先に結論
- 会社の企業型DC(企業型確定拠出年金)のお金は、退職しても引き出せない。 転職先の企業型DCか、iDeCoなどへ移す
- 期限は、資格を失った月の翌月から6か月以内。 3月31日に退職したら10月末
- 期限を過ぎると、国民年金基金連合会に自動で移される(自動移換)。 運用されず、手数料が引かれ、その期間は受け取り開始の年齢を決める期間に数えられない
- 転職先に企業型DCがあれば、手続きしなくても転職先に移る扱いがある。 iDeCoに6か月以内に入った人も、申し出なしでiDeCoへ移る
- すでにiDeCoに入っている人は、転職・退職のたびに届出が要る。 出さないと掛金の引き落としが止まることがある

会社で企業型DC(企業型確定拠出年金)に入っていた人が転職・退職すると、積み立てたお金の移し先を自分で決める手続きが要ります。 iDeCo(個人型確定拠出年金)に入っている人も、勤め先や国民年金の種別が変わるたびに届出が要ります。
この記事は、退職から6か月のあいだにすることを、移し先ごとに書きます。 中身は、厚生労働省と国民年金基金連合会(iDeCo公式サイト)の案内(2026年10月24日に確認)にもとづきます。 特定の金融機関や運用商品をすすめる記事ではありません。
自分がどれに当たるかを先に決める
手続きは、「退職前に何に入っていたか」と「次にどうなるか」で分かれます。
| 退職前に入っていたもの | 次の勤め先・状況 | すること |
|---|---|---|
| 企業型DC | 転職先に企業型DCがある | 転職先の企業型DCへ移す(転職先の担当部署に申し出る) |
| 企業型DC | 転職先に企業型DCがない・自営業・専業主婦(主夫) | iDeCoへ移す(金融機関に「個人別管理資産移換依頼書(K-003)」を出す) |
| iDeCo | 会社員として転職 | 勤め先の企業年金の有無が変わるなら「加入者登録情報変更届(K-032)」 |
| iDeCo | 自営業・専業主婦(主夫)になる | 国民年金の種別の変更届(K-010A・K-010C) |
出典:iDeCo公式サイト「転職・退職された方へ」「よくあるご質問」
企業型DCとiDeCoの両方に入っていた人は、両方の手続きが要ります。 DB(確定給付企業年金)しかない会社だった人は、このあとの「DBに入っていた人」を見てください。
企業型DCのお金:6か月以内に移し先を決める
企業型DCのお金は、会社を辞めても原則60歳まで受け取れません。 iDeCoと同じ年金資産だからです。 退職したら、どこかの制度に移して持ち運びます。厚生労働省はこれを「ポータビリティ」と呼んでいます。
期限の数え方
期限は、企業型DCの加入者の資格を失った日の属する月の翌月から6か月以内です(確定拠出年金法第83条)。 資格を失うのは退職日の翌日です(同法第11条)。
| 退職日 | 資格を失う日 | 数え始め | 期限 |
|---|---|---|---|
| 3月31日 | 4月1日 | 5月 | 10月末 |
例は当方で数えたものです。退職日が月の途中なら、資格を失う月も変わります。 退職のときに会社から渡される書類に移換の案内があれば、捨てずに残してください。
転職先に企業型DCがあるとき
転職先の企業型DCへ移せます。手続きは転職先の会社の担当部署に申し出ます(iDeCo公式サイト よくあるご質問)。
6か月以内にiDeCoへの移換を選ばなかった場合は、法令の規定により転職先の企業型DCに移されます(申出なし移換)。iDeCo公式サイトのよくあるご質問の説明です。 手続きを忘れても、転職先の企業型DCに入っていれば自動移換にはならない、という扱いです。

転職先にも企業型DCがあるなら、何もしなくていいの?

お金は移ります。ただ、転職先の企業型DCに入る手続きそのものは、転職先で済ませておく必要があります。入社の書類に企業型DCの案内があるかを見てください。
転職先に企業型DCがない・自営業・専業主婦(主夫)になるとき
iDeCoへ移します。手続きは、自分で選んだ金融機関(運営管理機関)で行います。
| やりたいこと | 出す書類 |
|---|---|
| iDeCoで掛金を出し続ける | 個人型年金加入申出書(K-001)と個人別管理資産移換依頼書(K-003) |
| 掛金は出さず、運用だけする(運用指図者) | 個人別管理資産移換依頼書(K-003) |
出典:iDeCo公式サイト よくあるご質問
一部の金融機関では、加入と移換の手続きをオンラインでできます。 金融機関の選び方は「iDeCoの口座はどこで開く?」に、申込みの流れは「iDeCoの申込みの流れと、勤め先に書いてもらう書類」に書いています。
企業型DCの資格を失ってから6か月以内に、新しくiDeCoの加入者になったことが確認できた人もいます。その人は、移換の申し出をしなくても、iDeCoへ移す処理が行われます(iDeCo公式サイト)。 それでも、手続きの書類に移換依頼書を入れておけば、確認の行き違いを待たずに済みます。
退職して国民年金の保険料を免除されると、掛金は出せない
退職後に、本人の申請で国民年金の保険料の免除を受けると、iDeCoの加入者ではいられません。「加入者資格喪失届(K-015)」を出して、運用指図者になります(iDeCo公式サイト「加入者の方へ」)。 この場合もお金はiDeCoに移して、運用だけを続けます。
DB(確定給付企業年金)に入っていた人
DBや厚生年金基金を辞めたときの脱退一時金相当額も、要件を満たせばiDeCoに移せます。 iDeCo公式サイトが挙げる要件は、iDeCoの加入者であることと、DBを脱退してから1年以内に、元のDBに移換を申し出ることです。 出すのは「厚生年金基金・確定給付企業年金移換申出書(K-025)」で、元のDBの証明を受けてから金融機関に出します。
企業型DCと違って、期限を過ぎてもDBのお金が自動移換されるしくみではありません。移せるかどうかは、元のDBの規約と担当に確かめてください。
6か月を過ぎると「自動移換」になる
期限までに移換も脱退一時金の請求もしなかった場合、お金は現金にされ、国民年金基金連合会(特定運営管理機関)に自動で移されます。 これを自動移換といいます。
自動移換の3つの不利益(厚生労働省)
- 資産が運用されない。 現金のまま置かれる
- 管理手数料がかかる。 毎月引かれ、資産が減っていく
- 自動移換の期間は「通算加入者等期間」に入らない。 受け取りを始められる年齢が遅くなることがある
iDeCo公式サイトのよくあるご質問は、もう1つ挙げています。自動移換のままでは、受け取れる年齢になっても給付を受けられません。 受け取るには、iDeCoへ移す手続きが要ります。
かかる手数料
| 場面 | 特定運営管理機関 | 国民年金基金連合会 |
|---|---|---|
| 自動移換されるとき | 3,300円 | 1,048円 |
| 自動移換されている間(毎月) | 58円 | 40円 |
| 自動移換からiDeCoへ移すとき | 550円 | 2,829円 |
| 自動移換から企業型DCへ移すとき | 550円 | ― |
出典:iDeCo公式サイト「転職・退職された方へ」(毎月の管理手数料は令和8年4月分からの額)
毎月の98円(58円+40円)は、自動移換された日の属する月の4か月後からかかります。年に1回、3月末にその年度の分をまとめ、4月に資産から引かれます。 資産が0円の人には、手数料はかかりません。

月98円なら、たいしたことない気もするけど。

額よりも、運用されない期間と、受け取りが遅れる可能性のほうが重いです。60歳時点の通算加入者等期間が10年に届かないと、受け取りを始められる年齢が61歳以降にずれます。
受け取りを始められる年齢と通算加入者等期間の表は、「iDeCo改正は2026年12月から」に載せています。
自動移換されてしまったら
自動移換されると、国民年金基金連合会から「自動移換通知」が届きます。あとからでも、次のどれかを選べます(iDeCo公式サイト よくあるご質問)。
- iDeCoに移して、掛金を出す(加入者になる)
- iDeCoに移して、運用だけをする(運用指図者になる)
- 要件を満たしていれば、脱退一時金として受け取る
- 企業型DCのある会社に転職したら、その企業型DCに移す
自動移換のあとで新しくiDeCoや企業型DCの加入者になったことが確認できた人も、申し出なしで移す処理が行われる、と厚生労働省は案内しています。 分からないときは、国民年金基金連合会が委託した特定運営管理機関の「自動移換者専用コールセンター」に問い合わせます。
脱退一時金を受け取れる人は限られる
企業型DCのお金を現金で受け取る脱退一時金には、7つの要件があり、すべてを満たす必要があります。 中心になるのは、iDeCoに加入できない人であること(国民年金の保険料免除を受けている人など)と、通算拠出期間が5年以下か、資産が25万円以下であることです。 会社員や、国民年金の保険料を納めている自営業・専業主婦(主夫)は、iDeCoに加入できるので、原則として受け取れません。要件の全文は「iDeCo改正は2026年12月から」に書いています。
すでにiDeCoに入っている人の届出
iDeCoの口座は、転職してもそのまま使えます。ただし、勤め先や国民年金の種別が変わったことは、自分で届け出ます。 iDeCo公式サイトの「加入者の方へ」では、届出をしないと掛金の口座振替が一時停止となることがあるとされています。
| 何が変わったか | 届書 |
|---|---|
| 会社員(第2号)から会社員へ転職し、企業年金の加入状況が変わった | 加入者登録情報変更届(第2号被保険者用)(K-032) |
| 自営業・専業主婦(主夫)などから会社員になった | 加入者登録情報変更届(第2号被保険者用)(K-032) |
| 会社員などから自営業・フリーランス(第1号)になった | 加入者被保険者種別変更届(第1号被保険者用)(K-010A) |
| 会社員などから専業主婦(主夫)(第3号)になった | 加入者被保険者種別変更届(第3号被保険者用)(K-010C) |
| 転職先の企業型DCにiDeCoのお金を移す | 加入者資格喪失届(K-015) |
| 国民年金の保険料を本人の申請で免除された | 加入者資格喪失届(K-015) |
出典:iDeCo公式サイト「転職・退職された方へ」「加入者の方へ」
届書は、口座のある金融機関から取り寄せて、その金融機関に出します。
上限が変わることがある
国民年金の種別や勤め先の企業年金が変わると、iDeCoの掛金の上限も変わります。 上限を超える掛金のままだと、国民年金基金連合会の案内では、掛金が自動で減らされたり、引き落としが止まったりすることがあります。 種別の変更の届出とあわせて、掛金額の変更の届出が要る場合があります。
2026年12月からは、企業年金のある会社員の上限が「月62,000円−会社が出す額」になります。 転職先の企業年金の額の調べ方は「企業年金のある会社員のiDeCo上限」に書いています。
転職先の企業型DCに入る人も、iDeCoと一緒に入れる場合があります。 ただし、iDeCo公式サイトのよくあるご質問では、転職先でマッチング拠出(企業型DCに自分の掛金を足すしくみ)を選ぶ場合や、会社の掛金が年単位で出される場合は、iDeCoと併用できないとされています。
給与天引き(事業主払込)だった人
前の会社で掛金を給与天引き(事業主払込)にしていた人は、払い方も変わります。
- 前の会社は、「退職者に係る掛金引落停止依頼書(K-012)」を出して、会社の口座からの引き落としを止めます
- 転職先でも給与天引きにしたいときは、転職先に「事業主払込(登録・納付方法変更等)に関する証明書(K-109A)」を書いてもらいます
- 自分の口座からの引き落とし(個人払込)に変えるときは、K-032と口座振替の依頼書(K-007)を出します
出典:iDeCo公式サイト「転職・退職された方へ」「事業主の方へ」
届け出ないと、退職後も引き落としが続く
iDeCo公式サイトのよくあるご質問では、加入者から届出がないと、国民年金基金連合会は退職を把握できず、掛金の口座振替を続けると説明されています。 自分の口座から払っている人が、退職後に掛金を止めたいときも、自分で届け出ます。
退職前に確かめておくこと
退職の前に
- 自分が入っているのは企業型DCか、DBか、両方か(会社の制度の案内か、企業型DCの加入者向けサイトで分かる)
- 企業型DCの加入者向けサイトのIDとパスワード(退職後の残高の確認に使う)
- 転職先に企業型DCがあるか、マッチング拠出を選ぶか
- iDeCoに入っている人は、掛金の払い方が給与天引きか口座振替か
- 退職後に国民年金の保険料の免除を申請する予定があるか
退職の手続きと、転職先の入社の手続きは、同じ時期に重なります。 企業型DCのお金の移し先は、退職日から逆算して6か月の中で決めると覚えておくと、期限を過ぎにくくなります。
まとめ
- 企業型DCのお金は退職しても引き出せない。転職先の企業型DCかiDeCoなどへ移す
- 期限は資格を失った月の翌月から6か月以内。3月31日退職なら10月末
- 期限を過ぎると自動移換。運用されず、3,300円と1,048円、4か月後から月98円が引かれ、受け取り開始が遅れることがある
- 転職先の企業型DCに入っていれば申出なしで移る。6か月以内にiDeCoに入った人もiDeCoへ移る
- 自動移換されても、あとからiDeCoや企業型DCへ移せる(iDeCoへは550円と2,829円)
- iDeCo加入者は、転職・退職のたびに届出(K-032・K-010A・K-010Cなど)。出さないと引き落としが止まるか、続いてしまう
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出典
- iDeCo公式サイト「転職・退職された方へ」
- iDeCo公式サイト「よくあるご質問」
- iDeCo公式サイト「加入者の方へ」
- iDeCo公式サイト「事業主の方へ」
- 厚生労働省「離職・転職時等の年金資産の持ち運び(ポータビリティ)」
- e-Gov法令検索「確定拠出年金法」
本記事は2026年10月24日時点で公表されている内容にもとづく手続きの説明です。手数料は国民年金基金連合会が公表している額で、変わることがあります。特定の金融機関や運用商品をすすめるものではありません。企業型DCの移換は、勤務先と転職先の担当部署にご確認ください。iDeCoの届出は口座のある金融機関の窓口に、自動移換の状態は自動移換者専用コールセンターにご確認ください。
よくある質問
退職したら、企業型DCのお金は受け取れますか?
原則として受け取れません。企業型DCのお金は、iDeCoと同じく原則60歳まで引き出せない年金資産です。退職したら、転職先の企業型DCかiDeCoなどへ移す手続きをします。脱退一時金として受け取れるのは、iDeCoに加入できない人で、資産が25万円以下か通算拠出期間が5年以下などの要件をすべて満たす場合に限られます。
移す手続きの期限はいつまでですか?
企業型DCの加入者の資格を失った日の属する月の翌月から数えて6か月以内です。資格を失うのは退職日の翌日です。3月31日に退職した場合は、4月1日に資格を失い、10月末が期限になります。
期限までに手続きしないと、どうなりますか?
お金が現金にされ、国民年金基金連合会に自動で移されます(自動移換)。自動移換のあいだは運用されず、移されるときに3,300円と1,048円、その月の4か月後から毎月98円の管理手数料が引かれます。その期間は受け取りを始められる年齢を決める期間に数えられないため、受け取りが遅れることがあります。
すでにiDeCoに入っています。転職したら何か届け出ますか?
届け出ます。会社員から会社員への転職で、勤め先の企業年金の有無が変わるときは「加入者登録情報変更届(第2号被保険者用)(K-032)」を、自営業になったときは「加入者被保険者種別変更届(第1号被保険者用)(K-010A)」を、口座のある金融機関に出します。届け出ないと、掛金の引き落としが止まることがあります。
自動移換されてしまったお金は、あとから動かせますか?
動かせます。iDeCoに移して掛金を出すか運用だけをする、要件を満たせば脱退一時金を受け取る、企業型DCのある会社に転職したらそこへ移す、のいずれかを選びます。iDeCoへ移すときは550円と2,829円の手数料がかかります。



