先に結論
- 障害者控除は、所得から差し引く額。所得税は27万円、特別障害者40万円、同居特別障害者75万円(令和8年分)
- 住民税は26万円、特別障害者30万円、同居特別障害者53万円
- 対象は、本人・同一生計配偶者・扶養親族。16歳未満の子も対象(扶養控除はないが、障害者控除はある)
- 手帳がなくても、65歳以上で市区町村の「障害者控除対象者認定書」を受けた人は対象。 ただし要介護認定を受けただけでは対象にならず、認定の基準は市区町村ごとに違う
- 会社員は年末調整の扶養控除等申告書の「C」欄で受ける。間に合わなかった分は確定申告で受け、過去の分は還付申告で5年さかのぼれる
- 障害者本人は、前年の合計所得金額が135万円以下なら住民税がかからない
介護が始まった親の書類を整理していて、税金の控除があると知る人は少なくありません。 障害者控除は、手帳を持っている人だけの制度だと考えている人も多くいます。 実は、手帳がなくても、要介護の親が市区町村の認定を受けて対象になる道があります。
この記事では、控除額・対象になる人・手帳のない人の認定書・年末調整の書き方を並べます。 数字と要件の出どころは、国税庁と市区町村の公式資料です。
言葉について
この記事では、所得税法・地方税法の用語に合わせて「障害者」「特別障害者」と書きます。 税の控除の区分を示すための言葉で、人を区別する意図はありません。 江戸川区の案内も、認定書は税の申告に使う書類で「障害者」として認定するものではない、と断っています。
障害者控除はいくら?所得税と住民税の控除額
控除額は3つの区分で決まります。所得税と住民税で額が違います。
| 区分 | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|
| 障害者 | 27万円 | 26万円 |
| 特別障害者 | 40万円 | 30万円 |
| 同居特別障害者 | 75万円 | 53万円 |
(所得税は国税庁 No.1160・所得税法79条、住民税は地方税法34条・314条の2と新宿区の案内から作成。令和8年分の所得税、令和9年度分の住民税)
同居特別障害者は、特別障害者である配偶者や扶養親族が、納税者などとふだん同居している場合です。 同居の相手は、納税者本人・配偶者・生計を一にする親族のいずれかです。 本人が特別障害者のときは、同居の区分はなく40万円(住民税30万円)です。
老人ホームへの入所は「同居」に当たりません
国税庁の質疑応答事例では、病気の治療のための入院は、1年以上の長期でも同居として扱ってよいとされています。 一方で、老人ホームなどに入所している場合は、老人ホームが住まいになり、同居しているとはいえないとされています。 親が施設に入ったら、特別障害者でも75万円ではなく40万円になります。
税金はいくら軽くなるか
控除額は「所得から引く額」で、税金がその額だけ減るわけではありません。 減る税金は、控除額に税率を掛けた額です。住民税の所得割は10%です。
| 区分 | 所得税率5%の人 | 所得税率10%の人 | 住民税(10%) |
|---|---|---|---|
| 障害者 | 約1.4万円 | 約2.7万円 | 約2.6万円 |
| 特別障害者 | 約2万円 | 約4万円 | 約3万円 |
| 同居特別障害者 | 約3.8万円 | 約7.5万円 | 約5.3万円 |
(当方の計算。復興特別所得税は入れていません。所得税の税率は課税所得によって5〜45%です)
たとえば所得税率10%の会社員が、同居の特別障害者の親を扶養していれば、所得税と住民税で年に約12.8万円軽くなる計算です。
対象になる人:本人・配偶者・扶養親族
障害者控除の対象は、次の3者が税法上の障害者に当たる場合です(国税庁 No.1160)。
- 納税者本人
- 同一生計配偶者:生計を一にする配偶者で、令和8年分の合計所得金額が62万円以下の人
- 扶養親族:生計を一にする親族で、令和8年分の合計所得金額が62万円以下の人
16歳未満の子も対象
16歳未満の子には扶養控除がありません。ですが、障害者控除は受けられます。国税庁はこう書いています。
なお、障害者控除は、扶養控除の適用がない16歳未満の扶養親族を有する場合においても適用されます。
(国税庁 タックスアンサー No.1160 より)
配偶者控除が受けられない人でも、配偶者の障害者控除は受けられる
配偶者控除は、納税者の合計所得金額が1,000万円以下でないと受けられません。 一方、同一生計配偶者の定義(所得税法2条1項33号)には、納税者の所得の条件がありません。 納税者の所得が1,000万円を超えていても、配偶者の所得が62万円以下なら、配偶者の障害者控除は受けられます。
扶養親族の所得の線は、令和8年分から62万円
扶養親族の合計所得金額の要件は、令和8年分から58万円以下が62万円以下に変わりました(令和8年12月1日施行。国税庁 No.1180 の注記)。 給与だけの人なら、年収136万円以下が目安です(No.1191 の配偶者の記載と同じ線)。 65歳以上で年金だけの人なら、年金収入172万円以下が目安です(当方の計算)。 年金の親を扶養に入れるときの考え方は、年金受給者の確定申告不要制度で説明しています。
「特定親族」は障害者控除の対象になりません
19〜22歳で所得が62万円を超える子などの「特定親族」は、扶養親族ではありません。 令和8年分の扶養控除等申告書の記載例にも、特定親族は障害者控除の対象にならないと書かれています。
税法上の「障害者」に当たる人
対象は所得税法施行令10条に列挙されています。手帳のある人は、次のとおりです。
| 持っているもの・判定 | 障害者 | 特別障害者 |
|---|---|---|
| 身体障害者手帳 | 3〜6級 | 1級・2級 |
| 精神障害者保健福祉手帳 | 2級・3級 | 1級 |
| 療育手帳など(知的障害の判定) | 重度以外(「B」など) | 重度(「A」など) |
| 戦傷病者手帳 | 特別項症〜第3項症以外 | 特別項症〜第3項症 |
(国税庁 No.1160 とその Q&A から作成)
療育手帳は、自治体によって「愛の手帳」「みどりの手帳」などと呼ばれます(No.1160 の Q&A)。
手帳のほかに、次の人も対象です。
- 精神上の障害で、物事を判断する能力を欠く状態が続いている人(特別障害者)
- 12月31日の時点で6か月以上寝たきりで、複雑な介護が要る人(特別障害者)
- 原子爆弾被爆者で厚生労働大臣の認定を受けている人(特別障害者)
- 65歳以上で、市区町村長や福祉事務所長から、障害者に準ずると認定された人(次の節)
身体障害者手帳の7級相当で手帳が交付されない人は、65歳以上で認定を受けないと対象になりません(No.1160 の Q&A Q1)。
手帳がなくても使える「障害者控除対象者認定書」
65歳以上で、障害の程度が手帳の対象者に準ずると市区町村長などが認めた人は、障害者控除の対象です。 認定を受けると、市区町村から「障害者控除対象者認定書」が交付されます。 特別障害者に準ずると認定されれば、特別障害者の扱いになります。
要介護認定を受けただけでは対象にならない
ここは取り違えやすい点です。国税庁は次のように書いています。
したがって、介護保険法の要介護認定を受けられただけでは障害者控除の対象とはなりません。
(国税庁 タックスアンサー No.1185 より)
要介護認定とは別に、市区町村に認定書の申請をします。 多くの市区町村は、要介護認定のときの資料(主治医意見書や認定調査)をもとに判定します。 そのため、要介護・要支援の認定を受けていることを申請の条件にしている市区町村があります。
認定の基準は、市区町村で違う
4つの市区の公式ページを比べると、判定のしかたが違います。
| 市区町村 | 判定のしかた(ページに書かれていること) |
|---|---|
| 尼崎市 | 65歳以上の要介護1〜3を障害者、要介護4・5を特別障害者に当てはめる。要介護1〜3でも、寝たきりの状態が6か月以上続く人は特別障害者 |
| 江戸川区 | 要介護4・5の人と、要介護1〜3で区の基準に合う人が対象 |
| 文京区 | 要介護度ではなく、主治医意見書の認知症高齢者の日常生活自立度(2または3で障害者、4またはMで特別障害者)や、寝たきりの度合い(Aが6か月以上で障害者、BまたはCが6か月以上で特別障害者)で判定 |
| 千葉市 | 要介護認定とは基準が違い、要介護度が重い人でも認定されない場合があると明記 |
(各市区の公式ページから作成。2026年10月17日に確認)
千葉市のページには、こう書かれています。
障害者控除対象者認定は、要介護認定とは基準が異なるため、要介護度が重度の方であっても対象者として認定されない場合があります。
(千葉市「障害者控除対象者認定」より)
「要介護◯なら対象」という線は、全国共通ではありません。 住んでいる市区町村の介護保険や高齢福祉の担当課に、基準と申請方法を確かめます。

親が要介護2なんだけど、うちは対象になるの?

要介護度だけでは決まりません。尼崎市なら対象になる基準ですが、文京区なら認知症や寝たきりの度合いで見ます。まず市区町村の窓口に、親の住所地の基準を聞いてみてください。
申請のしかた
4つの市区のページに共通する流れは、次のとおりです。
- 親が住んでいる市区町村の介護保険・高齢福祉の担当課に申請書を出す(窓口か郵送)
- 介護保険被保険者証の写しなどを添える(本人確認書類を求める市区町村もある)
- 2週間程度で認定書が届く(江戸川区はおおむね1週間、他の自治体で介護認定を受けた人は1か月程度という文京区の例もある)
文京区は、本人のほか家族なども申請できるとしています。
認定書は、年が明けてからしか出ない市区町村がある
認定はその年の12月31日の状態で判定します(死亡した場合は死亡日)。 文京区・江戸川区・尼崎市は、令和7年分の申請を令和8年1月から受け付けていました。 この場合、その年の年末調整には間に合いません。 翌年に確定申告(還付申告)をして控除を受けます。
会社員は年末調整で:扶養控除等申告書の書き方
会社員は、勤務先に出す「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」で障害者控除を受けます。 書くのは「C 障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生」欄です。
| 欄 | 書くこと |
|---|---|
| 障害者の区分 | 本人・同一生計配偶者・扶養親族のどれが、一般の障害者・特別障害者・同居特別障害者のどれに当たるかにチェック。扶養親族は人数も書く |
| 障害者又は勤労学生の内容 | 障害の状態、または手帳などの種類と交付年月日、障害の程度(等級)。家族の場合は氏名も |
(国税庁「令和8年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の裏面と記載例から作成)
国税庁の記載例では、内容の欄に「山川隆雄、身体障害者3級 身体障害者手帳 平成28年4月11日交付」のように書いています。 認定書の場合も同じ考え方で、氏名、認定書の名前と交付日、障害者か特別障害者かを書きます。
16歳未満の子は、B欄(源泉控除対象親族)には書きません。 申告書の下の「住民税に関する事項」の「16歳未満の扶養親族」欄に書き、C欄で障害者にチェックを付けます。 ほかの欄の書き方は、扶養控除等申告書の記入例にまとめています。
年の途中で手帳を取った・認定を受けたとき
今年の分(令和8年分)の申告書は、年の初めに出してあります。 内容が変わったら、変わった後の最初の給与の前日までに、異動を書いた申告書を勤務先に出します(国税庁 A2-1)。 年末調整に反映されなかった分は、翌年の確定申告で受けます。
共働きの夫婦はどちらで受けるか
同じ家族は、夫婦のどちらか一方の扶養親族になります。どちらの扶養親族にするかは、申告書に書いたところで決まります(所得税法85条・所得税法施行令219条)。 そのため、同じ子の障害者控除を夫婦の両方で受けることはできません。 子が2人以上いれば、扶養控除等申告書の裏面にあるとおり、夫婦で分けて控除を受けることもできます。
年金で暮らす親が本人のとき
年金を受け取っている本人が障害者のときは、日本年金機構などに出す「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」で障害者控除を受けます。 出していないと、確定申告をしなければ控除が入りません。詳しくは年金受給者の確定申告不要制度にあります。
間に合わなかった年は、確定申告と還付申告で取り戻す
年末調整で受けなかった分は、翌年の確定申告で受けられます。 確定申告をしていない年分なら、還付申告で5年さかのぼれます。 2026年中は令和3年分(2021年分)まで出せます。 手続きと年分ごとの期限は、還付申告は5年さかのぼれるで説明しています。
さかのぼれるのは、その年の12月31日に「障害者」だった年分だけ
国税庁の質疑応答事例に、今年手帳の交付を受けた人のケースがあります。障害の程度は3年前から同じだったとして、過去の年分の控除を求めたものです。 国税庁は、さかのぼって適用することはできないと答えています。 手帳は、交付を受けた年分から使えるものと考えてください。
一方、市区町村の認定は、過去の年分も申請できる場合があります。 千葉市は最長で5年分をさかのぼって申請できるとしています。 ただし、過去の介護保険の認定調査資料をもとに審査するため、5年分を出せない場合があるとも書いています。
認定の申請が間に合わないときの扱いもあります。 前年の12月31日に、認定を受けられる程度の障害があったとします。 申告のときに認定を申請中なら、障害者控除を適用してよいとされています(国税庁の質疑応答事例)。 手帳も同じで、申告のときに交付を申請中か、交付のための医師の診断書があれば、控除を受けられる場合があります(No.1186)。

親はもう亡くなっていて、去年の分を取り戻したいんだけど…

亡くなった年の分は、亡くなった日の状態で判定します。千葉市や江戸川区は、対象者が亡くなった場合の申請方法を案内しています。親の住所地だった市区町村に問い合わせてみてください。
住民税:障害者本人は135万円以下なら非課税
障害者本人は、前年の合計所得金額が135万円以下なら住民税がかかりません(地方税法295条1項2号)。 この非課税は本人の扱いで、障害者を扶養している家族の住民税が非課税になるわけではありません。 給与収入に直した目安と、世帯の非課税の線は、住民税非課税世帯とはにまとめています。
住民税の障害者控除(26万円・30万円・53万円)は、年末調整か確定申告で手続きが済んでいれば受けられます。 別に住民税の申告をする必要はありません(新宿区の案内)。 住民税の障害者控除は、前年の12月31日の状態で判定します(地方税法314条の2)。
まとめ
- 障害者控除は、所得税27万円・40万円・75万円、住民税26万円・30万円・53万円(令和8年分)
- 対象は本人・同一生計配偶者・扶養親族。16歳未満の子も、所得1,000万円超の人の配偶者も対象になりうる
- 手帳がなくても、65歳以上で市区町村の認定書を受ければ対象。要介護認定だけでは対象にならず、基準は市区町村ごとに違う
- 会社員は扶養控除等申告書のC欄。認定書が年明けに出る市区町村では、確定申告で受ける
- 過去の分は還付申告で5年さかのぼれる。ただし、その年の12月31日に障害者だった年分に限る
- 老人ホームに入所した親は「同居」に当たらない
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出典
- 国税庁 タックスアンサー No.1160 障害者控除
- 国税庁 タックスアンサー No.1160 障害者控除(Q&A)
- 国税庁 タックスアンサー No.1185 市町村長等の障害者認定と介護保険法の要介護認定について
- 国税庁 タックスアンサー No.1186 身体障害者手帳等の交付を申請中である場合の障害者控除の適用について
- 国税庁 質疑応答事例「障害者控除の適用を受けることのできる年分」
- 国税庁 質疑応答事例「福祉事務所長の認定を受けていない認知症の高齢者に係る障害者控除の適用」
- 国税庁 質疑応答事例「『同居』の範囲(長期間入院している場合)」
- 国税庁 タックスアンサー No.1180 扶養控除
- 国税庁 タックスアンサー No.1191 配偶者控除
- 国税庁「令和8年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」
- 国税庁「≪記載例≫令和8年分 給与所得者の扶養控除等申告書」
- 国税庁「令和9年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」
- 国税庁 A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告
- e-Gov法令検索 所得税法(第2条・第79条・第85条)
- e-Gov法令検索 所得税法施行令(第10条)
- e-Gov法令検索 地方税法(第34条・第295条・第314条の2)
- 新宿区「住民税の障害者控除・非課税」
- 千葉市「障害者控除対象者認定」
- 文京区「障害者控除対象者認定」
- 江戸川区「税の障害者控除を申告される方へ」
- 尼崎市「障害者控除対象者認定書の発行について」
- 尼崎市「障害者控除認定 適用基準」
本記事は2026年10月17日時点で公表されている内容に基づいています。障害者控除対象者認定の基準・申請の時期・過去の年分の扱いは、市区町村ごとに異なります。個別の判断は、税務署・勤務先・お住まいの市区町村の窓口にご確認ください。
よくある質問
障害者控除はいくらですか?
令和8年分の所得税では、障害者27万円、特別障害者40万円、同居特別障害者75万円を所得から差し引きます。住民税では26万円、30万円、53万円です。税金がこの額だけ減るのではなく、所得から引かれる額です。
障害者手帳がなくても障害者控除は受けられますか?
65歳以上で、市区町村長や福祉事務所長から障害者に準ずると認定された人は、手帳がなくても対象です。認定を受けると「障害者控除対象者認定書」が交付されます。要介護認定を受けただけでは対象になりません。
要介護いくつなら認定されますか?
市区町村で基準が違います。尼崎市は要介護1〜3を障害者、要介護4・5を特別障害者に当てはめる基準を公開しています。文京区は主治医意見書の認知症や寝たきりの度合いで判定し、千葉市は要介護度が重くても認定されない場合があると書いています。住んでいる市区町村の介護保険や高齢福祉の窓口に確かめます。
過去の年の障害者控除を受け忘れていました。取り戻せますか?
確定申告をしていない年分は、還付申告で5年さかのぼれます。ただし、その年の12月31日に障害者に当たっていたことが条件です。後から手帳を取っても、手帳交付の前の年分にさかのぼることはできません。認定書を過去の年分まで出すかどうかは市区町村で違います。



