先に結論
- 給与明細は「支給」「控除」「勤怠」の3つの欄でできています。手取りは「支給の合計−控除の合計」です
- 社会保険料(健康保険・介護保険・厚生年金)は、標準報酬月額×料率÷2。雇用保険料だけは、その月の給与の額×本人の負担率です
- 所得税は、社会保険料を引いた額を国税庁の月額表に当てはめます。扶養控除等申告書を出していれば甲欄、出していなければ乙欄です
- 住民税は、前年の所得で決まった年税額の12分の1を、6月から翌年5月まで引きます。その月の給与の額では変わりません
- 東京都の協会けんぽ・40歳未満・月給30万円・扶養親族なしなら、社会保険料は44,070円、所得税は6,320円です(令和8年度の料率と令和8年分の月額表で当方計算)
- 通勤手当は所得税はかからないのに、社会保険料と雇用保険料の計算には入ります
給与明細は、振込額だけ見て閉じてしまいがちな書類です。 けれども控除の欄には、毎年度変わる料率や、9月・6月に入れ替わる数字が並んでいます。どこが変わったのかが分かれば、家計の予定も立てやすくなります。
この記事では、明細の欄を順に読み、控除の6項目がそれぞれどう計算されているかを、令和8年度の料率で確かめます。 最後に、月給30万円の明細を1行ずつ計算します。
給与明細は「支給」「控除」「勤怠」の3つの欄
給与を払う会社は、支払の明細書を本人に渡すことが所得税法で決まっています(所得税法第231条)。本人の承諾があれば、紙ではなく電子で渡すこともできます。 様式は会社ごとに違いますが、中身はおおむね次の3つに分かれます。
| 欄 | 載っているもの | 見るところ |
|---|---|---|
| 支給 | 基本給、時間外手当、家族手当、住宅手当、通勤手当など | 税金がかかる支給(課税)と、かからない支給(非課税)の区別 |
| 控除 | 健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、所得税、住民税など | 6項目の額。会社によっては財形・社内預金・組合費なども並ぶ |
| 勤怠 | 出勤日数、欠勤、有給休暇の取得・残り、時間外労働の時間など | 時間外の時間と、支給の時間外手当が合っているか |
手取り(差引支給額)は、支給の合計から控除の合計を引いた額です。
支給の欄|課税と非課税に分かれる
基本給や手当は、原則としてすべて所得税がかかる給与です。残業手当、家族手当、住宅手当も同じです(国税庁 タックスアンサーNo.2508)。 所得税がかからない例外の代表が、通勤手当のうち一定の額までの部分です。そのため明細には「課税支給額」「非課税支給額」が分けて載っていることがあります。
時間外手当は、労働基準法で割増の率の下限が決まっています。
| 働いた時間 | 割増の率(下限) |
|---|---|
| 時間外労働 | 25%以上 |
| 時間外労働のうち月60時間を超えた分 | 50%以上 |
| 休日労働 | 35%以上 |
| 深夜(午後10時〜午前5時) | 25%以上 |
(労働基準法第37条、労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令)
勤怠の欄|支給と突き合わせる
勤怠の欄は、支給の額が正しいかを確かめる材料です。時間外の時間が支給の時間外手当に反映されているか、欠勤や遅刻の控除が勤怠の記録と合っているかを見ます。 有給休暇の残りの日数を載せている会社もあります。
控除の欄|6項目と、それ以外
控除の欄で、法律にもとづいて引かれるのは次の6項目です(子ども・子育て支援金を健康保険料と分けて載せる会社もあります)。
| 項目 | 何をもとに計算するか | 本人の負担 | いつ変わるか |
|---|---|---|---|
| 健康保険料 | 標準報酬月額 | 料率の半分 | 3月分(協会けんぽ)、9月分(定時決定) |
| 介護保険料(40〜64歳) | 標準報酬月額 | 料率の半分 | 同上。40歳になると加わる |
| 厚生年金保険料 | 標準報酬月額 | 料率の半分 | 9月分(定時決定) |
| 雇用保険料 | その月の給与の額 | 本人の負担率 | 4月(年度の料率)、毎月の給与の額 |
| 所得税(復興特別所得税を含む) | 給与−社会保険料 | 全額 | 毎月の給与の額、1月(税額表の年分) |
| 住民税 | 前年の所得 | 全額 | 6月 |
財形貯蓄・社内預金・労働組合費・社宅の家賃などは、会社と従業員の取り決めで引かれているものです。上の6項目とは性質が違います。
社会保険料は「標準報酬月額×料率÷2」
標準報酬月額は、給与を等級に当てはめた額
健康保険料と厚生年金保険料は、実際の給与そのものではなく、標準報酬月額をもとに計算します。給与(報酬月額)を一定の幅で区切った等級に当てはめた額です。 厚生年金の標準報酬月額は、1等級(8万8千円)から32等級(65万円)まであります(日本年金機構「厚生年金保険の保険料」)。
たとえば協会けんぽの東京支部の保険料額表では、次のように当てはめます。
| 報酬月額 | 標準報酬月額 |
|---|---|
| 290,000円以上310,000円未満 | 300,000円 |
| 310,000円以上330,000円未満 | 320,000円 |
(協会けんぽ「令和8年度保険料額表(東京支部)」から抜粋)
報酬月額には、基本給のほか残業手当や家族手当、住宅手当、通勤手当も入ります(日本年金機構)。所得税とは、入るものの範囲が違います(後述)。
令和8年度の料率(協会けんぽ東京支部の例)
| 保険料 | 料率(会社と本人の合計) | 本人の負担 |
|---|---|---|
| 健康保険料 | 9.85%(東京都) | 4.925% |
| 子ども・子育て支援金 | 0.23%(全国一律) | 0.115% |
| 介護保険料(40〜64歳) | 1.62%(全国一律) | 0.81% |
| 厚生年金保険料 | 18.3%(全国一律) | 9.15% |
| 雇用保険料(一般の事業) | 1,000分の13.5 | 1,000分の5 |
(協会けんぽ「令和8年度都道府県単位保険料率」「令和8年度保険料額表(東京支部)」、日本年金機構「厚生年金保険料額表」、厚生労働省「令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内」)
- 協会けんぽの健康保険料率は都道府県ごとに違います。令和8年度の率は3月分から使われ、東京都は9.91%から9.85%に下がりました
- 健康保険組合や共済組合に入っている人は、料率も会社の負担割合も組合ごとに違います
- 厚生年金保険料率は、2017年9月から18.3%で固定されています
- 子ども・子育て支援金は2026年4月分から加わりました。明細に別の欄があるか、健康保険料に合算されているかは会社によります。見分け方は子ども・子育て支援金はいくら引かれる?にあります
給与から引く本人の負担分に1円未満の端数が出たら、50銭以下は切り捨て、50銭を超えたら切り上げます(協会けんぽの保険料額表の注記)。
雇用保険料は、その月の給与の額に掛ける
雇用保険料だけは、標準報酬月額を使いません。その月に支払われた給与の額に本人の負担率を掛けます。残業代が多い月は、雇用保険料も増えます。 通勤手当も、雇用保険料を計算する賃金に入ります(神奈川労働局「労働保険料の算定基礎となる賃金早見表」)。
令和8年度(2026年4月〜2027年3月)の本人の負担率は、一般の事業で1,000分の5です。農林水産・清酒製造の事業と建設の事業は1,000分の6です。
給与から引かれるのは「前月分」の保険料
健康保険法と厚生年金保険法は、会社が給与から引けるのは前月の標準報酬月額にかかる保険料と定めています(健康保険法第167条、厚生年金保険法第84条)。 たとえば10月に支払われる給与から引かれるのは、原則として9月分の保険料です。
この「1か月ずれ」は、料率や標準報酬月額が変わったとき、明細のどの月から変わるかに効いてきます。
標準報酬月額は、4〜6月の平均で9月分から変わる
標準報酬月額は、毎年1回決め直されます。これを定時決定といいます(日本年金機構「定時決定(算定基礎届)」)。
- 会社は、7月1日時点の被保険者について、4月・5月・6月に支払った報酬を届け出ます(算定基礎届。提出は7月10日まで)
- 3か月の報酬の合計を月数で割った額を等級に当てはめます。支払基礎日数が17日未満の月は、原則として計算から外します
- 決め直された標準報酬月額は、9月分から翌年8月分まで使われます
保険料は前月分を引くので、新しい標準報酬月額で計算した保険料が明細に出るのは、原則として10月に支払われる給与からです。給与の締め日・支払日は会社ごとに違うので、自分の明細で何月から変わったかを確かめてください。
4〜6月に残業が多いと、1年間の保険料が上がる
基本給が月30万円でも、4〜6月の残業代で報酬月額の平均が31.5万円になると、標準報酬月額は32万円になります。 東京都の協会けんぽ・40歳未満なら、9月分から1年間、健康保険料・支援金・厚生年金保険料の合計が月2,838円増えます(当方計算)。厚生年金は、そのぶん将来の年金額の計算の基礎も上がります。
昇給や降給で固定的な給与が変わり、3か月の平均で標準報酬月額に2等級以上の差が出たときは、9月を待たずに改定されます。これを随時改定といい、変わった給与を初めて受けた月から数えて4か月目の標準報酬月額から改定されます(日本年金機構「随時改定(月額変更届)」)。

4月から6月だけ残業を減らせば、保険料が安くなるの?

計算のうえではそうなりますが、厚生年金の標準報酬月額が下がると、将来の年金額や、傷病手当金・出産手当金の計算のもとも下がります。保険料だけを見て決める話ではありません。
所得税は、月額表の「甲欄」「乙欄」で決まる
毎月の給与の所得税は、国税庁の「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」で求めます(国税庁「給与所得の源泉徴収税額の求め方」)。
- その月の給与(課税の支給)から、社会保険料等を引く
- 月額表で、1の額が入る行を探す
- 扶養控除等申告書を出している人は甲欄の「扶養親族等の数」の列を、出していない人は乙欄を読む
通勤手当のうち非課税の部分は、1の「給与」に入りません。 社会保険料は全額を引きます。
甲欄と乙欄
| 欄 | 使う人 | 税額の水準 |
|---|---|---|
| 甲欄 | 勤務先に「給与所得者の扶養控除等申告書」を出している人 | 扶養親族等の数で変わる |
| 乙欄 | その他の人(扶養控除等申告書を出していない人) | 甲欄よりかなり高い |
月給30万円の例では、甲欄(扶養親族等0人)が6,320円、乙欄が37,600円で、6倍近い差があります(後の計算例)。転職したばかりの月などに乙欄で引かれていたら、扶養控除等申告書を出したかを確かめてください。
扶養親族等の数
甲欄の「扶養親族等の数」は、扶養控除等申告書に書いた源泉控除対象配偶者と源泉控除対象親族(16歳以上の扶養親族など)の合計です。本人や家族が障害者に当たる場合などは1人ずつ加えます(国税庁「給与所得の源泉徴収税額の求め方」)。 16歳未満の子は、扶養控除の対象ではないため数に入りません(その子が障害者に当たる場合を除く)。
毎月の所得税は「仮の額」
月額表の税額は、1年間同じ給与が続いたと仮定した概算です。1年分の正しい税額は、12月の年末調整で出し直します。 令和8年分は、令和8年度税制改正で控除が引き上げられた分が12月の年末調整でまとめて精算されます。その仕組みは令和8年12月の給与だけ手取りが増える理由に、1年分の結果の見方は源泉徴収票の見方にあります。
2027年1月からは、月額表が変わる
令和9年分の源泉徴収税額表は、所得税・復興特別所得税に防衛特別所得税を併せて源泉徴収するためのもので、令和8年度税制改正の基礎控除の引上げなども反映されています(国税庁「令和9年分 源泉徴収税額表」)。 2027年1月以降に支払われる給与は、令和9年分の表で計算します。この記事の計算例は令和8年分の表を使い、比較として令和9年分の額も添えます。
住民税は、前年の所得で6月から変わる
会社員の住民税は、ほかの5項目と仕組みがまったく違います。
- 税額は、前年の1月〜12月の所得で決まります(総務省「個人住民税」)
- 市区町村が決めた年税額の12分の1を、6月から翌年5月まで毎月の給与から引きます。これを特別徴収といいます(地方税法第321条の5)
- そのため、その月の給与が増えても減っても、住民税は変わりません
前の年に収入が増えた人は6月の明細から住民税が上がり、減った人は下がります。 前の年に所得がなかった人(社会人1年目など)は、その年度の住民税は引かれず、前の年に働いた分が翌年の6月から引かれ始めます。
税率は、所得割が10%(道府県民税4%・市町村民税6%)、均等割が標準で年4,000円です。2024年度からは、均等割と一緒に森林環境税(国税)1,000円も集められています(総務省、東京都主税局)。
ボーナスからは、住民税は通常引かれません。ボーナスの控除はボーナスから引かれる社会保険料はいくら?にまとめています。
通勤手当は、税金はかからないのに社会保険料には入る
通勤手当は、所得税と社会保険で扱いが逆になります。
| 通勤手当の扱い | 根拠 | |
|---|---|---|
| 所得税 | 一定の額まで非課税。電車・バスだけで通う人は、最も経済的かつ合理的な経路の定期代などで、1か月15万円まで | 国税庁 タックスアンサーNo.2582 |
| 健康保険・厚生年金 | 標準報酬月額のもとになる報酬に入る | 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」 |
| 雇用保険 | 保険料を計算する賃金に入る | 神奈川労働局「労働保険料の算定基礎となる賃金早見表」 |
非課税の限度を超えた分は、給与として所得税がかかります。マイカーや自転車で通う人は、片道の距離などに応じて非課税の限度額が決まります(国税庁 タックスアンサーNo.2582)。
通勤手当で等級が上がる例
月給30万円の人に、通勤手当が月1.5万円出る場合です。報酬月額は31.5万円になり、標準報酬月額は30万円から32万円に上がります。 所得税は、非課税の通勤手当を除いた30万円から社会保険料を引いて計算します。
| 東京都・協会けんぽ・40歳未満 | 通勤手当なし | 通勤手当1.5万円 |
|---|---|---|
| 標準報酬月額 | 30万円 | 32万円 |
| 健康保険料 | 14,775円 | 15,760円 |
| 子ども・子育て支援金 | 345円 | 368円 |
| 厚生年金保険料 | 27,450円 | 29,280円 |
| 雇用保険料 | 1,500円 | 1,575円 |
| 社会保険料の合計 | 44,070円 | 46,983円 |
| 所得税(甲欄・扶養親族等0人) | 6,320円 | 6,220円 |
(令和8年度の料率と令和8年分の月額表で当方計算)
通勤手当1.5万円で、社会保険料は2,913円増え、所得税は100円減りました。通勤手当は交通費の実費にあてるお金なので、控除が増えたぶん、自由に使える手取りは減ることになります。

家から遠い会社だと、それだけで社会保険料が高くなるの?

同じ給与でも、通勤手当が多い人ほど標準報酬月額は上がりやすくなります。そのかわり厚生年金の記録も高くなるので、将来の年金額にはプラスに働きます。
計算例|月給30万円の明細を1行ずつ
令和8年度の料率と令和8年分の月額表を使い、次の仮定で当サイトが計算した例です。
- 東京都の会社で協会けんぽに加入、一般の事業
- 月給30万円(基本給と課税の手当の合計)。通勤手当はなし。残業代もなし
- 標準報酬月額30万円
- 扶養控除等申告書を提出
社会保険料と所得税
| 控除 | 計算 | 40歳未満 | 40歳以上 |
|---|---|---|---|
| 健康保険料 | 30万円×9.85%÷2 | 14,775円 | 14,775円 |
| 子ども・子育て支援金 | 30万円×0.23%÷2 | 345円 | 345円 |
| 介護保険料 | 30万円×1.62%÷2 | − | 2,430円 |
| 厚生年金保険料 | 30万円×18.3%÷2 | 27,450円 | 27,450円 |
| 雇用保険料 | 30万円×1,000分の5 | 1,500円 | 1,500円 |
| 社会保険料の合計 | 44,070円 | 46,500円 | |
| 社会保険料を引いた額 | 30万円−合計 | 255,930円 | 253,500円 |
| 所得税(甲欄・扶養親族等0人) | 月額表 | 6,320円 | 6,220円 |
| 住民税を引く前の手取り | 249,610円 | 247,280円 |
所得税は、40歳未満の255,930円が月額表の「254,000円以上257,000円未満」の行、40歳以上の253,500円が「251,000円以上254,000円未満」の行に入ります。
同じ行で扶養親族等の数が違う場合と、乙欄の場合は次のとおりです。
| 所得税 | 40歳未満 | 40歳以上 |
|---|---|---|
| 甲欄・0人 | 6,320円 | 6,220円 |
| 甲欄・1人 | 4,710円 | 4,590円 |
| 甲欄・2人 | 3,090円 | 2,980円 |
| 乙欄 | 37,600円 | 36,600円 |
| (参考)令和9年分の表・甲欄・0人 | 6,160円 | 6,040円 |
(国税庁「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」令和8年分・令和9年分)
令和9年分の行は、社会保険料が同じだったと仮定した比較です。2027年度の料率が変われば、当てはまる行も変わります。
住民税(前年の所得による概算)
住民税は、この月の給与ではなく前年の所得で決まります。令和7年も同じ月給30万円で、賞与がなかったと仮定して、令和8年度の住民税を概算します(40歳未満)。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 令和7年の給与収入 | 360万円 |
| 給与所得(360万円−給与所得控除116万円) | 244万円 |
| 社会保険料控除(令和7年度の料率で1年分を近似) | 527,580円 |
| 基礎控除(住民税) | 43万円 |
| 課税所得(千円未満切り捨て) | 1,482,000円 |
| 所得割(10%)−調整控除2,500円 | 145,700円 |
| 均等割(標準)+森林環境税 | 5,000円 |
| 年税額 | 150,700円 |
| 1か月あたり(÷12) | 約12,600円 |
(給与所得控除は国税庁 タックスアンサーNo.1410の令和7年分の式、基礎控除は地方税法第314条の2、調整控除と均等割は東京都主税局「個人住民税」。社会保険料は東京都の健康保険料率9.91%・厚生年金18.3%・雇用保険1,000分の5.5で12か月分を計算し、年の途中の料率の変わり目は無視した)
この仮定では、手取りは月約23.7万円(249,610円−約12,600円)です。額面30万円の約79%にあたります。
住民税の額は、自分の通知書で確かめる
住民税は、前年の賞与・副業・医療費控除・ふるさと納税・扶養の状況で大きく変わります。 上の表はあくまで計算の流れを示すための概算です。実際の額は、5〜6月に会社経由で渡される「特別徴収税額の決定通知書」で確かめてください。
明細で、ここが変わったら
明細の数字が先月と違うとき、どの項目が動いたかで理由の見当がつきます。
| 変わった時期・項目 | 主な理由 |
|---|---|
| 4月の健康保険料(協会けんぽ) | 3月分から都道府県の料率が改定された(前月分を引くため4月の給与から) |
| 5月の健康保険料・支援金 | 2026年度は、4月分から子ども・子育て支援金が加わった |
| 雇用保険料(4月以降) | 年度ごとの料率の改定、その月の残業代 |
| 6月の住民税 | 前年の所得で年税額が変わった |
| 10月の健康保険料・厚生年金保険料 | 定時決定で9月分から標準報酬月額が変わった |
| 40歳になったあと | 介護保険料が加わる |
| 12月の所得税 | 年末調整で1年分を精算した |
| 1月の所得税 | 新しい年分の税額表に切り替わった(2027年は防衛特別所得税が加わる) |
毎月の明細で確かめること
- 勤怠の時間外の時間と、支給の時間外手当が合っているか
- 健康保険料・厚生年金保険料が、自分の標準報酬月額×料率÷2と合っているか(9月分以降は定時決定の結果で)
- 扶養家族が増えた・減ったのに、所得税の扶養親族等の数が変わっていなければ、扶養控除等申告書の出し直しを会社に相談する
- 6月の住民税が前年と大きく違うときは、決定通知書で理由を見る
客先でこの話をするときの注意
住宅会社の営業担当の方が、お客様の給与明細をもとに返済計画を話すときに確かめてほしいことです。
- 返済に使えるのは差引支給額(手取り)であって、総支給額ではない
- 4〜6月の明細は残業代で膨らんでいることがある。住民税と社会保険料の基準になる時期なので、ほかの月とも見比べる
- 6月に住民税、10月に社会保険料が変わる。どの月の明細かを聞く
- 40歳を境に介護保険料が加わる。30代後半のお客様は、数年後に手取りが少し減る
- 育休の予定があれば、その間の社会保険料の扱いは別に確かめる(育休中の社会保険料の免除)
まとめ
- 給与明細は「支給」「控除」「勤怠」の3つの欄。手取りは支給の合計−控除の合計
- 健康保険・介護保険・厚生年金は、標準報酬月額×料率÷2。令和8年度の協会けんぽ東京支部で本人負担は健康保険4.925%、支援金0.115%、介護0.81%(40〜64歳)、厚生年金9.15%
- 雇用保険料は、その月の給与の額×1,000分の5(一般の事業)
- 給与から引くのは前月分の保険料。定時決定(4〜6月の平均)の結果は9月分から、明細では原則10月の給与から
- 所得税は、社会保険料を引いた額を月額表に当てはめる。扶養控除等申告書を出していれば甲欄、出していなければ乙欄。2027年1月からは令和9年分の表
- 住民税は、前年の所得で決まった年税額の12分の1を6月から翌年5月まで
- 通勤手当は、所得税は一定額まで非課税だが、社会保険料と雇用保険料の計算には入る
- 月給30万円・東京都・40歳未満・扶養親族なしで、社会保険料44,070円、所得税6,320円。住民税を前年も同じ給与として概算すると、手取りは月約23.7万円
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出典
- 日本年金機構「定時決定(算定基礎届)」
- 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」
- 日本年金機構「随時改定(月額変更届)」
- 日本年金機構「厚生年金保険料額表」
- 協会けんぽ「令和8年度都道府県単位保険料率」
- 協会けんぽ「令和8年度保険料額表(東京支部)」
- 厚生労働省「令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内」
- 神奈川労働局「労働保険料の算定基礎となる賃金早見表」
- 国税庁「令和8年分 源泉徴収税額表」(月額表、給与所得の源泉徴収税額の求め方)
- 国税庁「令和9年分 源泉徴収税額表」
- 国税庁 タックスアンサーNo.2582「電車・バス通勤者の通勤手当」
- 国税庁 タックスアンサーNo.2508「給与所得となるもの」
- 国税庁 タックスアンサーNo.1410「給与所得控除」
- 総務省「地方税制度|個人住民税」
- 東京都主税局「個人住民税」
- e-Gov法令検索 地方税法(第314条の2・第321条の5)
- e-Gov法令検索 健康保険法(第167条)
- e-Gov法令検索 厚生年金保険法(第84条)
- e-Gov法令検索 所得税法(第231条)
- e-Gov法令検索 労働基準法(第37条)
本記事は2026年10月17日時点で公表されている内容に基づいています。健康保険料率は都道府県・健康保険組合ごとに、雇用保険料率は事業の種類ごとに異なり、いずれも年度ごとに見直されます。住民税は前年の所得と自治体の条例で決まります。個別の保険料・税額は、勤務先の給与担当、加入している健康保険、税務署、お住まいの市区町村にご確認ください。
よくある質問
給与明細の健康保険料や厚生年金保険料は、どう計算しますか?
毎月の給与を等級に当てはめた「標準報酬月額」に料率を掛け、その半分を本人が払います。令和8年度の協会けんぽ東京支部で標準報酬月額30万円なら、健康保険料14,775円、厚生年金保険料27,450円です。料率は都道府県や健康保険組合で違います。
9月や10月に、社会保険料が変わったのはなぜですか?
4月から6月に受けた報酬の平均で標準報酬月額を決め直す「定時決定」があり、9月分の保険料から新しい額になるためです。給与から引けるのは前月分の保険料なので、明細で変わるのは原則として10月に支払われる給与からです。
通勤手当は、税金と社会保険料のどちらにかかりますか?
電車・バスの通勤手当は、1か月15万円までなど一定の額まで所得税がかかりません。一方で、社会保険料の計算のもとになる報酬と、雇用保険料の計算のもとになる賃金には入ります。通勤手当が増えると、税は変わらなくても社会保険料が上がることがあります。
所得税の欄の「甲欄」「乙欄」とは何ですか?
国税庁の源泉徴収税額表(月額表)の欄の名前です。勤務先に「給与所得者の扶養控除等申告書」を出している人は甲欄、出していない人は乙欄で計算します。月給30万円の例では、甲欄(扶養親族等0人)で6,320円、乙欄で37,600円でした。
住民税が6月に変わるのはなぜですか?
会社員の住民税は、前の年の1月から12月の所得で年税額が決まり、その12分の1を6月から翌年5月まで毎月の給与から引く仕組みだからです。前の年の収入が増えた人は、6月の明細から住民税が上がります。



