先に結論
- 最初に口にした希望予算は、建てたい家の値段を調べる前に出た数字。建物・土地・外構・諸費用の4つを積み上げて、はじめて必要な額が出る
- フラット35で借りられる上限は、年収400万円以上なら総返済負担率35%以下。車のローンなども合わせた割合
- 実際の利用者が返済に充てている割合は年収の23.3%(中央値)。年収600万円・年3.460%・35年で計算すると、35%との差は借入額で約1,400万円
- 借入期間の上限は「80歳-申込時の年齢」と35年の短いほう。40代前半なら35年で組めるが、完済は70代後半
- 省エネ住宅の補助金は、登録した住宅事業者が申請する。予算の上限に達すると、締切の前でも受付が終わる
この記事はフィクションです
登場する鳥と、その家族構成・収入・やりとりはすべて創作です。実在の人物・団体とは関係ありません。
ただし、制度の内容と数字は、記事末尾の出典にある公的機関の資料にもとづいています。物語は制度を分かりやすくするための器で、判断のもとになるのは出典のほうです。
登場人物
| おこげ | シナモン文鳥。26歳・会社員。去年、転職した。ひとり暮らし。難しい話はすぐ忘れるが、分からないことを素直に聞けて、誰からも好かれる。(運営者が昔飼っていた文鳥がモデル) |
|---|---|
| あられ | セキセイインコ。32歳・会社員。共働きで1歳の子どもがいる。去年、育休から復帰した。お金の話は「損はしたくないが、調べる時間がない」 |
| こがらし | ジュウシマツ。41歳・会社員。子どもは小4と小1。家を建てるかどうかを考えている |
| ふぶき | オカメインコ。58歳・会社員。80代の親がいる。自分の年金も、そろそろ気になっている |
解説役のしぐれ(桜文鳥)と、質問役のみぞれ(白文鳥)は、これまでの記事と同じです。
金曜の夜、食卓で

住宅展示場の予約を入れたのは、こがらしの妻だった。あしたの十時、郊外の展示場。
夕飯のあと、上の子が「二階にぼくの部屋ある?」と聞いた。下の子は、チラシの間取り図に色鉛筆で丸をつけている。
妻が麦茶を置いて言った。「で、いくらの家なら建てられるの?」
「三千五百万円くらいかな」とこがらしは答えた。「ネットの計算機に年収を入れたら、四千万円ちょっと借りられるって出た。少し控えめにして、三千五百万」
「それ、建物の値段? 土地も入ってる?」
こがらしは答えられなかった。
この三千五百万円は、建てたい家の値段を調べる前に出た数字です。 借りられる額から少し引いただけで、どんな家が建つかとはつながっていません。希望予算がどこから出てくるかは、家づくりの予算は、希望から決めると足りなくなるで整理しています。
紙に、四つの行を書いた
妻がメモ用紙を出した。「足していこうよ。何が要るの」
こがらしは、昼休みにふぶきから言われたことを思い出していた。会社の先輩のふぶきは、四十歳のときに家を建てている。
「展示場で見るのは、建物の値段だけだぞ。うちは外構を後回しにして、駐車場が三年、砂利のままだった。見積りに何が入ってるか、先に聞いとけ」
紙には、四つの行ができた。
| 項目 | 金額 | どこから出した数字か |
|---|---|---|
| 建物 | 2,500万円 | ネット広告の「〜万円から」 |
| 土地 | 1,500万円 | 学区内で妻が見つけた土地 |
| 外構 | ? | 分からない |
| 諸費用 | ? | 分からない |
「建物と土地だけで、もう四千万円」と妻が言った。
外構と諸費用の行は、空いたままだった。空欄は、ゼロ円ではありません。
必要な予算は、この4つの合計
- 建物 … 建てたい広さと仕様で決まる。広告の「〜万円から」が、建てたい家の値段とは限らない
- 土地 … 希望するエリアと広さの相場から置く
- 外構 … 駐車場、アプローチ、フェンス。後から削りにくい
- 諸費用 … 登記、火災保険、住宅ローンの手数料。引っ越しと家具も要る
土地を買って注文住宅を建てる場合は、もうひとつ費用が増えることがあります。フラット35では、資金を受け取るのが建物の完成後になるためです。
フラット35には、中間資金はありません。もし、フラット35の資金実行時期までに資金が必要な場合は、つなぎ融資を用意している金融機関もありますので、金融機関にご相談ください。
出典:住宅金融支援機構【フラット35】よくある質問
土地の代金や着工金は、完成より前に払います。その間をつなぐ借入れの利息や手数料も、諸費用の行に足すことになります。支払いの順番は注文住宅と建売・マンションで、お金の流れはどう違うかに書いています。
土地から建てた人は、いくらかけているか
住宅金融支援機構の「2025年度フラット35利用者調査」に、土地を買って注文住宅を建てた人の平均が載っています。調査の区分では「土地付注文住宅」です。
2025年度・土地付注文住宅(全国7,733件の平均)
- 建設費 3,737.6万円
- 土地取得費 1,575.3万円(首都圏は2,590.0万円、その他地域は1,016.5万円)
- 合計(所要資金)5,313万円
- 利用者の平均年齢 40.1歳
こがらしの紙の「建物 2,500万円」は、この建設費の平均より1,200万円以上低い数字でした。 土地の値段は地域で大きく違います。一方で建設費は、首都圏・近畿圏・東海圏・その他地域のどれも3,600万〜3,900万円の間に収まっています。
この数字の読み方
フラット35(買取型・保証型)の利用者だけを集計した平均です。民間の住宅ローンを使った人は入っていません。また、この表の所要資金は建設費と土地取得費の合計で、外構や諸費用が含まれるかどうかは書かれていません。
計算機の数字に、車のローンが入っていなかった
妻が聞いた。「計算機の四千万円って、車のローンも入れた?」
こがらしの家には、車のローンがあと四年残っている。入れていなかった。
フラット35の申込みの条件には、こう書かれています。
すべての借入れ※に関して、年収に占める年間合計返済額の割合(=総返済負担率)が次表の基準を満たす方
出典:住宅金融支援機構【フラット35】ご利用条件(2026年4月1日現在)
基準は、年収400万円未満なら30%以下、400万円以上なら35%以下です。「※」の中身も書かれています。
※【フラット35】のほか、【フラット35】以外の住宅ローン、自動車ローン、教育ローン、カードローン(クレジットカードによるキャッシング、商品の分割払いやリボ払いによる購入を含みます。)などをいいます(収入合算者の分を含みます。)。
出典:同
35%は、住宅ローンだけの枠ではありません。 車のローンの返済があれば、その分だけ住宅ローンに回せる額は減ります。
上限の35%と、みんなの23.3%
こがらしは計算をやり直すことにした。年収は600万円。
計算の前提をそろえます。金利は、住宅金融支援機構が公表している2026年9月の金利を使います。9月に資金を受け取る【フラット35】で最も多い金利は、年3.460%でした(借入期間21〜35年・融資率9割以下)。35年・元利均等・ボーナス返済なしとして、車のローンがない場合で計算します。
| 年収に占める返済の割合 | 年間の返済額 | 毎月の返済額 | 借入額の目安 |
|---|---|---|---|
| 35%(フラット35の基準の上限) | 210万円 | 17.5万円 | 約4,260万円 |
| 23.3%(2025年度の利用者の中央値) | 約140万円 | 約11.7万円 | 約2,830万円 |
同じ年収、同じ金利で、借入額に約1,400万円の差があります。 35%は、審査に通るかどうかの線です。2025年度の利用者調査では、実際の利用者が返済に充てている割合は年収の23.3%(中央値)でした。
金利にも、注意がひとつあります。
申込時ではなく、資金受取時の金利となります。
出典:住宅金融支援機構【フラット35】ご利用条件
試算の金利を、いまより低く置かない
フラット35で注文住宅を建てる場合、資金を受け取るのは建物が完成したあとです。展示場を回り始めたばかりのこがらしの家族なら、受け取るのは早くても来年になります。そのときの金利は、いまは分かりません。 金利を低く置くと、借りられる額が実際より大きく出ます。
詳しくは「借りられる額」と「返せる額」は違うに書いています。
41歳で、35年

ふぶきは、昼休みにもうひとつ言っていた。
「何歳まで払うのか、先に決めとけ。おれは建てたとき、六十から先のことなんか考えなかった。あと二年で六十だ。再雇用で給料がどうなるか、先月やっと人事に聞いた」
フラット35の借入期間は、こう決まっています。
15年(申込みご本人または連帯債務者が満60歳以上の場合は10年)以上で、かつ、次の(1)または(2)のいずれか短い年数(1年単位)が上限となります。
出典:住宅金融支援機構【フラット35】ご利用条件
(1)は「80歳」から申込時の年齢(1年未満は切り上げ)を引いた年数、(2)は35年です。申込時の年齢が満70歳未満であることも条件です。
こがらしが来年申し込むなら、(1)は35年より長くなります。上限は、短いほうの35年です。35年で借りれば、完済は70代の後半です。
契約の前に確かめること
- 何歳まで働くつもりか
- 勤め先の再雇用の制度(65歳以降も働けるか、収入はどう変わるか)
- 完済するときの年齢
万一のときの保障と住宅ローンの関係は、団信に入ったら、生命保険はいくら減らせるかに書いています。
補助金は、あてにしていいか
妻が、展示場の案内をスマートフォンで見せた。「『省エネ住宅なら補助金が使えます』って書いてある。これで外構の分くらい浮かない?」
令和8年度の国の住宅の省エネ補助金は、国土交通省・経済産業省・環境省の「住宅省エネ2026キャンペーン」にまとめられています。まず、申請するのは施主ではありません。
本キャンペーンの各事業は、消費者等と契約する住宅事業者が交付申請等の手続きを行います。
出典:「住宅省エネ2026キャンペーン」公式サイト
契約する建築会社が事業に登録していなければ、その家では使えません。 新築の補助(みらいエコ住宅2026事業)では、登録事業者が補助金を受け取り、原則として契約代金の最終支払に充てる形で施主に還元します。
長期優良住宅とZEH水準住宅の新築は、子育て世帯か若者夫婦世帯に限られます(GX志向型住宅は世帯を問いません)。子育て世帯の定義はこうです。
申請時点において、子を有する世帯。
※子とは、令和7年4月1日時点で18歳未満(すなわち、平成19(2007)年4月2日以降出生)とする。
出典:「みらいエコ住宅2026事業」事業概要
小学生の子が2人いるこがらしの家は、ここに当てはまります。ただし、使えるかどうかは時期でも決まります。
今年度の受付は、遅くとも年内で終わる
- 各事業とも、予算の上限に達し次第、交付申請(予約を含む)の受付が終わります
- みらいエコ住宅2026事業の交付申請は遅くとも2026年12月31日まで。注文住宅の交付申請の予約は遅くとも2026年11月16日までです
- 注文住宅のZEH水準住宅は、2026年9月30日で受付を終了しました。いま契約する家は、ZEH水準ではこの事業を使えません(長期優良住宅・GX志向型住宅は続いています)
- 予算に対する申請額の割合は、公式サイトで毎日公表されています
これから建築会社を決めて契約するこがらしの家族が、今年度の受付に間に合うとは限りません。事業名も、年度ごとに変わります。
こがらしは、紙の余白に書いた。「補助金 使えたら助かる。予算には入れない」
事業ごとの補助額は住宅の省エネ関連補助金にまとめています。
展示場で聞くことを、三つに決めた
夜の十一時、紙の下のほうに、こう書き足してあった。
あした、展示場で聞くこと
- 見積りに、外構と諸費用はどこまで入っているか(入っていないものは、いくら見ておけばいいか)
- 住宅省エネ支援事業者に登録しているか(補助金はどう還元されるか)
- 支払いは、いつ、いくらずつか(土地・着工・中間・引渡し)
「毎月いくらまでなら返せるかは、展示場では決まらないね」と妻が言った。「家計簿、来月からちゃんとつけよう。うちの数字で出さないと」
こがらしはうなずいた。三千五百万円という数字は、紙のどこにも残っていなかった。
この記事の鳥:ジュウシマツ
ジュウシマツは、野生にはいない鳥です。祖先はコシジロキンパラという野生の鳥とされ、人に飼われるなかで作られてきました。子育てが上手なことで知られ、ほかの鳥の卵やひなを代わりに育てる「仮母(かりぼ)」に使われることがあります。この物語では、その子育て上手な鳥に、子どもの部屋を考える父親の役をあてています。こがらしにとっての家づくりは、家族の巣づくりです。

展示場に行く前に、ここまで決めておかないといけないの?

全部うまっていなくても、かまいません。空欄の行があると分かったうえで行くと、聞くことが決まります。
借りられる上限は制度で決まります。返せる額は、家計で決まります。 家計の数字は、家族にしか出せません。
鳥たちの話(連作)
- 「ふるさと納税、やってる?」と同窓会で聞かれて ― おこげ・あられ・こがらし|ふるさと納税の2,000円と限度額
- 住宅展示場に行く前の晩に ― こがらし|家の予算と、借りられる額の上限
- 「年金、今から遅らせられる?」と親に聞かれて ― ふぶき|繰下げと、選べるのは誰か
- 年末調整の紙が配られた日 ― おこげ|転職した年の年末調整
- 領収書の箱を開けた夜 ― あられ|医療費控除と、ふるさと納税のワンストップ特例
- 急に入院した週 ― おこげ|高額療養費と傷病手当金
- 控除証明書が何通も届いた ― ふぶき|生命保険料控除の3つの欄と12万円の上限
- 引っ越しで児童手当が二か月分消えた ― あられ・こがらし|転出から15日という締め切り
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出典
- 住宅金融支援機構【フラット35】ご利用条件
- 住宅金融支援機構【フラット35】金利情報
- 住宅金融支援機構「2025年度フラット35利用者調査」
- 住宅金融支援機構「2025年度フラット35利用者調査(調査結果)」
- 住宅金融支援機構【フラット35】資金実行までにお金が必要な場合、中間資金はありますか。
- 「住宅省エネ2026キャンペーン」公式サイト
- 「みらいエコ住宅2026事業」事業概要
登場する鳥と、そのやりとりはすべて創作です。本記事は2026年10月7日時点で公表されている内容に基づいています。借入額は2026年9月の金利で計算した目安で、実際に借りられる額は金融機関の審査で決まります。個別の資金計画は金融機関の窓口に、補助金の対象と受付の状況は各事業の公式サイトでご確認ください。
よくある質問
住宅展示場に行く前に、予算は決めておいたほうがいいですか?
金額を1つに決めるより、建物・土地・外構・諸費用の4つを書き出しておくと、展示場で何を聞けばいいかが決まります。外構や諸費用が見積りに入っているかどうかは会社や見積りによって違うため、その場で確かめてください。
年収600万円だと、住宅ローンはいくらまで借りられますか?
フラット35の基準では、年収400万円以上は総返済負担率35%以下です。年収600万円なら返済は年210万円・月17.5万円までで、2026年9月の最も多い金利(年3.460%)・35年・元利均等で計算すると約4,260万円です。ただし車のローンなどの返済も35%に含まれ、実際に借りられる額は金融機関の審査で決まります。
41歳から35年の住宅ローンは組めますか?
フラット35の借入期間の上限は「80歳-申込時の年齢(1年未満切上げ)」と35年のうち短いほうです。40代前半なら上限は35年ですが、完済は70代後半になります。何歳まで働くか、勤め先の再雇用の制度はどうなっているかを、契約の前に確かめてください。
省エネ住宅の補助金は、予算に入れて計算してもいいですか?
住宅省エネ2026キャンペーンの補助金は、契約する住宅事業者が交付申請を行います。事業者が登録していなければ使えず、予算の上限に達すると締切の前でも受付が終わります。契約の時期に使える事業があるかを確かめてから入れてください。


