先に結論
- 手書きの遺言書(自筆証書遺言)は、法務局に1通3,900円で預けられます。保管の年数が延びても追加の手数料はかかりません
- 申請は遺言者本人が予約して、法務局(遺言書保管所)に出向く決まりです。代理人や郵送ではできず、法務局の職員が出張することもありません(2026年10月時点)
- 用紙はA4・片面・決まった余白など、法務省令の様式に合わせます。法務局が見るのは形式の外形だけで、遺言の内容が有効かどうかは確かめません
- 預けた遺言書は、亡くなった後に家庭裁判所の検認が要りません。相続人などは遺言書情報証明書(1通1,400円)を取って手続きに使います
- 亡くなった後、遺言者が指定した人(3人まで)に指定者通知が届きます。誰か1人が証明書を取ると、ほかの相続人などにも関係遺言書保管通知が届きます
- 公正証書遺言の手数料は、受け取る人ごとの財産額で計算して合計し、1億円以下なら1万3,000円を足します。3,000万円を1人に相続させるなら3万9,000円から(当方計算)
- 2026年6月に民法などが改正されました。自筆証書遺言の押印が要らなくなる改正は公布から1年以内、パソコンで作れる保管証書遺言の新設は3年以内に施行されます。施行までは今の決まり(押印が要る)のままです
遺言書を書こうと思ったとき、選択肢として出てくるのが「手書きして法務局に預ける」か「公証役場で公正証書にする」かです。 どちらにするかは、遺言の内容や家族の事情で変わります。この記事は、どちらかを勧めるものではありません。
ここでは、法務局の自筆証書遺言書保管制度(以下「保管制度」)について、手数料、手続き、様式、亡くなった後の流れを、法律と法務省の案内で整理します。あわせて、公正証書遺言と比べるときの費用と手間の数え方も、公証人手数料令の表で示します。 遺言に何を書けば有効か、という内容の話は扱いません。内容は弁護士などの専門家や公証人に相談する領域です。
保管制度とは:法務局が預かるのは「形式を満たした手書きの遺言書」
保管制度は、2020年7月10日に始まりました(法務省「よくあるご質問」Q4)。根拠は法務局における遺言書の保管等に関する法律(以下「遺言書保管法」)です。
預けられるのは、民法第968条の自筆証書遺言(全文・日付・氏名を本人が手書きし、押印したもの)だけです。公正証書遺言や秘密証書遺言は対象外です。
法務省は、制度の内容を次のように案内しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 保管する場所 | 法務大臣が指定した法務局(遺言書保管所) |
| 保管のしかた | 原本と、スキャンした画像データの両方 |
| 保管する期間 | 原本は遺言者の死亡後50年、画像データは死亡後150年(遺言書保管法施行令第5条) |
| 申請のときに見るもの | 民法の自筆証書遺言の形式に合うかの外形的なチェック |
| 内容の相談 | 応じない |
(法務省「遺言書保管制度とは?」、法務局における遺言書の保管等に関する政令第5条)
亡くなったかどうか分からない人の場合は、出生の日から120年を経過した日を死亡の日に相当する日として数えます(同政令第5条第1項)。
預けても、遺言の内容が有効だとは確かめてもらえない
法務省は、注意事項としてこう書いています。
本制度は、保管された遺言書の有効性を保証するものではありません。
(法務省「遺言書保管制度とは?」)
法務局は、日付が特定できるか、署名と押印があるか、用紙が様式どおりかといった外形を見ます。財産の書き方があいまいで手続きに使えない、といった中身の問題は確かめません。内容に不安があるときは、弁護士などの専門家に相談するよう法務省も案内しています。
かかるお金:保管3,900円、相続後の証明書1,400円
手数料の額は、遺言書保管法第12条にもとづく政令(遺言書保管法関係手数料令)で決まっています。収入印紙で納めます。
| 手続き | 手数料 | できる人 |
|---|---|---|
| 遺言書の保管の申請 | 1件(遺言書1通)3,900円 | 遺言者 |
| 遺言書の閲覧(モニター) | 1回1,400円 | 遺言者/関係相続人等 |
| 遺言書の閲覧(原本) | 1回1,700円 | 遺言者/関係相続人等 |
| 遺言書情報証明書の交付 | 1通1,400円 | 関係相続人等 |
| 遺言書保管事実証明書の交付 | 1通800円 | 関係相続人等 |
| 申請書等・撤回書等の閲覧 | 1件1,700円 | 遺言者/関係相続人等 |
| 保管の申請の撤回、住所などの変更の届出 | 無料 | 遺言者 |
(法務局における遺言書の保管等に関する法律関係手数料令第1条・第2条、法務省「手数料」)
「関係相続人等」は、遺言者の相続人と、遺言書に書かれた受遺者(遺言で財産を受け取る人)や遺言執行者などのことです(遺言書保管法第9条第1項)。
法務省のQ&Aは、保管の申請の手数料は保管の年数に関係なく、申請のときの定額だと答えています(Q10)。 一方、内容を書き直して預け直すときは、改めて3,900円がかかります(Q14)。
手数料のほかにかかるもの
- 申請に添える住民票の写し(本籍と筆頭者の記載があり、マイナンバーと住民票コードの記載がないもの)の交付手数料。額は市区町村ごとに違います
- 亡くなった後に相続人などが証明書を請求するときの戸籍の取得費用と、郵送で受け取る場合の返信用の切手
申請は本人が予約して出向く。代理・郵送はできない
遺言書保管法第4条第6項は、こう定めています。
遺言者が第一項の申請をするときは、遺言書保管所に自ら出頭して行わなければならない。
(遺言書保管法第4条第6項)
法務省の案内では、代理人による申請や郵送による申請はできません。 病気で出向けない場合について、法務省のQ&Aは「本制度を利用いただくことができません」と答えています(Q7)。介助の付き添いは問題ないとされています。
申請の流れは次のとおりです(法務省「遺言者の手続」)。
- 自筆証書遺言を書く(様式は次の節)
- 申請先を決める。住所地・本籍地・所有する不動産の所在地のどれかを管轄する遺言書保管所。2通目からは、最初に預けた保管所にしか申請できません
- 保管申請書を書く(法務省のサイトに様式と記載例がある)
- 予約する。予約は必須で、法務局手続案内予約サービスのサイトか、電話・窓口で取ります。当日の予約はできません(法務省「予約」)
- 予約した日に本人が出向き、遺言書・申請書・住民票の写し・顔写真付きの身分証明書・手数料3,900円を出す
- 保管証を受け取る
保管証には、遺言者の氏名・生年月日、保管所の名称、保管番号が書かれています。保管証は再発行できません。 法務省は、家族に保管を伝えるときに保管証の写しを渡す方法を案内しています。
一部の法務局では、事前のメール確認を試している
2026年2月2日から、39都道府県・68の遺言書保管所で、申請書・添付書類・遺言書の形式をメールで事前にチェックする取り組みが試行されています(法務省「遺言者の手続」)。申請そのものは、今も本人が出向いて行います。
預けた後に住所や氏名、受遺者の住所などが変わったら、変更の届出をします。全国どこの保管所にも出せ、郵送もでき、手数料はかかりません。届け出ないままだと、通知が届かないことがあると法務省は案内しています。

内容を書き直したくなったら、どうするの?

法務省は、いったん保管の申請を撤回して遺言書を返してもらい、書き直して預け直す方法を勧めています。撤回は無料ですが、原本を預けた保管所でしかできず、預け直すときはまた3,900円かかります。撤回しても、それだけで遺言が無効になるわけではない点も案内されています。
様式の決まり:A4・片面・余白・綴じない
保管制度で預かってもらうには、民法の要件と、法務省令の様式の両方を満たす必要があります。
民法第968条の要件(2026年10月時点)は次のとおりです。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 本文 | 全文・日付・氏名を本人が手書きし、押印する |
| 財産目録 | パソコンで作ったものや、登記事項証明書・通帳のコピーを付けてよい。その場合は目録の各ページに署名と押印 |
| 訂正・追加 | 場所を示し、変更した旨を書き添えて署名し、変更した場所に押印する |
日付は「令和3年3月吉日」のように特定できない書き方では預かってもらえない、と法務省は例を挙げています。
これに加えて、保管制度の様式(法務局における遺言書の保管等に関する省令 別記第1号様式)があります。
| 項目 | 決まり |
|---|---|
| 用紙 | A4。文字が読みにくくなる模様や彩色がないもの(一般的な罫線は可) |
| 余白 | 上5mm・下10mm・左20mm・右5mm以上。余白に1文字でもはみ出すと、書き直しになる |
| 記載 | 片面だけ。財産目録も同じ |
| ページ番号 | 「1/2、2/2」のように総ページ数が分かる形で、余白の内側に書く。1枚だけなら不要(2026年3月2日の省令改正から) |
| 綴じ方 | ホチキスで綴じない。封筒に入れない(スキャナで読み取るため) |
| 筆記具 | 消えるインクを使わず、ボールペンなど消えにくいもの |
| 氏名 | 戸籍どおりに書く。ペンネームでは預かってもらえない |
(法務省「遺言書の様式等についての注意事項」「よくあるご質問」Q8)
遺言書情報証明書は白黒で出力されるため、色分けで書き分けても相続人に伝わらないことがある、と法務省のQ&Aは注意しています(Q3)。法務省のサイトには、印刷すれば必要な余白が取れる用紙例も載っています。
亡くなった後:検認が要らず、通知が届く
家庭裁判所の検認が要らない
手書きの遺言書は、ふつうは亡くなった後に家庭裁判所の検認が要ります(民法第1004条第1項)。検認は、遺言書の形や日付・署名などをその日の状態で確かめ、偽造や変造を防ぐ手続きです。遺言が有効かどうかを判断する手続きではありません(裁判所「遺言書の検認」)。
保管制度で預けた遺言書には、この検認が要りません。
民法第千四条第一項の規定は、遺言書保管所に保管されている遺言書については、適用しない。
(遺言書保管法第11条)
比べると、こうなります。
| 自宅などで保管した手書きの遺言書 | 保管制度で預けた遺言書 | |
|---|---|---|
| 検認 | 要る(民法第1004条) | 要らない(遺言書保管法第11条) |
| 費用 | 遺言書1通につき収入印紙800円と郵便切手。検認済証明書は1通150円分の収入印紙 | 遺言書情報証明書1通1,400円 |
| 書類 | 遺言者の出生から死亡までの戸籍、相続人全員の戸籍など | 法定相続情報一覧図の写し、または戸籍など |
| 封のある遺言書 | 家庭裁判所で相続人などの立会いのもとで開封(民法第1004条第3項) | 封をしたものは預けられない |
(検認の費用と書類は裁判所「遺言書の検認」)
検認を経ないで遺言を執行したり、家庭裁判所の外で開封したりすると、5万円以下の過料の対象になります(民法第1005条)。
2種類の通知
遺言書を預けたことを家族に伝えていなくても、亡くなった後に知らせが届く仕組みがあります(法務省「通知」)。
| 指定者通知 | 関係遺言書保管通知 | |
|---|---|---|
| 届く相手 | 遺言者があらかじめ指定した人(3人まで) | 遺言者の相続人と、遺言書に書かれた受遺者・遺言執行者など |
| 届くきっかけ | 法務局が戸籍の担当部局との連携で死亡を確認したとき(証明書の交付で死亡を確認したときも) | 関係相続人等の誰か1人が閲覧や遺言書情報証明書の交付を受けたとき |
| 遺言者がする手続き | 保管の申請のときに希望して指定する(後から変更の届出で追加もできる) | 不要 |
| 根拠 | 法務省の案内(法律・政令・省令の条文には定めが見当たらない) | 遺言書保管法第9条第5項、同法施行令第9条第4項、同省令 |
指定者通知は、2023年10月2日から、指定できる相手が相続人や受遺者などに限られなくなり、人数も3人まで広がりました(法務省のお知らせ)。
通知を受けても、それだけでは中身は分からない
通知に書かれているのは、遺言者の氏名・生年月日、保管所の名称、保管番号です。内容を見るには、遺言書情報証明書の請求か閲覧が要ります。また、閲覧や証明書の請求ができるのは関係相続人等だけです。指定者通知を受けた人でも、相続人でも受遺者でもなければ中身は見られません(法務省「通知」)。
外国籍の遺言者などは、戸籍との連携による通知の対象にならず、証明書が交付されたときだけ指定者通知が届きます。
相続人などが取る2つの証明書
| 証明書 | 何が分かるか | 手数料 |
|---|---|---|
| 遺言書保管事実証明書 | 自分に関係する遺言書が保管されているかどうか | 1通800円 |
| 遺言書情報証明書 | 遺言書の画像全部(遺言書の内容) | 1通1,400円 |
(法務省「証明書について」「相続人等の手続」)
預けた遺言書の原本は、相続人であっても返してもらえません(Q23)。遺言書情報証明書が原本の代わりになり、相続登記や銀行の相続手続きに使えます(Q20)。
請求は全国どこの保管所でもでき、郵送でも請求できます(法務省は郵送を勧めている)。添付書類は、遺言者の死亡が分かる戸籍、請求者の住民票の写し、相続人であることが分かる戸籍などです。法務省は、法定相続情報一覧図の写し(住所記載あり)を使うと審査が早くなると案内しています。 相続登記の流れと法定相続情報一覧図の使い方は相続登記の義務化の記事にまとめています。

証明書は何通取ればいいの?

登記と、預金のある金融機関ごとに使うことが多いので、通数は先に手続きの数を数えてから決めます。1通1,400円で、郵送でも請求できます。取り直すより、最初に必要な通数をまとめて請求したほうが手間は少なくなります。
公正証書遺言との比べ方①:費用は「手数料令の表」で数える
公正証書遺言の手数料は、公証人手数料令という政令で決まっています。2025年10月1日に表が改定されました。
| 遺言で受け取る財産の額 | 手数料 |
|---|---|
| 50万円以下 | 3,000円 |
| 50万円超〜100万円以下 | 5,000円 |
| 100万円超〜200万円以下 | 7,000円 |
| 200万円超〜500万円以下 | 1万3,000円 |
| 500万円超〜1,000万円以下 | 2万円 |
| 1,000万円超〜3,000万円以下 | 2万6,000円 |
| 3,000万円超〜5,000万円以下 | 3万3,000円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 4万9,000円 |
| 1億円超〜3億円以下 | 4万9,000円+5,000万円までごとに1万5,000円 |
(公証人手数料令 別表。3億円超は省略)
この表の使い方には、決まりがあります(公証人手数料令第19条・第25条・第32条・第40条・第40条の2・第43条、日本公証人連合会「遺言」Q7)。
- 財産を受け取る人ごとに財産の額を出し、表で手数料を求めて合計する
- 遺言全体の財産が1億円以下なら1万3,000円を足す(遺言加算)
- 電子データで作った公正証書は、紙に出力した枚数が3枚を超えると、1枚ごとに300円を足す
- 手元に受け取る正本・謄本(にあたるもの)の手数料:電子データなら1通2,500円、紙なら1枚300円
- 公証人が病床で作成したときは、1の額に5割を足す(遺言加算の前の額に)。出張したときは日当(1日2万円、4時間以内は1万円)と交通費
遺言加算の条文はこうです。
遺言の公正証書の作成(遺言の補充又は更正に係るものを除く。)についての手数料の額は、第九条の規定による額に一万三千円を加算する。ただし、遺言の目的の価額が一億円を超えるときは、この限りでない。
(公証人手数料令第19条第1項)
計算すると、次のようになります(当方計算。枚数加算と正本・謄本の手数料は含めていない)。
| 例 | 計算 | 手数料 |
|---|---|---|
| 自宅と預金の合計3,000万円を、配偶者1人に相続させる | 2万6,000円+遺言加算1万3,000円 | 3万9,000円 |
| 配偶者に2,000万円、子に1,000万円を相続させる | 2万6,000円+2万円+1万3,000円 | 5万9,000円 |
| 上の1つ目を、入院先の病床で作ってもらう | 2万6,000円×1.5+1万3,000円 | 5万2,000円+日当・交通費 |
保管制度の3,900円と比べると差はありますが、比べる相手は手数料だけではありません。 公正証書遺言には、次の節のように書く手間や出向き方の違いがあります。
改定前の表との違い
2025年9月までは、100万円以下が5,000円、1,000万円超〜3,000万円以下が2万3,000円、遺言加算が1万1,000円でした(公証人手数料令 令和7年4月1日施行版)。古い本やサイトの金額は、この改定前のものがあります。
公正証書遺言との比べ方②:手間・出向き方・死後の手続き
| 保管制度(自筆証書遺言) | 公正証書遺言 | |
|---|---|---|
| 誰が書くか | 本人が全文を手書き(財産目録を除く) | 公証人が作る。本人は内容を伝え、電子サインをする |
| 証人 | 要らない | 2人の立会い(民法第969条は「二人以上」)。推定相続人・受遺者とその配偶者・直系血族などはなれない(民法第974条) |
| 内容の確認 | 外形だけ。内容の相談には応じない | 公証人が相談に応じる(相談は無料と日本公証人連合会は案内) |
| 出向き方 | 本人が保管所へ。出張なし | 公証役場へ。病気などのときは公証人の出張ができる。条件を満たせばウェブ会議も |
| 国・公証人に払う手数料 | 3,900円 | 前の節の計算による |
| 検認 | 要らない | 要らない(民法第1004条第2項) |
| 亡くなった後 | 相続人などが遺言書情報証明書(1通1,400円)を取る | 作成時に正本・謄本を受け取るのが通常。相続人などは全国の公証役場で遺言の有無を無料で検索できる |
| 原本の保管 | 法務局。死亡後50年 | 公証役場(電子データは日本公証人連合会のシステム)。死亡後50年・作成後140年・生後170年の取扱い |
(法務省「よくあるご質問」、民法第969条・第974条・第1004条、日本公証人連合会「遺言」)
法務省のQ&Aは、どちらを選ぶかは「それらを比較した上で、ご本人の判断」としています(Q26)。比べるときは、次の3つを並べると整理しやすくなります。
- 書けるか:全文を手書きできるか。財産が多く、目録や書き分けが複雑になるか
- 出向けるか:本人が予約して法務局に行けるか。行けないなら保管制度は使えない
- 残された人の手間:亡くなった後、誰がどの書類を取ることになるか

法務局に預けるのと公正証書、どっちが得なの?

手数料だけなら法務局のほうが少なくて済みます。ただ、内容を誰も確かめないまま預けることになるので、書き方に不安があれば専門家に見てもらう費用が別にかかることもあります。費用と手間を両方並べて、ご本人が決めることになります。
最近の変更と、これからの変更
| 時期 | 変更 | 状態 |
|---|---|---|
| 2023年10月2日 | 指定者通知の相手が限定されなくなり、3人まで指定可能に | 実施中 |
| 2025年10月1日 | 公正証書のデジタル化。原則として電子データで作成し、本人は電子サイン(押印不要)。メールでの嘱託、ウェブ会議(リモート方式)が可能に。手数料の表も改定 | 実施中。リモート方式は指定された公証人の役場から順に、本人の希望があり公証人が相当と認めた場合 |
| 2026年2月2日 | 保管制度の申請書類のメール事前チェックの試行を、39都道府県・68保管所に拡大 | 試行中 |
| 2026年3月2日 | 保管制度の省令改正。遺言書が1枚ならページ番号不要、申請書の記名欄を削除、DV被害者の住所などを証明書に表示しない措置を新設 | 実施中 |
| 2026年6月24日公布 | 民法などの改正(令和8年法律第45号)。自筆証書遺言・秘密証書遺言などの押印を任意に | 公布から1年以内の政令で定める日に施行 |
| 同上 | 保管証書遺言の新設(パソコンで作った遺言のデータや印刷したものを法務局に預け、本人が遺言書保管官の前で全文を口述する方式。ウェブ会議も可)。今の保管制度も、オンライン申請・ウェブ会議ができるように | 公布から3年以内の政令で定める日に施行 |
(法務省の保管制度のお知らせ、省令改正の概要、「民法等の一部を改正する法律(成年後見及び遺言の制度の見直し)について」、令和5年法律第53号の説明資料、日本公証人連合会のチラシ、e-Govの改正後条文)
押印は、施行までは要る
改正後の民法第968条では「印を押さなければならない」が削られます。ただし、施行日はまだ政令で決まる前の段階です(2026年10月17日時点で、e-Govは施行日未定の扱い)。法務省の様式の案内も、今は押印を求めています。いま書く手書きの遺言書は、今の民法どおり押印します。
また、「本人が出向く」という保管制度の決まりも、オンライン申請とウェブ会議の改正が施行されれば変わります。それまでは、この記事に書いた手続きのままです。
住宅会社の営業担当の方へ
家を建てる相談では、親の土地を使う、親から資金援助を受ける、夫婦で持ち分を分けるといった場面で、相続や遺言の話が出ることがあります。
- 遺言を書くか、どの方式にするか、何を書くかは勧めない。内容は弁護士などの専門家や公証人の領域です
- 伝えてよいのは、法務局に1通3,900円で預ける制度があること、預けると検認が要らないこと、法務局は内容を確かめないこと、公証役場でも相談できること、くらいまでと考えておくと安全です
- 親の土地に建てる計画は、その土地を誰が相続するかで前提が変わります。相続登記の段取りは相続登記の義務化の記事、相続税がかかるかの目安は相続税の基礎控除の記事にまとめています
まとめ
- 自筆証書遺言は、法務局(遺言書保管所)に1通3,900円で預けられる。保管の年数で手数料は増えない
- 申請は本人が予約して出向く。代理・郵送はできず、出張もない(2026年10月時点)
- 用紙はA4・片面・決まった余白。綴じない、封をしない。法務局は形式の外形だけを見て、内容が有効かは確かめない
- 預けた遺言書は検認が要らない。相続人などは遺言書情報証明書(1通1,400円)を取って手続きに使う
- 亡くなると、指定した人(3人まで)に指定者通知が届き、誰かが証明書を取るとほかの相続人などにも通知が届く
- 公正証書遺言の手数料は、受け取る人ごとの財産額で計算して合計し、1億円以下なら1万3,000円を足す。表は2025年10月に改定された
- 押印の任意化(1年以内)と保管証書遺言の新設(3年以内)が決まっている。施行までは今の決まりで書く
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相続が始まった後の期限は、相続放棄が3か月(相続放棄の記事)、亡くなった人の準確定申告が4か月、相続税の申告が10か月です。葬祭費や未支給年金などの請求は家族が亡くなったときに受け取れるお金に一覧があります。
出典
- 法務省「自筆証書遺言書保管制度」(お知らせ)
- 法務省「遺言書保管制度とは?」
- 法務省「遺言者の手続」
- 法務省「遺言書の様式等についての注意事項」
- 法務省「相続人等の手続」
- 法務省「証明書について」
- 法務省「予約」
- 法務省「手数料」
- 法務省「通知」
- 法務省「よくあるご質問」
- 法務省「法務局における遺言書の保管等に関する省令の一部を改正する省令」の概要(令和8年3月2日)
- 法務省「民法等の一部を改正する法律(成年後見及び遺言の制度の見直し)について」
- 法務省「民法等改正法の概要」
- 法務省「民事関係手続等における情報通信技術の活用等の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」の説明資料
- e-Gov法令検索 法務局における遺言書の保管等に関する法律(第4条・第9条・第11条・第12条)
- e-Gov法令検索 法務局における遺言書の保管等に関する法律関係手数料令
- e-Gov法令検索 法務局における遺言書の保管等に関する政令(第5条)
- e-Gov法令検索 民法(第968条・第969条・第974条・第1004条・第1005条)
- e-Gov法令検索 公証人手数料令(第9条・第19条・第25条・第32条・第40条・第40条の2・第43条・別表)
- 裁判所「遺言書の検認」
- 日本公証人連合会「遺言」
- 日本公証人連合会「手数料」
本記事は2026年10月17日時点の法令と、法務省・裁判所・日本公証人連合会の公表内容に基づいています。法律相談に代わるものではありません。遺言の内容や方式の選び方など個別の判断は、法務局(遺言書保管所)、公証役場、弁護士会などの窓口にご相談ください。
よくある質問
法務局に遺言書を預けるといくらかかりますか?
保管の申請は遺言書1通につき3,900円で、収入印紙で納めます。保管する年数が長くなっても追加の手数料はかかりません。このほか、本籍の記載のある住民票の写しを取る費用がかかります。
家族が代わりに法務局へ持って行ってもいいですか?
できません。保管の申請は遺言者本人が予約して遺言書保管所に出向く決まりで、代理人による申請や郵送による申請はできません。介助の付き添いは認められています。
法務局に預ければ、遺言の内容が有効だと確かめてもらえますか?
確かめてもらえません。法務局が見るのは、日付や署名などの形式と用紙の様式という外形だけです。法務省は、この制度は遺言書の有効性を保証するものではないとしていて、内容の相談にも応じていません。
法務局に預けた遺言書は、亡くなった後に検認が要りますか?
要りません。遺言書保管法第11条で、保管されている遺言書には民法の検認の規定を適用しないと定められています。相続人などは遺言書情報証明書(1通1,400円)を取り、登記や預金の手続きに使います。
公正証書遺言にすると手数料はいくらですか?
財産を受け取る人ごとに財産の額から手数料を出して合計し、財産の合計が1億円以下なら1万3,000円を足します。たとえば3,000万円を1人に相続させるなら2万6,000円+1万3,000円で3万9,000円です(当方計算)。このほか枚数による加算と、正本・謄本の手数料がかかります。

