないと認可されません。

離婚については、数字がありません

住宅ローンの破綻を語るとき、現場では「借り過ぎか離婚」と言われます。

私は、離婚を原因とする住宅ローン破綻の統計を探しました。見つかりませんでした。

  • 日弁連の調査に離婚の項目自体はありますが、公表資料では数値を取り出せません
  • 任意売却や競売の理由別の統計を、公的機関は公表していません

あるように書くことはできません。 ここは、分からないままにしておきます。

しぐれ
しぐれ

分からないことを分からないと書くのも、記事の役割です。

相談する順番

順番があります

  1. 残債と売却額の目安を出す(残高証明書+成約価格)
  2. 延滞する前に、返済中の金融機関に相談する(返済方法の変更)
  3. 借金が住宅ローン以外にもあるなら、弁護士・司法書士に個人再生を相談する

1を飛ばすと、2も3も判断できません。 どちらの側にいるのかが分からないまま相談しても、選択肢を比べられないからです。

裁判所は、個人再生の手続きについて申立てに関する相談やアドバイスは一切行っていないとしています。手続きの選択に迷う場合は、弁護士や司法書士に相談してください。返済方法の変更については、返済中の金融機関が窓口です。

まとめ

  • 自己破産した1,233人のうち、自分名義の持ち家があったのは22人
  • 破産の原因の1位は生活苦・低所得(65.86%)。住宅購入は6.08%で14位
  • 少ないのは安全だからではなく、手前で売っているから。売って終われば記録に残らない
  • 分かれ目は残債と売却額のどちらが大きいか。これは今すぐ計算できる
  • 手前には返済方法の変更(手数料なし)と住宅資金特別条項(個人再生の41.05%が利用)がある
  • 住宅ローン自体は減りません。 繰り延べる仕組みです
  • 保証会社の代位弁済後は6か月という期限があります

不安の正体は、たいてい「どちら側にいるか分からないこと」です。引き算をすれば、それは不安ではなく状況になります。

出典

数値は2026年9月10日時点の公表内容です。制度の適用可否は個別の事情で変わります。返済方法の変更は返済中の金融機関の窓口へ、手続きの選択は弁護士・司法書士にご確認ください。

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よくある質問

住宅ローンが払えないと、すぐ家を取られますか?

すぐには取られません。金融機関には返済方法の変更メニューがあり、住宅金融支援機構の場合は手数料もかかりません。ただし変更後も返済を続けられることが条件になるため、延滞してからでは選べる幅が狭くなります。

個人再生をすると、住宅ローンも減りますか?

減りません。住宅資金特別条項は、住宅ローンの返済を繰り延べる仕組みです。裁判所の説明書にも「全体の金額を減額してもらえるわけではなく、住宅ローンの返済を繰り延べできるという特則」と書かれています。減額の対象になるのは住宅ローン以外の債務です。

保証会社が代わりに返済したあとでも間に合いますか?

保証会社が代位弁済した場合は、弁済日から6か月以内に申し立てないと住宅資金特別条項を定められません(民事再生法198条)。期限があるので、代位弁済の通知が届いた時点で専門家に相談してください。

家を売れば必ず解決しますか?

売却額が残債を上回るかどうかで変わります。上回るなら通常の売買として終わり、記録も残りません。下回る場合は差額の返済方法を決める必要があり、そこから先が任意売却や個人再生の話になります。

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