出産育児一時金50万円の受け取り方|平均出産費用との差はいくらか

出産育児一時金50万円の受け取り方|平均出産費用との差はいくらかのイメージ 子育てとお金

先に結論

  • 出産育児一時金は、子ども1人につき原則50万円。妊娠85日(4か月)以降なら、死産・流産も対象です
  • 受け取り方は3つ。直接支払制度なら、窓口で払うのは一時金の額(産科医療補償制度に加入している施設で22週以降の出産なら50万円、それ以外は48.8万円)を超えた分だけです
  • 令和6年度の平均出産費用は51万9,805円。室料差額などを含む妊婦合計負担額は59万2,907円。一時金では足りません
  • 出産費用の無償化は、まだ始まっていません。 法律は令和8年5月29日に成立しましたが、施行日は「公布後2年以内に政令で定める日」で、決まっていません
  • 一時金のほかに、妊婦のための支援給付(5万円+こどもの人数×5万円)、出産手当金、産前産後の保険料免除があります

出産にかかるお金は、もらえるものと、払うものと、免除されるものが別々の窓口にあります。 どれか1つを知っていても、全体はつかめません。

この記事では、出産育児一時金を軸に、そのまわりにある公的なお金をまとめます。

出産育児一時金は、1人につき原則50万円

厚生労働省の説明です。

公的医療保険の加入者が出産したとき、お子さん1人につき原則50万円がご加入の保険者から支給される制度です。

金額は、出産した医療機関と在胎週数で分かれます。協会けんぽの区分です(2023年4月1日以降の出産)。

出産の状況支給額
産科医療補償制度に加入している医療機関等で、在胎週数22週以降に出産1児につき50万円
上記の医療機関等で、在胎週数22週に達しなかった出産1児につき48.8万円
産科医療補償制度に加入していない医療機関等で出産1児につき48.8万円

差の1.2万円は、産科医療補償制度の掛金分です。50万円は「本人支給分48.8万円+掛金分1.2万円」という組み立てになっています。

50万円になったのは、令和5年4月から

厚生労働省は「出産育児一時金の支給額は、令和5年4月から、それまでの原則42万円から原則50万円に13年ぶりに引き上げられました」としています。

創設は平成6年10月で、そのときは30万円でした。その後、35万円(平成18年)、38万円(平成21年1月)、42万円(平成21年10月、直接支払制度の導入と同時)と上がり、いまの50万円になりました。

対象になる出産

妊娠85日(4か月)以降の生産(早産)、死産(流産)、人工妊娠中絶が該当します。

協会けんぽより。死産・流産も対象です。 ここは見落とされやすいところです。

多胎児を出産したときは、胎児数分だけ支給されます。双子なら100万円です。

被保険者本人だけでなく、被扶養者の出産も対象です(家族出産育児一時金)。申請期限は出産日の翌日から2年以内です。

退職したあとに出産したとき

協会けんぽの場合、次の3つをすべて満たせば受け取れます。

  • 妊娠4か月(85日)以上の出産であること
  • 資格喪失日の前日(退職日)までに、継続して1年以上の被保険者期間があること
  • 資格喪失日(退職日の翌日)から6か月以内の出産であること

ただし、国民健康保険や配偶者の健康保険からも受けられる場合、二重には受け取れません。 どちらか一方を選びます。

受け取り方は3つ。窓口で払う額が変わります

受付台へ大きな封筒がそのまま渡り、白文鳥のみぞれの手元には小さな封筒だけが残っている。足元には綿を敷いたかごと卵がひとつ

厚生労働省は、支給申請と支払いの方法を3つ挙げています。どれを選ぶかで、窓口でいったん払う金額が変わります。

直接支払制度

直接支払制度は、出産施設(病院など)が被保険者に代わって保険者に出産育児一時金の支給申請を行い、保険者から出産施設に出産育児一時金が直接支払われる仕組みです。

いちばん多く使われている方法です。窓口で払うのは、出産費用から一時金の額を差し引いた残りだけになります。産科医療補償制度に加入している施設で在胎週数22週以降に出産した場合は50万円、加入していない施設での出産や22週に達しなかった出産では48.8万円を差し引きます。

手続きは、退院までに「直接支払制度の利用に係る合意文書」を交わすだけです。入院時に資格を確認し、出産後に明細書と支給決定通知を受け取ります。

受取代理制度

受取代理制度は、被保険者が自ら保険者に出産育児一時金の支給申請を行い、出産施設(病院など)が被保険者に代わって出産育児一時金を受け取る仕組みです。

窓口で払う額は直接支払制度と同じですが、申請するのは自分です。しかも、出産前に手続きをします。

受取代理制度は、出産予定日まで2か月以内から

実施要綱では、対象者は「出産予定日まで二か月以内の者」とされています。早すぎても申請できません。

導入しているのは、年間の平均分娩取扱い件数が100件以下の診療所・助産所などが目安です。小さな施設で、直接支払制度の事務負担が重いところ向けの仕組みです。導入している施設でも、利用するかどうかは本人が選べます。

償還払い制度

償還払い制度は、被保険者が自ら保険者に出産育児一時金の支給申請を行い、自ら支給を受け取る仕組みです。このため、出産施設(病院など)の窓口で、いったん出産費用を全額支払う必要があります。

50万円以上を、いったん自分で用意することになります。 直接支払制度を導入していない施設で出産する場合などに、この形になります。

みぞれ
みぞれ

自分の産む病院が、どれを使えるのかは、どこで分かるの?

しぐれ
しぐれ

施設ごとに違うので、分娩の予約をする時点で聞いてしまうのが早いです。直接支払制度が使えるかどうかで、退院の日に用意するお金がまったく変わります。

費用が一時金より安かったとき・高かったとき

※ 出産にかかった費用が、出産育児一時金を下回った場合は、その差額が支給されます。出産後概ね3か月後に、申請に必要な書類(出産育児一時金差額申請書)を協会けんぽより被保険者あてに送付します。また、出産にかかった費用が出産育児一時金の支給額を超える場合には、その超えた額を医療機関等へお支払いいただくことになります。

協会けんぽより。差額は自動では振り込まれません。 申請が要ります。

通知が届く前に請求する「内払金支払依頼書」を使う。代理契約に関する文書の写し、領収・明細書の写し、医師等の証明が要る
通知を待って請求する通知と一緒に届く「差額申請書」を使う。添付書類は要らない

急がないなら、3か月ほど待って差額申請書を出すほうが手間は少なくて済みます。

実際の出産費用は、いくらか

厚生労働省が、直接支払制度の請求データから算出した令和6年度の数字です。

全国平均
正常分娩の平均出産費用519,805円
室料差額・産科医療補償制度掛金・その他を含む妊婦合計負担額592,907円

一時金50万円との差は、出産費用で約2万円、妊婦合計負担額で約9万3,000円です。

最も平均出産費用が高いのは東京都で648,309円、最も低いのは熊本県で404,411円であった。

同じ国の中で、24万円の開きがあります。 妊婦合計負担額で見ると、東京都754,243円、熊本県460,634円です。

「出産費用」と「妊婦合計負担額」は別のものです

厚生労働省の資料は、出産費用を「妊婦合計負担額から『室料差額』、『産科医療補償制度掛金』、『その他』の費目を除く費用の合計額」と定義しています。

つまり個室代などは、出産費用の数字に入っていません。 実際に窓口で請求されるのは、妊婦合計負担額のほうです。平均を見るときは、どちらの数字かを確かめてください。

費用の推移も出ています。全施設の平均出産費用は、平成24年度が41.7万円、令和3年度が47.3万円、令和4年度が48.2万円、令和5年度が50.7万円、令和6年度が52.0万円。一時金を50万円にした令和5年度に、平均が50万円を超えました。

施設ごとの費用を先に調べられます

厚生労働省が「出産なび」というサイトを公開しています(2024年5月30日公開)。施設からの請求情報をもとに、出産費用が掲載されています。

ただし保険診療を行った分娩は除かれており、アメニティ等のサービス費用も載っていません。 目安として使い、最終的な見積もりは施設に聞いてください。

出産費用の「無償化」は、まだ始まっていません

ここが、いま最も誤解されているところです。

健康保険法等の一部を改正する法律は、令和8年5月29日に成立しました(令和8年6月5日公布・令和8年法律第31号)。この中に、出産育児一時金に代わる新しい給付の仕組みが入っています。

法律に書かれた新しい仕組み

  • 分娩1件当たりの基本単価を国が設定し、保険者から施設に直接支給(現物給付化)する。妊婦に負担が生じないようにする
  • それとは別に、全ての妊婦に定額の現金給付を行う
  • 施設が提供するサービス(お祝い膳等)の内容・費用の情報提供を義務付ける

ただし、いつから始まるかは決まっていません。 法律の概要にある施行期日の記載です。

2①及び②は公布後2年以内に政令で定める日

この「2①」が、妊娠・出産に対する支援の強化です。日付ではなく「2年以内のどこか」としか書かれていません。 同じ一覧の中で、ほかの項目には「令和9年3月1日施行を想定」のように想定日が添えられています。出産の部分には、それがありません。

金額も、これからです。

※ 具体的な給付水準は告示事項。施設の体制・役割等を評価して加算を設定。

全ての妊婦に定額の現金給付を行う。※金額は政令事項

そして、いまの一時金がすぐに消えるわけでもありません。

※ 施設の選択により、当分の間、施設単位で現行制度の適用も可能

「令和8年度から無償化」は、正確ではありません

「令和8年度を目途に」という言葉は、厚生労働省の検討会の文書に出てきます。ただしそれは、制度設計を進める目途として書かれたものです。無償化が始まる時期ではありません。

いま出産する方は、出産育児一時金50万円の前提で資金を用意してください。

直近の動きもあります。令和8年8月26日の中央社会保険医療協議会の総会で、「妊娠・出産・産後における診療やケアの内容等に関する検討会」の立ち上げが了承されました。スケジュールの案では、12月頃にとりまとめとされています。この記事は、その結果が出たら書き直します。

一時金のほかに、受け取れるお金

妊婦のための支援給付

こども家庭庁の制度です。令和4年度の補正予算で始まった「出産・子育て応援交付金事業」が、令和7年度から法律に基づく制度になりました。

いついくら
妊婦給付認定を受けたあと5万円
妊娠しているこどもの人数の届出のあとこどもの人数 × 5万円

2回目(こどもの人数)の届出は、出産予定日の8週間前の日からできます。流産・死産等の場合も支給の対象になります。

自治体の取組によっては、現金ではなくクーポン等での給付を選べる場合があります。手続きはお住まいの市区町村です。

出産手当金(健康保険)

出産のために会社を休んで、給与が出ない期間の所得補償です。国民健康保険には原則としてありません(国民健康保険法第58条第2項の任意給付です)。

出産手当金の対象期間

  • 出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠は98日)から
  • 出産の翌日以後56日目までの範囲内で、会社を休んだ期間
  • 出産日は、出産の日以前の期間に含まれます
  • 出産が予定日より遅れた場合、その遅れた期間についても支給されます

1日あたりの金額は、支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額 ÷ 30日 × 3分の2です。被保険者期間が12か月に満たない場合は、直近の継続した各月の標準報酬月額の平均と、協会けんぽの全被保険者の標準報酬月額の平均額(前年度の9月30日時点)の低いほうを使います。後者は本人の給与ではなく、加入者全体の平均です。支給開始日が令和7年4月1日以降は32万円で、令和8年度(支給開始日が令和8年4月1日以降)も32万円です。令和7年9月30日時点の平均が318,100円で、標準報酬月額にすると32万円の等級に当たるためです。

妊婦健診の公費助成

厚生労働省の告示(平成27年厚生労働省告示第226号)は、妊婦健診の回数を「妊婦一人につき、出産までに十四回程度行うものとする」としています。費用は市区町村が負担します。

ただし、負担額には差があります。 令和7年4月時点で、妊婦1人当たりの公費負担額は全国平均11.4万円、最低8.6万円から最高14.1万円。自己負担額は約3割超が0円である一方、約1割は3万円以上です。

先ほどの改正法で、母子保健法に標準額を定める規定が新設されました。こちらも施行は公布後2年以内です。

産前産後の保険料免除

2つあります。加入している制度で手続きが違います。

加入している制度免除される期間手続き
国民年金(第1号被保険者)出産予定日または出産日が属する月の前月から4か月間(多胎妊娠は3か月前から6か月間)本人が市区町村へ届出。出産予定日の6か月前から
健康保険・厚生年金(産前産後休業)出産日以前42日(多胎妊娠は98日)から出産日後56日まで事業主が「産前産後休業取得者申出書」を提出

どちらも、免除された期間は保険料を納めたものとして扱われます。 国民年金では老齢基礎年金の受給額に反映され、厚生年金でも納付済みの期間になります。将来の年金が減りません。

国民年金の産前産後免除でいう出産は、妊娠85日(4か月)以上の出産です。死産・流産・早産も含みます。

帝王切開などは、高額療養費の対象

正常分娩は保険がききませんが、帝王切開や吸引分娩などの異常分娩は保険診療です。自己負担が高くなれば、高額療養費の対象になります。

厚生労働省の資料によると、令和6年度に協会けんぽで出産育児一時金の請求があった約29.2万件のうち、診療報酬の算定があったのは約23.6万件(80.9%)でした。8割の出産で、何らかの保険診療が行われています。

窓口の支払いを上限までにする方法は、限度額適用認定証はまだ必要ですに書いています。予定帝王切開なら、入院の前に準備ができます。

医療費控除

出産にかかった費用は、医療費控除の対象になるものとならないものが分かれます。国税庁のタックスアンサー No.1124 です。

出産費用と医療費控除

  • 対象になる … 妊娠と診断されてからの定期検診や検査などの費用、通院費用
  • 対象になる … 出産で入院する際に、電車・バスなどの通常の交通手段によることが困難で、タクシーを利用した場合のタクシー代
  • 対象にならない … 実家で出産するために実家に帰省する交通費
  • 対象にならない … 寝巻きや洗面具など身の回り品の購入費用
  • 対象になる … 病院に対して支払う入院中の食事代(出前や外食は対象外)

大事なのは、引き算のルールです。

出産育児一時金と家族出産育児一時金は、医療費から差し引かなければなりません。 一方、出産手当金は差し引く必要がありません。 前者は医療費の補てん、後者は所得の補償という違いです。

まとめ

  • 出産育児一時金は1人につき原則50万円。妊娠85日以降なら死産・流産も対象。多胎児は人数分
  • 受け取り方は直接支払・受取代理・償還払いの3つ。直接支払制度なら、窓口で払うのは一時金の額を超えた分だけ(50万円は産科医療補償制度に加入している施設で22週以降に出産した場合。それ以外は48.8万円)
  • 費用が一時金より安ければ差額が出るが、申請が要る。3か月ほど待てば添付書類なしの用紙が届く
  • 令和6年度の平均出産費用は51万9,805円、妊婦合計負担額は59万2,907円。一時金では足りない
  • 都道府県差は大きい。最高の東京都と最低の熊本県で24万円
  • 出産費用の無償化は、まだ始まっていない。 施行日は「公布後2年以内に政令で定める日」で未定
  • 妊婦のための支援給付は5万円+こどもの人数×5万円。流産・死産等も対象
  • 出産手当金は健康保険のみ。国民健康保険には原則としてない
  • 産前産後の保険料免除は2つ。免除された期間も、納めたものとして年金に反映される
  • 出産育児一時金は医療費控除で差し引く。出産手当金は差し引かない

出産のお金は、健康保険・市区町村・年金・税務署の4か所に分かれています。 ひとつの窓口で全部は教えてもらえません。妊娠が分かったら、この4つを順番に当たってください。

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よくある質問

出産育児一時金はいくらもらえますか?

子ども1人につき原則50万円です。産科医療補償制度に加入している医療機関等で在胎週数22週以降に出産した場合の額で、それ以外の場合は1児につき48.8万円になります。双子など多胎児のときは、胎児数分だけ支給されます。国民健康保険の額は条例で定めるため、お住まいの市区町村の窓口でご確認ください。

出産費用が一時金より安かったら、差額はもらえますか?

もらえます。協会けんぽの場合、出産後おおむね3か月後に「出産育児一時金差額申請書」が送られてきます。通知を待たずに請求する場合は「内払金支払依頼書」を使いますが、こちらは代理契約に関する文書の写しなどの添付が要ります。逆に費用が一時金を超えた分は、医療機関等へ支払います。

流産・死産でも出産育児一時金は出ますか?

妊娠85日(4か月)以降であれば対象です。協会けんぽは「妊娠85日(4か月)以降の生産(早産)、死産(流産)、人工妊娠中絶が該当します」としています。こども家庭庁の妊婦のための支援給付も、流産・死産等の場合が支給の対象になります。

2026年度から出産費用が無償になると聞きました。いつからですか?

2026年9月28日時点では、まだ決まっていません。健康保険法等の一部を改正する法律は令和8年5月29日に成立しましたが、妊娠・出産に対する支援の強化の施行期日は「公布後2年以内に政令で定める日」とされており、日付が定まっていません。分娩1件当たりの基本単価も、全ての妊婦への現金給付の額も、これから告示・政令で定められます。

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