専業主婦(主夫)のiDeCo|税金が減らなくても入る意味はあるか

専業主婦(主夫)のiDeCo|税金が減らなくても入る意味はあるかのイメージ年金と老後

先に結論

  • 専業主婦(主夫)など国民年金の第3号被保険者もiDeCoに入れる。 上限は月23,000円で、2026年12月の改正でも変わらない
  • 掛金の所得控除は、本人に課税所得がないと効かない。 配偶者の口座から払って配偶者の控除にすることもできない
  • 効くのは、運用益の非課税と、受け取るときの控除。 ただし原則60歳まで引き出せず、元本割れもある
  • 手数料は毎月かかる。 月186円(2027年1月から)は、掛金5,000円なら3.7%ほど
  • iDeCoの掛金で扶養から外れることはない。 ただし受け取る年は、額によって配偶者控除の判定に入る
  • この記事は、入る・入らないのどちらもすすめない。判断の材料を並べる
専業主婦(主夫)がiDeCoで毎月払う手数料186円が、掛金に占める割合を、掛金5,000円・10,000円・23,000円で比べた棒グラフ

iDeCo(個人型確定拠出年金)の説明では、「掛金が全額所得控除になる」がいちばん先に出てきます。 ところが専業主婦(主夫)は、所得税や住民税を払っていない人が多く、この控除が効きません。

それでも入る意味があるのか。この記事は、効くものと効かないもの、かかる費用、扶養との関係を、国民年金基金連合会(iDeCo公式サイト)・国税庁・日本年金機構の資料(2026年10月24日に確認)で並べます。 入る・入らないのどちらもすすめません。特定の金融機関や運用商品をすすめる記事でもありません。

第3号被保険者の上限は月23,000円のまま

会社員・公務員(第2号被保険者)に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者は、国民年金の第3号被保険者です。iDeCoには「第3号加入者」として入れます。

区分2026年11月分まで2026年12月分から
第3号加入者(専業主婦・主夫など)23,000円23,000円(変更なし)
参考:会社員(企業年金なし)23,000円62,000円
参考:自営業68,000円75,000円

出典:厚生労働省「iDeCo拠出限度額の引き上げ」、iDeCo公式サイト「iDeCoの加入資格・掛金・受取方法等」

「iDeCoの上限が上がる」という話は、第3号の人には当てはまりません。 掛金は月5,000円から1,000円単位で決めます。第3号の人は、年1回以上決めた月にまとめて払う「月別指定(年単位)拠出」も選べます。

掛金の所得控除は、課税所得がないと効かない

iDeCo公式サイトのよくあるご質問は、第3号被保険者もiDeCoの3つの税制優遇を受けられるとしたうえで、所得控除のメリットを受けるには課税所得がある必要があると書いています。

所得控除は、所得から引いて税金を計算する額です。もともと所得税も住民税もかかっていない人は、引いても税金が減りません。

第3号でいられる年収と、税金がかかる年収

第3号でいられるのは、健康保険の扶養に入れる人です。日本年金機構の基準では、年間収入130万円未満(60歳以上などは180万円未満)が目安です。

一方で所得税は、令和8年分と令和9年分は、給与収入だけなら178万円までかかりません(国税庁)。

年収の目安
健康保険の扶養(第3号)でいられる130万円未満
所得税がかかり始める(給与だけ・令和8年分・令和9年分)178万円を超えたら
住民税がかかり始める市区町村で違う。所得税より低い年収からかかる

(当方で整理)

この2つを並べると、給与だけの第3号の人は、iDeCoで所得税は減りません。 減る可能性があるのは住民税です。パートの収入で住民税の所得割を払っている人は、払っている住民税の範囲で減ります。 自分が住民税を払っているかは、勤め先から受け取る住民税の決定通知書や、市区町村の課税証明書で確かめられます。

配偶者が払って、配偶者の控除にはできない

夫(妻)の口座からは払えない

iDeCo公式サイトのよくあるご質問では、第3号被保険者の掛金は本人名義の預金口座からの引き落とし(個人払込)に限られ、配偶者が支払うことはできないとされています。 所得控除の対象になるのも、加入者本人の掛金だけです。税金を払っている配偶者の側で控除を受けることはできません。

みぞれ
みぞれ

控除が効かないなら、入る意味はないってこと?

しぐれ
しぐれ

控除は3つの優遇のうちの1つです。残りの2つは、課税所得がなくても同じように効きます。 それと費用・引き出せない期間を並べて決めてください。

課税所得がなくても効くもの

運用益が非課税

iDeCoの中で増えた分には、税金がかかりません。iDeCo公式サイトは、通常の金融商品の運用益には源泉分離課税(20.315%)がかかるところ、iDeCoでは非課税で再投資されると説明しています。 ただし、運用の結果によっては増えずに減ることもあります。減った場合は、この優遇は効きません。

運用益が非課税になる制度には、NISAもあります。NISAには60歳まで引き出せないという決まりがなく、金融庁は、売った商品の分の非課税枠を翌年以降に使い直せると説明しています。 そのかわり、NISAにはiDeCoのような掛金の所得控除はありません。課税所得のない人にとっては、両者の差は「引き出せない期間」と「受け取るときの控除」に絞られます。

受け取るときの控除

iDeCoのお金は、60歳以降に一時金か年金で受け取ります。

  • 一時金で受け取る … 退職所得として扱われ、退職所得控除が使える
  • 年金で受け取る … 公的年金等の雑所得として扱われ、公的年金等控除が使える

退職所得控除は、iDeCoでは掛金を出した期間を勤続年数として計算します。国税庁 No.1420の式では、20年以下なら「40万円×年数」(80万円に満たないときは80万円)です。 会社の退職金を受け取る予定がない人は、iDeCoの一時金と退職金のあいだの控除の調整を気にせずに、この枠を使えます。

受け取り方ごとの税金と計算例は「iDeCoの受け取り方」に書いています。

手数料は、掛金が少ないほど重くなる

iDeCoは、口座を持っているだけで手数料がかかります。課税所得のない人には控除の効果がないので、手数料はそのまま費用として残ります。

手数料額
加入するとき(国民年金基金連合会)2,829円(1回)
掛金を出すたび(国民年金基金連合会)105円。2027年1月26日の引き落とし分から月額120円
毎月(信託銀行)66円
毎月(運営管理機関)金融機関ごとに違う。ネット証券の主な5社は0円

出典:国民年金基金連合会、iDeCoの口座はどこで開く?で確かめた各社の資料

運営管理機関の手数料が0円の金融機関なら、2027年1月からの毎月の手数料は186円(120円+66円)、年2,232円です。

掛金(月)毎月の手数料186円の割合
5,000円約3.7%
10,000円約1.9%
23,000円約0.8%

(当方計算)

掛金の額にかかわらず手数料は同じなので、少ない掛金で長く続けるほど、手数料の割合は大きくなります。 このほかに、選んだ投資信託の信託報酬(運用の費用)がかかります。

扶養との関係

iDeCoに入っても、扶養から外れるわけではない

健康保険の扶養(第3号)は、年間の収入の見込み額で判定します(日本年金機構)。配偶者控除は、本人の合計所得金額が62万円以下(令和8年分。給与だけなら給与収入136万円以下)かどうかで判定します(国税庁 No.1191)。

iDeCoの掛金は、どちらの判定でも引かれません。所得控除は合計所得金額を出したあとで引くものだからです。 iDeCoに入ったことで扶養から外れることはなく、逆に、iDeCoの掛金で扶養の範囲に収めることもできません。

受け取る年は、配偶者控除の判定に入ることがある

受け取るときは別です。国税庁の専門用語集では、合計所得金額には退職所得金額も加えるとされ、確定申告が要らない場合でも加えます。国税庁の質疑応答事例にも、配偶者の退職所得が合計所得金額に入り、配偶者特別控除を受けられなくなった例があります。

受け取り方配偶者控除の判定への入り方
一時金退職所得金額が入る。退職所得控除の範囲に収まれば0円
年金公的年金等控除を引いたあとの雑所得が入る

(国税庁 No.1191・専門用語集・質疑応答事例をもとに当方で整理)

受け取る時期に配偶者がまだ働いていて配偶者控除を受けているなら、受け取る額と時期を、配偶者の控除と並べて考える必要があります。 健康保険の扶養の判定にiDeCoの受け取りをどう数えるかは、加入している健康保険に確かめてください。

第3号でなくなったら、届出が要る

働き始めたり、配偶者が退職したりすると、国民年金の種別が変わります。iDeCoの口座はそのまま続けられますが、届出が要ります(iDeCo公式サイト「転職・退職された方へ」)。

何が起きたか新しい種別届書12月分からの上限
会社で厚生年金に入って働き始めた第2号加入者登録情報変更届(K-032)企業年金なしなら62,000円
配偶者の退職・離婚・収入が増えて扶養を外れた(厚生年金に入らない)第1号加入者被保険者種別変更届(K-010A)75,000円

届出をしないと、掛金の引き落としが止まることがあります。第1号になって国民年金の保険料の免除を受けた場合は、掛金を出せなくなります。 会社員になったときの上限の調べ方は「企業年金のある会社員のiDeCo上限」、自営業の上限は「自営業のiDeCo上限は12月から月7.5万円」に書いています。

判断の材料を並べる

効くもの・できること効かないもの・気をつけること
運用益が非課税課税所得がなければ、掛金の所得控除は効かない
受け取るときに退職所得控除・公的年金等控除配偶者の控除にはできない
第3号でなくなっても、同じ口座で続けられる原則60歳まで引き出せない
年単位でまとめて払う方法も選べる手数料は毎月かかり、掛金が少ないほど割合が大きい
運用の結果で元本割れすることがある
受け取る年は、額によって配偶者控除の判定に入る

原則60歳まで引き出せない

iDeCoのお金は、原則として60歳まで引き出せません。途中でやめても、積み立てたお金は戻ってきません。 子どもの教育費や住宅の頭金など、60歳より前に使う予定のあるお金で払うと、必要なときに使えなくなります。

みぞれ
みぞれ

結局、入ったほうがいいの?

しぐれ
しぐれ

このブログでは、どちらとも言いません。60歳まで動かさないお金がいくらあるか、手数料を払っても運用したいか。 この2つに自分で答えられたら、決められます。

まとめ

  • 第3号被保険者もiDeCoに入れる。上限は月23,000円で、2026年12月の改正でも変わらない
  • 掛金の所得控除は本人の課税所得がないと効かない。給与だけの第3号は、所得税は減らない
  • 掛金は本人名義の口座から。配偶者の控除にはできない
  • 運用益の非課税と、受け取るときの控除は効く
  • 毎月の手数料は2027年1月から186円。掛金5,000円なら約3.7%
  • iDeCoの掛金で扶養から外れることはない。受け取る年は、額によって配偶者控除の判定に入る
  • 第3号でなくなったら届出(K-032・K-010A)が要る

関連記事

よくある質問

専業主婦(主夫)もiDeCoに入れますか?

入れます。国民年金の第3号被保険者(会社員・公務員に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者)は、iDeCoの加入対象です。上限は月23,000円で、2026年12月の改正でも変わりません。

専業主婦(主夫)がiDeCoに入ると、税金は減りますか?

本人に課税所得がなければ、掛金の所得控除による税金の軽減はありません。パートの収入で所得税や住民税を払っている人は、その税額の範囲で減ります。運用益が非課税になることと、受け取るときに控除があることは、課税所得がなくても同じです。

夫(妻)の口座から掛金を払って、夫(妻)の控除にできますか?

できません。第3号被保険者の掛金は、本人名義の口座からの引き落としに限られます。所得控除の対象になるのも、加入者本人の掛金だけです。

iDeCoに入ると、扶養から外れますか?

iDeCoの掛金を払うこと自体で、扶養から外れることはありません。健康保険の扶養は収入の見込み額で、配偶者控除は合計所得金額で判定し、iDeCoの掛金はどちらでも引かれません。受け取るときは、受け取り方と額によって、その年の配偶者控除の判定に入ることがあります。

手数料はいくらかかりますか?

加入時に2,829円、掛金を出しているあいだは国民年金基金連合会と信託銀行の分で毎月171円です(2027年1月26日の引き落とし分からは186円)。ネット証券の主な5社は運営管理機関の手数料が0円です。掛金が月5,000円なら、手数料は掛金の3.7%ほどにあたります。