先に結論
- 窓口の支払いを自己負担限度額までにする方法は、2つしかありません。マイナ保険証を使うか、限度額適用認定証を出すかです
- マイナ保険証なら原則として申請は不要。カードリーダーの限度額の同意画面は、2024年10月7日から省略されています
- ただし住民税非課税世帯の方は、マイナ保険証を使う場合でも申請が必要です(協会けんぽ)
- オンライン資格確認を導入していない医療機関にかかるときも、認定証が要ります
- 認定証はさかのぼって交付されません。有効期間は、申請を受け付けた月の1日からです
- 入院中の食事代と差額ベッド代は、高額療養費の上限に入りません
医療費が高額になったとき、あとから払い戻しを受けるのが高額療養費制度です。ただ、いったん窓口で払ってから3か月以上待つのと、最初から上限額までしか払わないのとでは、家計の痛み方がまるで違います。
この記事は、後者にするための手続きだけを書きます。制度そのものの上限額は高額療養費制度が2026年8月に変わったにまとめています。
窓口で上限までにする方法は、2つしかない

厚生労働省は、はっきり2つだけを挙げています。
この取扱いを受けるには、マイナ保険証をご利用いただくか、事前に「限度額適用認定証(認定証)」を入手していただく必要があります。
厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」より。この2つ以外の道はありません。 どちらも用意がないまま入院すると、いったん全額(3割)を窓口で払うことになります。
2つの方法
| 方法 | 事前の申請 | 条件 |
|---|---|---|
| マイナ保険証を使う | 原則として不要 | 医療機関がオンライン資格確認を導入していること |
| 限度額適用認定証を出す | 必要 | 加入している健康保険に申請して交付を受ける |
マイナ保険証なら、原則として申請は要らない
厚生労働省の説明です。
しかしこれからは、マイナンバーカードを健康保険証として利用すれば、「限度額適用認定証」がなくても、公的医療保険が適用される診療に対しては限度額を超える分を支払う必要がありません。
医療機関がオンライン資格確認を導入していれば、限度額の情報(適用区分)が医療機関へ届く仕組みです。保険者への申請がなくても届きます。
カードリーダーの「同意」については、前提が変わっています
「限度額を適用してもらうには、カードリーダーで同意ボタンを押す」と説明されることがありますが、いまは違います。厚生労働省は、令和6年(2024年)10月7日から「限度額適用認定証情報の提供同意画面の省略」を行うと公表しています。
いま同意を求められるのは、薬剤情報や特定健診情報の提供についてです。限度額の画面は出ません。
ただし、マイナ保険証ではなく資格確認書でオンライン資格確認を行う場合は、窓口での本人同意が必要になる取り扱いがあります。ここは加入先の案内に従ってください。
それでも認定証が要る人
ここからが本題です。「マイナ保険証があるから大丈夫」で済まない場合が、いくつもあります。
住民税非課税世帯の方
いちばん見落とされるところです。協会けんぽは、こう書いています。
なお、被保険者が低所得者に該当する場合はマイナ保険証を利用される場合であっても、「限度額適用・標準負担額減額認定証」をご申請ください。
マイナ保険証を持っていても、申請が要ります。 名前も別で、「限度額適用認定証」ではなく「限度額適用・標準負担額減額認定証」です。申請書も別で、協会けんぽは「健康保険限度額適用認定申請書」では申請できないとしています。
申請しないと、食事代の減額も受けられません
この認定証は、名前のとおり2つの役目を兼ねています。自己負担限度額を低所得の区分にすることと、入院時の食事代(標準負担額)を下げることです。
申請しないままだと、限度額の区分が正しく当たらず、食事代も一般の額のまま請求されます。

非課税世帯なら、窓口で言えば分かってもらえるんじゃないの?

窓口で伝えるだけでは足りないんです。証明を先にもらっておく、と覚えておいてください。
医療機関の側には、非課税かどうかを確かめる手立てがありません。確かめて証明する役目は、保険者にあります。
過去1年の入院が90日を超えた方
住民税非課税世帯の方で、過去1年間の入院日数が90日を超えている場合は、食事代がさらに下がります。この「長期入院該当」は、マイナ保険証を使っていても、別に申請が必要です。
市区町村の国保でも、マイナ保険証を使う人について「限度額適用認定証の申請は不要。食事代が減額となる長期入院認定の申請のみ必要」という案内が出ています。日数が積み上がったら、自分から届け出るものだと考えてください。
オンライン資格確認を導入していない医療機関にかかるとき
令和5年4月から、保険医療機関はオンライン資格確認の導入を原則として義務づけられています。ただし、やむを得ない事情がある場合の猶予の届出が用意されています。導入していない医療機関は、いまも存在します。
機器の不具合や停電で、その場だけ資格確認ができないこともあります。この場合の手順も、厚生労働省が示しています。
マイナ保険証が使えない場面
- 医療機関がオンライン資格確認を導入していない(猶予の届出をしている)
- カードリーダーや回線の不具合で、その場で確認ができない
- 保険者にマイナンバーの登録が行われていない(協会けんぽが挙げています)
このどれかに当たると、認定証がなければ窓口で全額を立て替えます。 入院する病院が決まったら、オンライン資格確認に対応しているかを先に聞いておくと安心です。
国民健康保険で、保険料の滞納があるとき
市区町村の国保では、保険料の未納があると限度額の適用ができないことがあるという案内が出ています。国民健康保険法施行規則にも、関係する規定があります。世帯主が保険料を滞納していることを確認した場合は、認定を行わないという書き方です(特別の事情があると認められる場合などを除く)。
所得の申告がされていない世帯員がいる場合は、所得が分からないため、オンライン申請の対象外としている自治体があります(福岡市)。窓口で相談してください。
ここは国民健康保険の話です
協会けんぽや健康保険組合に、滞納を理由とする同じ定めがあるかは確認できていません。加入先によって扱いが違うとお考えください。取り扱いは市区町村でも違うので、お住まいの市区町村の国保の窓口にご確認ください。
認定証は、さかのぼって出してもらえません
認定証を申請するときに、いちばん大事なところです。
・限度額適用認定証の有効期間は、申請書を受け付けた日の属する月の1日(資格を取得した月の場合は資格取得日)から最長で1年間の範囲となります。
協会けんぽの注意事項より。同じ欄に、こうも書かれています。
・申請書受付月より前の月の限度額適用認定証の交付はできません。日程に余裕を持ってご提出ください。
つまり、申請した月の1日までは戻れますが、前の月には戻れません。
| 入院した月 | 申請した月 | 認定証が効く範囲 |
|---|---|---|
| 9月 | 9月 | 9月1日から。同じ月の入院に間に合う |
| 9月 | 10月 | 10月1日から。9月分には使えない |
9月の入院に間に合わなかった分は、あとから高額療養費を申請して払い戻しを受けることになります。
月をまたぐ入院に注意
高額療養費の上限は暦月(1日から末日まで)ごとに計算します。月をまたいで入院すると、それぞれの月で上限が当たります。
認定証の有効期間も月単位です。月末に入院して、翌月に申請したという順番になると、最初の月だけ立て替えになります。
70歳以上は、区分によって扱いが違う
協会けんぽの一覧を整理すると、こうなります。マイナ保険証を使う場合は、高齢受給者証も認定証も窓口に出す必要がありません。
| 区分 | マイナ保険証を使う場合 | 資格確認書等を使う場合 |
|---|---|---|
| 現役並みⅢ(標準報酬月額83万円以上) | どちらも不要 | 高齢受給者証は必要/認定証は不要 |
| 現役並みⅡ(53万〜79万円) | どちらも不要 | どちらも必要 |
| 現役並みⅠ(28万〜50万円) | どちらも不要 | どちらも必要 |
| 一般 | どちらも不要 | 高齢受給者証は必要/認定証は不要 |
| 低所得Ⅱ・Ⅰ | 高齢受給者証は不要。認定証は「不要だが申請は必要」 | どちらも必要 |
低所得Ⅱ・Ⅰの欄の「不要だが申請は必要」が、先ほどの話です。窓口で出す必要はないけれど、申請はしておくという意味です。
なお、後期高齢者医療制度では、認定証の交付そのものを終了した広域連合があります。区分が併記された資格確認書やマイナ保険証で足りる扱いです。お住まいの地域の広域連合の案内をご確認ください。
食事代と差額ベッド代は、上限に入りません
厚生労働省の注記です。
※1 入院時の食費負担や差額ベッド代等は高額療養費制度での自己負担限度額の対象に含みません。
食事代は、高額療養費とは別に標準負担額が決まっています。協会けんぽの令和8年6月1日からの額です。
| 対象 | 1食あたり |
|---|---|
| 一般の方 | 550円 |
| 難病患者、小児慢性特定疾病患者の方(住民税非課税世帯を除く) | 330円 |
| 住民税非課税世帯の方 | 270円 |
| 住民税非課税世帯で、過去1年間の入院日数が90日を超えている場合 | 220円 |
| 住民税非課税世帯に属し、かつ所得が一定基準に満たない70歳以上の高齢受給者 | 130円 |
1日の標準負担額は、3食に相当する額が限度です。一般の方なら1日1,650円、30日で約5万円。高額療養費の上限とは別に、これがかかります。
減額を受けるには、「健康保険限度額適用・標準負担額減額認定申請書」に低所得の証明書を添えて申請します。住民税の非課税証明などが要ります。
間に合わなかったときにできること
窓口で立て替えてしまっても、お金が戻らないわけではありません。
あとから高額療養費を申請する
上限を超えて払った分は、申請すれば払い戻されます。ただし、時間がかかります。
2:高額療養費は、保険医療機関等から提出される診療報酬明細書の確認が必要であることから、診療月から3か月以上かかります。
協会けんぽのQ&Aより。3か月以上です。その間、立て替えたお金は戻りません。
時効は、健康保険法第193条に定めがあります。保険給付を受ける権利は「これらを行使することができる時から二年を経過したときは、時効によって消滅する」とされています。2年以内なら、さかのぼって請求できます。
高額医療費貸付制度を使う
協会けんぽには、支給を待つあいだの貸付があります。
高額療養費支給見込額の8割相当額を無利子で貸付を行う制度です。
貸したお金は、高額療養費が支給されるときに清算されます。残りは指定の口座へ振り込まれます。医療費の減額や不支給で清算できなかった場合は、返還が必要です。

借りるのは、ちょっと気が重いな。

返すのは支給されるお金から、という点がふつうの借金と違うところですね。手元の現金が3か月もたないときのための仕組みだと考えてください。使わずに済むのがいちばんですが、選択肢として知っておく価値はあります。
「年間上限」は、窓口では引かれません
2026年8月から、高額療養費に年間の上限が新しくできました。ここは仕組みが違います。
厚生労働省の説明です。
月ごとの自己負担額が積み上がっても、年間の上限額に達した後は、それ以上の医療費については、保険者から還付を受けることができます。(年間とは、8月から翌年7月までを指します。)
「還付を受ける」と書かれています。年間上限は、窓口でその場で引かれるものではありません。 認定証やマイナ保険証で抑えられるのは、あくまで月ごとの上限までです。
2027年8月に、また変わります
令和9年(2027年)8月から、高額療養費の所得区分が細分化されます。これに合わせて、認定証の有効期限にも線が引かれています。
※令和9年8月には高額療養費の制度改正に伴う被保険者の所得区分の見直しが予定されているため、令和8年8月より交付される限度額適用認定証の有効期限は、最長で令和9年7月31日までとなります。
協会けんぽより。いま持っている認定証は、令和9年7月31日で切れます。 その後も必要なら、令和9年8月以降にあらためて申請します。
期限が近い人がやっておくこと
- 認定証の有効期限の日付を、いま確認しておく
- 治療が令和9年8月をまたぐなら、8月に入ったらすぐ再申請する
- マイナ保険証を使える状態にしてあれば、この更新は基本的に要らない
まとめ
- 窓口を上限までにする方法は、マイナ保険証か限度額適用認定証の2つだけ
- マイナ保険証なら原則として申請は不要。限度額の同意画面は2024年10月7日から省略された
- 住民税非課税世帯の方は、マイナ保険証でも「限度額適用・標準負担額減額認定証」の申請が必要
- 過去1年の入院が90日を超えたら、食事代の減額はあらためて申請する
- オンライン資格確認を導入していない医療機関、機器の不具合、マイナンバー未登録のときは認定証が要る
- 国保では、保険料の滞納があると限度額が適用されないことがある
- 認定証は申請を受け付けた月の1日から。前の月にはさかのぼれない
- 食事代と差額ベッド代は、高額療養費の上限に入らない
- 間に合わなくても、2年以内なら高額療養費を請求できる。支給までは診療月から3か月以上
- 令和9年7月31日で認定証の有効期限が切れる
入院が決まってからできる準備は多くありません。マイナ保険証を使える状態にしておくこと、そして非課税世帯なら、その前に申請を済ませておくこと。この2つで、窓口の立て替えはほとんど避けられます。
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出典
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
- 厚生労働省「マイナンバーカードの健康保険証利用のメリット」
- 厚生労働省「顔認証付きカードリーダーの同意画面の改善」
- 全国健康保険協会「限度額適用認定証」
- 全国健康保険協会「高額な医療費を支払ったとき(高額療養費)」
- 全国健康保険協会「高額療養費に関するQ&A」
- 全国健康保険協会「入院時食事療養費」
- e-Gov法令検索「国民健康保険法施行規則」
- e-Gov法令検索「健康保険法」
本記事は2026年9月28日時点で公表されている内容に基づいています。認定証の交付の要件と手続きは、加入している健康保険(協会けんぽ・健康保険組合・市区町村の国民健康保険・後期高齢者医療広域連合)によって違います。個別の判断は、加入先の窓口にご確認ください。
よくある質問
マイナ保険証があれば、限度額適用認定証の申請は要りませんか?
多くの場合は要りません。協会けんぽは「マイナ保険証を利用される場合は申請不要です」としています。ただし被保険者が低所得者に該当する場合は、マイナ保険証を利用する場合であっても「限度額適用・標準負担額減額認定証」の申請が必要です。オンライン資格確認を導入していない医療機関にかかる場合も、認定証が要ります。
カードリーダーで「同意する」を押さないと、限度額は適用されませんか?
限度額適用認定証情報の提供に関する同意画面は、令和6年(2024年)10月7日から省略されています。同意画面が出るのは、薬剤情報や特定健診情報の提供についてです。ただし資格確認書でオンライン資格確認を行う場合は、窓口での本人同意が必要になる取り扱いがあります。
入院の前に認定証を申請し忘れました。さかのぼって出してもらえますか?
協会けんぽは「申請書受付月より前の月の限度額適用認定証の交付はできません」としています。有効期間は申請書を受け付けた日の属する月の1日からです。窓口で上限額までに抑えられなかった分は、あとから高額療養費を申請して払い戻しを受けます。
入院中の食事代も、高額療養費の上限に含まれますか?
含まれません。厚生労働省は「入院時の食費負担や差額ベッド代等は高額療養費制度での自己負担限度額の対象に含みません」としています。住民税非課税世帯の方は食事代そのものを減額する仕組みがあり、こちらは申請が必要です。


