控除証明書が何通も届いた|生命保険料控除の3つの欄と12万円の上限

控除証明書が何通も届いた|生命保険料控除の3つの欄と12万円の上限のイメージ 税金と控除

先に結論

  • 生命保険料控除の欄は3つ。一般の生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料。どの欄かは証明書に書いてあり、別の欄に振り替えることはできない
  • 同じ欄に新契約(平成24年1月1日以後)と旧契約(平成23年12月31日以前)が混ざることがある。新だけ・旧だけ・両方の3通りを計算し、いちばん大きい金額を使う
  • 3つの欄を合計した上限は12万円。届くかどうかは、全部を計算してからでないと分からない
  • 地震保険料控除(上限5万円)とiDeCo(小規模企業共済等掛金控除・全額)は、別の枠。生命保険の欄が上限で止まっても、こちらは止まらない

この記事はフィクションです

登場する鳥と、その家族構成・収入・やりとりはすべて創作です。実在の人物・団体とは関係ありません。
ただし、制度の内容と数字は、記事末尾の出典にある公的機関の資料にもとづいています。物語は制度を分かりやすくするための器で、判断のもとになるのは出典のほうです。

登場人物

おこげ シナモン文鳥。26歳・会社員。去年、転職した。ひとり暮らし。難しい話はすぐ忘れるが、分からないことを素直に聞けて、誰からも好かれる。(運営者が昔飼っていた文鳥がモデル)
あられ セキセイインコ。32歳・会社員。共働きで1歳の子どもがいる。去年、育休から復帰した。お金の話は「損はしたくないが、調べる時間がない」
こがらし ジュウシマツ。41歳・会社員。子どもは小4と小1。家を建てるかどうかを考えている
ふぶき オカメインコ。58歳・会社員。80代の親がいる。自分の年金も、そろそろ気になっている

解説役のしぐれ(桜文鳥)と、質問役のみぞれ(白文鳥)は、これまでの記事と同じです。

十月、封筒が七通たまった

夜の台所で、届いた控除証明書の封筒を七通並べて見比べるオカメインコのふぶき

十月に入ってから、ふぶきの家のポストに封筒が次々に届いた。

社会人になって数年で入った終身保険と個人年金保険。四十代で入り直した医療保険。子どもが独立したあとの定期保険。つれあいの名前が印字された一通。火災保険の会社から来たもの。それと、iDeCoの払込証明書。

日曜の夜、ふぶきは台所に七通を並べた。会社の締め切りは十一月の第二金曜日だ。

保険料控除申告書の生命保険料控除の欄は、上下に三つに区切られている。封筒は七通ある。数が合わない。

「どれを、どこに書くんだ」

三つ年下のつれあいが、湯のみを置いて言った。「去年も同じこと言ってたよ」

七通の紙を、三つの欄と二つの別の枠に仕分ける話です。 順に確かめます。

欄は三つ、時期は二つ

生命保険料控除の欄は、一般の生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料の3つに分かれています。

同じ区分の中には、契約した時期による分かれ方もあります。平成24年1月1日以後に締結した契約が新契約、平成23年12月31日以前が旧契約です(国税庁 タックスアンサー No.1140)。どの区分か、新旧どちらかは、届いた証明書に印字されています。

書く人が選び直すことはできません。

新生命保険料を旧生命保険料に含めることや新個人年金保険料を介護医療保険料に含めることなど、支払った保険料の区分を他の区分に振り替えることはできません。

出典:国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」

ふぶきの七通のうち、生命保険料控除の欄に入るのは五通だった。つれあいの名前の一通はあとに回して、まず四通を並べた。

届いた証明書書く欄契約年間の保険料
若いころの終身保険一般の生命保険料旧96,000円
子の独立後の定期保険一般の生命保険料新36,000円
四十代で入り直した医療保険介護医療保険料新48,000円
若いころの個人年金保険個人年金保険料旧80,000円

(金額はこの記事のための設例です)

同じ欄に、新と旧があるとき

一般の生命保険料の欄に、旧契約と新契約が一枚ずつ。ここが、いちばん取り違えやすいところです。

生命保険料の控除額は、次の表により計算した一般の生命保険料の控除額(①、②、③のうち最も大きい金額)、介護医療保険料の控除額及び個人年金保険料の控除額(④、⑤、⑥のうち最も大きい金額)の合計額となります。

出典:国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」

①は新契約だけで計算した額、②は旧契約だけで計算した額、③は①と②を足した額(一般は最高4万円)です。3通りとも出して、いちばん大きいものを使います。

契約年間の支払保険料等控除額
新2万円以下その全額
新2万円超4万円以下×1/2+1万円
新4万円超8万円以下×1/4+2万円
新8万円超一律4万円
旧2万5,000円以下その全額
旧2万5,000円超5万円以下×1/2+1万2,500円
旧5万円超10万円以下×1/4+2万5,000円
旧10万円超一律5万円

ふぶきの一般の生命保険料は、こうなります。

① 新契約だけ  36,000円 × 1/2 + 10,000円 = 28,000円
② 旧契約だけ  96,000円 × 1/4 + 25,000円 = 49,000円
③ ①+②      28,000円 + 49,000円 = 77,000円 → 最高40,000円

いちばん大きいのは② → 一般の生命保険料の控除額は 49,000円

足したほうが大きくなるとは限りません。 旧契約の保険料が多い人ほど、②が残ります。新旧のどちらを適用するか、両方を適用するかは任意に選べると、国税庁の質疑応答事例も示しています。

23歳未満の子がいる人は、一般の欄の表が変わります

令和8年分から、年齢23歳未満の扶養親族がいる場合の一般の生命保険料の計算式が別に設けられました。上限は6万円で、令和8年分と令和9年分の扱いです(国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」)。対象は一般の新生命保険料だけです。3区分を合計した12万円の限度額は、改正前と変わりません。

ふぶきの子はすでに独立しているので、この表は使いません。令和10年分以後は、2026年12月の税制改正大綱で決まります。

つれあいの名前で届いた証明書

五通目は、つれあいが契約者になっている保険の証明書だった。保険料は、ふぶきの口座から引き落とされている。

「これ、ぼくの紙じゃないよね」

契約者の名前と、控除を受ける人は、同じでなくてかまいません。

生命保険料控除の対象となる生命保険契約等とは、一定の生命保険契約等で、その保険金等の受取人のすべてをその保険料の払込みをする者またはその配偶者その他の親族とするものをいい、契約者が誰であるかは要件とされていません。

出典:国税庁 タックスアンサー No.1140「生命保険料控除」Q1

条件は二つです。受取人のすべてが、本人か、その配偶者その他の親族であること(個人年金保険料は本人か配偶者)。そして、その保険料を本人が払ったこと。国税庁は、勤務先が確かめる点として次を挙げています。

本人自身が支払ったものであるかどうか。

出典:国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」

払ったのが一方なら、控除を受けられるのもその一方です。同じ保険料を、夫婦がそれぞれの年末調整で使うことはできません。

国税庁は、次の点にも触れています。

なお、保険料を誰が負担するかによって、将来受け取る保険金の課税関係が異なる(贈与税又は一時所得として課税が生じる)ことに注意が必要です。

出典:国税庁 質疑応答事例(源泉所得税)「妻名義の生命保険料控除証明書に基づく生命保険料控除」

誰の口座から出ているかは、今年の控除の話だけで終わりません。

三つを足したら、12万円で止まった

残る二つの欄も計算します。

介護医療保険料   48,000円 × 1/4 + 20,000円 = 32,000円
個人年金保険料   80,000円 × 1/4 + 25,000円 = 45,000円(旧契約だけ)

49,000円 + 32,000円 + 45,000円 = 126,000円

ここで、上限にぶつかります。

なお、一般の生命保険料の控除額、介護医療保険料の控除額及び個人年金保険料の控除額の合計額が12万円を超える場合には、生命保険料の控除額は最高12万円が限度となります。

出典:国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」

ふぶきの生命保険料控除は、12万円でした。つれあいの分をふぶきの側で書き足しても、合計はすでに上限に届いています。

それでも、届いた証明書はすべて出します。 12万円に届いているかは、全部を計算してからでないと分からないからです。

証明書が見つからないとき

  • 証明書類が要るのは、旧生命保険料は一契約9,000円を超えるもの。それ以外は金額にかかわらずすべて
  • 交付を請求中などで間に合わないときは、翌年1月末日までに出すことを条件に、控除して年末調整をしてよいことになっています
  • 期日までに出さないと、その保険料を除いて計算し直し、不足額を徴収されます
  • 年末調整に間に合わなかった分は、確定申告で控除を受けられます(国税庁 No.1140)

火災保険の封筒は、別の枠

六通目は、火災保険の会社からのものだった。生命保険料控除の欄には入りません。地震保険料控除という、別の枠です。

区分年間の支払保険料の合計控除額
地震保険料5万円以下支払金額の全額
地震保険料5万円超一律5万円
旧長期損害保険料1万円以下支払金額の全額
旧長期損害保険料1万円超2万円以下支払金額×1/2+5,000円
旧長期損害保険料2万円超1万5,000円

出典:国税庁 タックスアンサー No.1145「地震保険料控除」

ふぶきの証明書には、地震保険料が32,000円と印字されていた。5万円以下なので、全額が控除額です。両方がある場合の合計も、最高5万円になります。

「旧長期損害保険料」は、平成19年分から廃止された損害保険料控除の経過措置です。対象は平成18年12月31日までに締結した契約です。満期返戻金などがあり、期間が10年以上で、平成19年1月1日以後に変更をしていないものにかぎられます。古い積立型の損害保険が続いている人は、証明書にこの欄があります。一つの契約で両方の証明が出ているときは、どちらか一方を選びます。

iDeCoは、生命保険料控除ではない

会社の休憩スペースで書類を広げるオカメインコのふぶきと、紙コップを持ってのぞきこむシナモン文鳥のおこげ

最後の一通は、iDeCoの「小規模企業共済等掛金払込証明書」だった。

月曜日の昼、休憩スペースで書類を広げていると、後輩のおこげが紙コップを持って通りかかった。

「先輩、これ去年もらったやつですよね」 「そう。おこげくんのは、どうだった」 「ほとんど空欄でした。国民年金のところだけで」

iDeCoの掛金は、生命保険料控除ではなく、小規模企業共済等掛金控除の欄に書きます。申告書では、いちばん下の段です。

控除できる金額は、その年に支払った掛金の全額です。

出典:国税庁 タックスアンサー No.1135「小規模企業共済等掛金控除」

計算式も上限もありません。ふぶきの掛金は年間240,000円で、そのまま控除額になります。

給与から天引きされている分は、証明書類が要りません。本人が直接払っている分は、金額の多少にかかわらず証明書類を添えます(国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」)。

締め切りの前の日

十一月の第二木曜日、ふぶきは申告書と証明書を封筒に入れた。

生命保険料控除            120,000円(上限)
地震保険料控除             32,000円
小規模企業共済等掛金控除    240,000円

枠が違えば、上限も別々にある。 七通の封筒は、三つの欄と、二つの別の枠に分かれた。

この日の結論(控除証明書が何通も届いたとき)

  1. 証明書の区分(一般・介護医療・個人年金)と新旧を、先に読む
  2. 同じ欄に新旧があるなら、新だけ・旧だけ・両方の3通りを計算して、大きい額を使う
  3. 三つの欄の合計は12万円まで。届くかどうかは計算しないと分からない
  4. 地震保険とiDeCoは別の枠。 生命保険の欄が止まっても、こちらは止まらない

この記事の鳥:オカメインコ(ふぶき)

オカメインコは、頭の冠羽の傾きに気分が表れる鳥とされています。まっすぐ立っているのは何かに気づいたとき、ぴたりと寝かせているのは警戒しているときの様子とされます。口笛やメロディーを覚える個体がいることでも知られ、とくにオスに多いとされています。羽から出る白い粉(脂粉)が多い鳥でもあり、部屋の掃除や換気に気を配ることがすすめられています。

書類を前に首をかしげるとき、この鳥の冠羽は少し立っています。

みぞれ
みぞれ

上限で止まるなら、全部そろえなくてもいいんじゃない?

しぐれ
しぐれ

そろえてください。止まっているかどうかは、全部を計算したあとでしか分かりません。

封筒は届いた順に一か所へ。十月に来て、十一月に出すものです。

鳥たちの話(連作)

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出典

登場する鳥の設定と、そのやりとりはすべて創作です。本文に出てくる保険料の額も、計算を示すための設例です。本記事は2026年9月20日時点で公表されている内容に基づいています。年齢23歳未満の扶養親族がいる場合の一般の生命保険料控除の特例は、令和9年分までの扱いです。令和10年分以後は2026年12月の税制改正大綱で決まります。個別の判断は勤務先の担当者または所轄の税務署にご確認ください。

よくある質問

保険会社から届いた控除証明書は、どの欄に書きますか?

生命保険料控除の欄は、一般の生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料の3つに分かれています。どれに当たるかは証明書に印字されています。支払った保険料を別の区分に振り替えて計算することはできません。地震保険と、iDeCoなどの掛金は、それぞれ別の欄です。

同じ欄に新契約と旧契約の両方があるときは、どう計算しますか?

新契約だけで計算した額、旧契約だけで計算した額、その両方を合計した額(一般は最高4万円)の3通りを出し、最も大きい金額を使います。旧契約の保険料が多い場合は、旧契約だけで計算したほうが大きくなることがあります。

つれあいが契約者の保険を自分が払っています。自分の控除にできますか?

国税庁は、保険金等の受取人のすべてが払込みをする人か、その配偶者その他の親族であれば、契約者が誰であるかは要件とされていないとしています。ただし控除できるのは本人自身が支払ったものに限られるため、同じ保険料を夫婦それぞれの年末調整で使うことはできません。誰が負担するかで将来の保険金の課税関係が変わる点にも注意が要ります。

iDeCoの掛金は、生命保険料控除の欄に書きますか?

書きません。小規模企業共済等掛金控除の欄です。控除できるのはその年に支払った掛金の全額で、上限の計算はありません。給与天引きの分は証明書類が要りませんが、本人が直接払った分は金額にかかわらず証明書類を添えます。

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