結論(4行)
- 審査で「借りられる額」の上限は、年収の35%まで返済に充ててよいという基準で決まる
- 実際の利用者は、年収の23.3%(中央値)を返済に充てている。上限とは10ポイント以上の開きがある
- 全国の年収倍率は中央値6.3倍。住宅の種類で幅があり、土地付注文住宅は7.6倍、中古戸建は5.1倍
- ただし返済負担率30%以上で借りている人が17.7%いる。上限に近づけて借りること自体は可能
住宅ローンを検討し始めると、最初に出てくる質問はたいてい「いくら借りられますか」です。 ただ、審査で通る額と、家計が無理なく返せる額は別のものです。
ここでは住宅金融支援機構の「2025年度フラット35利用者調査」(集計対象35,553件)と、 フラット35の利用条件をもとに、その差がどれくらいあるのかを数字で確認します。
「借りられる額」の上限は、制度で決まっている
フラット35の申込要件には、返済負担率の基準が明記されています。
フラット35の総返済負担率の基準
- 年収400万円未満:30%以下
- 年収400万円以上:35%以下
「すべての借入れに関して、年収に占める年間合計返済額の割合(=総返済負担率)が 次表の基準を満たす方」(住宅金融支援機構【フラット35】ご利用条件)
注意したいのは「すべての借入れ」という部分です。 住宅ローンだけでなく、 自動車ローンやカードローン、奨学金の返済も合算して判定されます。
借入額そのものの範囲は「100万円以上1億2,000万円以下(1万円単位)で、建設費または購入価額以内」、 借入期間は「15年以上」で、上限は「80歳」-「申込時の年齢」と35年のうち短いほうです。
つまり「年収の35%まで」が制度上の天井です。 年収600万円なら、年間210万円・ 月17.5万円までの返済が、計算上は認められることになります。
実際にみんなが返済に充てている割合
では、実際の利用者はどうしているのか。同じ調査の集計表から見ます。
2025年度・全国(35,553件)
- 総返済負担率:中央値 23.3%/平均 22.8%
- 年収倍率:中央値 6.3倍/平均 6.6倍
- 平均世帯年収:716万円(前年度+47万円)
- 平均年齢:43.3歳。「30歳代以下」の利用割合は45.1%
基準の上限35%に対して、実際の中央値は23.3%です。 多くの人は、 借りられる上限まで借りてはいません。
返済負担率の分布を見ると、幅がある
平均だけを見ると「だいたい2割強」で終わってしまいますが、分布を見ると事情が変わります。
| 総返済負担率 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 5%未満 | 265 | 0.7% |
| 5〜10%未満 | 1,597 | 4.5% |
| 10〜15%未満 | 4,098 | 11.5% |
| 15〜20%未満 | 6,662 | 18.7% |
| 20〜25%未満 | 7,876 | 22.2% |
| 25〜30%未満 | 8,748 | 24.6% |
| 30.0%以上 | 6,307 | 17.7% |
(住宅金融支援機構「2025年度フラット35利用者調査」集計表から作成。割合は当方で算出)
返済負担率30%以上で借りている人が、17.7%います。 およそ6人に1人です。 25%以上まで広げると、42.3%が該当します。
「実際にいる」と「無理がない」は別の話です
30%以上で借りている人が一定数いることは、その水準が安全だという意味ではありません。 この調査は借入時点の集計であり、その後の家計がどうなったかは分かりません。 教育費が増える時期や、修繕・固定資産税といった維持費が重なったときに、 どこまで耐えられるかは家庭ごとに違います。
住宅の種類で、実勢はかなり違う
同じ「住宅ローン」でも、何を買うかで数字が変わります。
| 住宅の種類 | 件数 | 価額の平均 | 世帯年収の平均 | 年収倍率(中央値) | 返済負担率(中央値) |
|---|---|---|---|---|---|
| 注文住宅 | 3,889 | 4,259万円 | 719万円 | 6.5倍 | 23.5% |
| 土地付注文住宅 | 7,733 | 5,313万円 | 742万円 | 7.6倍 | 27.1% |
| 建売住宅 | 8,345 | 4,215万円 | 680万円 | 6.6倍 | 24.3% |
| マンション | 2,823 | 5,882万円 | 1,041万円 | 6.5倍 | 21.3% |
| 中古戸建 | 7,296 | 2,783万円 | 580万円 | 5.1倍 | 20.6% |
| 中古マンション | 5,467 | 3,602万円 | 745万円 | 5.1倍 | 19.5% |
表の「価額」について
注文住宅・土地付注文住宅・建売住宅は調査上の項目名が「所要資金」(建設費や購入価額に 諸費用を含めた総額)、マンション・中古戸建・中古マンションは「購入価額」です。 同じ列に並べていますが、項目名が異なる点にご注意ください。
土地付注文住宅が、年収倍率・返済負担率ともにいちばん高くなっています。 土地と建物を同時に取得するため総額が大きくなりやすく、世帯年収(742万円)に対して 価額(5,313万円)の比率が上がるためです。
一方、マンションは価額の平均が最も高い(5,882万円)にもかかわらず、 返済負担率は21.3%と低めです。世帯年収の平均が1,041万円と、他の区分より 大きく高いことが影響しています。価格が高い=返済が重い、とは限りません。
「返せる額」を考えるときに抜けやすいもの
制度上の上限と実勢の差を見たうえで、自分の「返せる額」を考えることになります。 このとき、住宅ローンの返済額だけで判断すると足りません。
返済額以外に、住宅を持つと継続的にかかるもの
- 固定資産税・都市計画税(毎年)
- 修繕費(戸建は自分で積み立てる。マンションは修繕積立金・管理費として毎月)
- 火災保険・地震保険
- 住宅ローン返済中でも変わらない生活費(教育費は子の年齢とともに増える)
また、返済負担率の判定に自動車ローンや奨学金も含まれる点は、 借入可能額そのものに効いてきます。
この記事の数字は「借入時点」のものです。 借りた後に何が起きるかまでは含まれていません。 返済期間が30年を超えるなら、その間に収入も支出も変わります。
私が「返せる額」をどう決めたか

数字は分かったけど、結局どうやって決めればいいの?

審査で通る額から考えるのをやめました。 先に置いたのは、家計簿から出した「毎月いくらまでなら出せるか」のほうです。
年収から借入可能額を出すのは簡単です。ただしそれは貸す側の基準であって、自分の家計の話ではありません。最初にやったのは、家計簿をつけて、出せる額を実績から確かめることでした。
そのあとの順番はこうです。
家を決めるまでにやったこと
- 家計簿をつけて、大まかな出費可能額を出す
- 必要な家の大きさを考える
- その家が入り、価値の下がりにくい土地を選ぶ
- 相場から見て妥当な金額を考える
- 補助金などで、手出しをどこまで減らせるかを考える
- 太陽光などの設備は、生活費に落とし込んで要不要を判断する
- 思いつく限りの費用を入れて、ライフプランを作り直す
0を飛ばすと、3の「妥当な金額」を判断する物差しがありません。 相場が分かっても、自分の家計がそこに届くかどうかは別の話です。
5は、設備を本体価格で判断しないということです。太陽光を載せるかどうかは、載せる費用と、載せたあと毎月変わる光熱費を並べてはじめて決まります。設備は買い物ではなく、生活費の増減として見ます。
6が最後に来るのにも意図があります。ライフプランは最初に作って終わりではなく、条件が固まるたびに作り直すものでした。子どもの進学、車の買い替え、屋根や外壁の修繕、退職。いつ、いくら出ていくのかを年ごとに置いていきます。
並べてみると、住宅ローンの返済額は、その表の中の1行にすぎません。
安心して建てられたのは、この表があったからです。「たぶん大丈夫だろう」ではなく、「この年がいちばん苦しい。そこを越えれば楽になる」と分かった状態で契約できました。
長期の表を作ると見えること
- いちばん苦しい年がいつ来るか(多くは教育費と修繕が重なる時期)
- その年に、何を止めれば乗り切れるか
- その年までに、いくら現金を用意しておけばいいか

不安の正体は、たいてい金額ではなく「分からないこと」です。いちばん苦しい年の金額が分かっていれば、それは不安ではなく予定になります。
この表は、建てたあとも使えます。私はのちに1年間の育児休業を夫婦そろって取ることになりましたが、そのときも同じやり方で、先に減る額を計算してから決めました。 経緯は夫婦で同時に1年育休を取った話に書いています。
住宅ローンは、返し終わるまで続きます。 その間に何が起きるかを一度も並べないまま「借りられる額」で決めると、あとから来る支出を、そのつど場当たりで受け止めることになります。 並べるのは契約の前しかありません。
まとめ
- フラット35の基準は、年収400万円以上で総返済負担率35%以下。これが「借りられる額」の天井
- 実際の利用者の中央値は23.3%。上限とは10ポイント以上の開きがある
- 全国の年収倍率は中央値6.3倍。土地付注文住宅は7.6倍と高く、中古は5.1倍と低い
- 返済負担率30%以上で借りている人は17.7%いるが、それが無理のない水準という意味ではない
- 住宅ローン以外に、固定資産税・修繕費・保険料が継続的にかかる
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出典
本記事は2026年9月7日時点で公表されている内容に基づいています。この調査はフラット35(買取型・保証型)の利用者を集計したもので、民間ローンの利用者は含まれていません。個別の借入可能額・返済計画は、金融機関の窓口にご確認ください。
よくある質問
返済負担率は何%までに抑えるべきですか?
一律の正解はありません。フラット35の申込基準は年収400万円未満で30%以下、400万円以上で35%以下ですが、これは「審査に通る上限」であって「無理なく返せる目安」ではありません。実際の利用者の中央値は23.3%です。教育費や修繕費など、住宅ローン以外に必要になるお金は家庭ごとに違うため、個別に試算する必要があります。
年収倍率はどのくらいが普通ですか?
2025年度フラット35利用者調査では、全国の中央値が6.3倍、平均が6.6倍でした。ただし住宅の種類によって差があり、土地付注文住宅では中央値7.6倍、中古戸建では5.1倍です。
この調査の数字は、住宅を買う人全体の平均ですか?
いいえ。フラット35(買取型・保証型)の利用者を集計したものなので、民間の変動金利ローンを使った人は含まれていません。全体の傾向をつかむ材料として見てください。
借入可能額いっぱいまで借りると、何が起きますか?
返済そのものは可能でも、教育費が増える時期や、修繕・固定資産税といった住宅の維持費が重なったときに、家計の余裕がなくなります。返済負担率30%以上で借りている人は実際に17.7%いますが、それが安全という意味ではありません。


