相続時精算課税と暦年贈与はどっち?住宅資金の援助で選ぶ方法と届出の期限

相続時精算課税と暦年贈与はどっち?住宅資金の援助で選ぶ方法と届出の期限のイメージ家と住宅ローン

先に結論

  • 親や祖父母からの住宅資金は、まず非課税の特例(省エネ等住宅1,000万円、それ以外500万円。2026年12月31日までの贈与が対象)を使い、超えた分を「暦年課税」と「相続時精算課税」のどちらで受けるかを選びます
  • 非課税の範囲に収まるなら、相続時精算課税を選ぶ必要はありません。 選ぶと、その親からの以後の贈与がすべて相続時精算課税になります
  • 超える分がある例として、省エネ等住宅で1,500万円の援助を考えます。超えた500万円の贈与税は暦年課税で48.5万円、相続時精算課税で0円です(当方計算)。そのかわり相続時精算課税は、親が亡くなったときに390万円が相続財産に加算されます
  • 相続時精算課税は、一度選ぶと暦年課税に戻れません。 届出は翌年2月1日〜3月15日。期限を過ぎると選べません
  • 相続時精算課税の特別控除を使った分は、住宅ローン控除の計算で取得対価から差し引く対象になります
  • 非課税の特例と、親が60歳未満でも相続時精算課税を選べる特例は、どちらも2026年12月31日が期限です。2027年以降は12月の税制改正大綱で決まります

親から住宅資金を出してもらうとき、「非課税の枠」の話はよく出ます。けれども、枠を超えた分をどう扱うかで、もう1つ選ぶことがあります。贈与税の課税方式です。

この記事では、住宅資金の援助を受ける人が、暦年課税と相続時精算課税のどちらにするかを決めるための材料を、国税庁の資料と条文で並べます。相続税そのものの計算には深入りしません。

  1. 住宅資金の援助は「非課税」と「課税方式」の2段で考える
  2. 暦年課税のしくみ
  3. 相続時精算課税のしくみ
  4. 2つの違いを1つの表で
  5. 計算例(当方計算)
    1. 省エネ等住宅で1,500万円もらう場合
    2. 省エネ等住宅以外で1,500万円もらう場合
    3. 非課税の特例が使えない場合
    4. 全額が非課税の範囲に収まる場合
  6. 選んだら暦年課税には戻れない
  7. 届出の期限:翌年3月15日を過ぎると選べない
  8. 非課税と相続時精算課税を一緒に使うときの申告
  9. 住宅ローン控除の取得対価から差し引く額
    1. 例:取得対価4,500万円、省エネ等住宅で1,500万円の援助、年末残高3,200万円(当方計算)
  10. 親が亡くなったとき、何が加算されるか
    1. 暦年課税:加算の期間が3年から7年に延びている
    2. 相続時精算課税:期間に関係なく加算する
    3. どちらでも、非課税の特例を受けた分は加算しない
  11. 親が60歳未満なら、相続時精算課税は住宅資金の特例でだけ選べる
  12. 2027年以降は、12月の税制改正大綱で決まる
  13. どちらにするかを決める前に確かめること
  14. まとめ
  15. 関連記事
  16. よくある質問
    1. 住宅資金の援助を受けるとき、相続時精算課税と暦年贈与はどちらを選べばいいですか?
    2. 相続時精算課税を選んだあと、暦年課税に戻せますか?
    3. 相続時精算課税の届出はいつまでに出しますか?
    4. 2024年から相続時精算課税は何が変わりましたか?
    5. 非課税の特例と相続時精算課税を一緒に使えますか?

住宅資金の援助は「非課税」と「課税方式」の2段で考える

贈与税の課税方法には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあります(国税庁No.4402)。何も届け出なければ暦年課税です。相続時精算課税は、一定の要件に当てはまる人が選んだときだけ使えます。

住宅資金の場合は、その手前にもう1段あります。

段階何をするかどこで決まるか
1段目住宅取得等資金の非課税の特例を使う省エネ等住宅1,000万円、それ以外500万円まで贈与税がかからない
2段目非課税を超えた分を、暦年課税か相続時精算課税かで受ける選んだ方式で贈与税と、将来の相続税の扱いが変わる

非課税の特例の要件と省エネ等住宅の基準は、親からの住宅資金は1,000万円まで非課税にまとめています。受贈者の所得、床面積、翌年3月15日までの新築と入居といった条件です。ここでは2段目を扱います。

非課税の特例は、どちらの方式とも組み合わせられます

非課税の特例を受けた額は、贈与税の課税価格に入りません(租税特別措置法第70条の2第1項)。そのため暦年課税の基礎控除(年110万円)とは別枠です。相続時精算課税を選ぶ場合も、先に非課税の特例を当て、残った額に相続時精算課税を使います(国税庁No.4503)。

暦年課税のしくみ

1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計から、基礎控除110万円を引き、残りに税率をかけます(国税庁No.4408)。

18歳以上の子や孫が、父母や祖父母からもらう場合は「特例税率」を使います。夫の父からの贈与のように、直系尊属でない人からの贈与には使えません。

特例税率の速算表(基礎控除110万円を引いたあとの金額に当てはめる)

基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%―
400万円以下15%10万円
600万円以下20%30万円
1,000万円以下30%90万円
1,500万円以下40%190万円
3,000万円以下45%265万円
4,500万円以下50%415万円
4,500万円超55%640万円

出典:国税庁 No.4408

基礎控除の110万円は、もらう人ごとに1年で110万円です。父と母の両方からもらっても、110万円は1つだけです(国税庁No.4410)。

金額が大きくなるほど税率が上がる累進課税なので、住宅資金のようにまとまった額を一度にもらうと、税額が一気に大きくなります。

相続時精算課税のしくみ

贈与のときの税を軽くし、親が亡くなったときに相続税でまとめて精算する方式です(国税庁No.4103)。

相続時精算課税を選べる人(年齢は贈与の年の1月1日現在)

  • 贈与する人:60歳以上の父母または祖父母など
  • もらう人:18歳以上で、贈与者の直系卑属(子や孫など)である推定相続人、または孫
  • 住宅取得等資金なら、親が60歳未満でも選べる特例があります(後述。2026年12月31日まで)

贈与税の計算は、選んだ贈与者(「特定贈与者」といいます)ごとに、次の順で行います。

  1. 1年間にその贈与者からもらった額から、基礎控除110万円を引く
  2. 残りから特別控除を引く。限度額は累計2,500万円
  3. それでも残る額に一律20%

2024年1月から、相続時精算課税にも110万円の基礎控除ができました

令和5年度税制改正で、相続時精算課税にも年110万円の基礎控除ができました。対象は令和6年1月1日以後の贈与です(国税庁No.4103、租税特別措置法第70条の3の2)。

この110万円には、2つの意味があります。

  • 110万円以下なら贈与税の申告が要りません(国税庁No.4402)
  • 親が亡くなったときに相続財産に加算するのは、110万円を引いたあとの額です(国税庁No.4103)

それまでの相続時精算課税は、少額の贈与でも毎年申告が要り、すべて相続財産に加算されていました。

2つの違いを1つの表で

暦年課税相続時精算課税
選び方何もしなければこちら届出書を出して選ぶ(贈与者ごと)
年110万円の基礎控除もらう人ごとに1つ選んだ贈与者からの分に別に110万円(2人以上ならあん分)
110万円を超えた分累進税率(10〜55%)累計2,500万円までは0円、超えた分は一律20%
親が亡くなったとき原則として加算しない。ただし相続開始前7年以内(経過措置あり)の贈与は加算110万円を引いたあとの額(2024年以後の分)を、期間に関係なくすべて加算
住宅取得等資金の非課税分加算しない加算しない
途中でやめられるか―やめられない(暦年課税に戻れない)

出典:国税庁 No.4402・No.4408・No.4103・No.4161・相続時精算課税のあらまし、租税特別措置法第70条の2第3項

みぞれ
みぞれ

相続時精算課税って、贈与税がゼロになるなら、そっちが得なんじゃないの?

しぐれ
しぐれ

ゼロになるのは贈与のときだけです。 税がなくなるのではなく、親が亡くなったときに相続税の計算へ持ち越されます。相続税がかかる家庭かどうかで、意味が変わります。

計算例(当方計算)

計算は、国税庁No.4408の速算表と、No.4103・No.4409の式にもとづく当方計算です。前提はすべて次のとおりです。

  • 父(贈与の年の1月1日に65歳)から、2026年中に住宅資金を受け取る
  • もらう人は18歳以上の子で、非課税の特例の要件を満たす
  • 父からほかの贈与はなく、ほかの人からの贈与もない

省エネ等住宅で1,500万円もらう場合

非課税1,000万円を当てると、課税価格に入るのは500万円です。

暦年課税相続時精算課税
贈与税の計算(500万円 − 110万円) × 15% − 10万円500万円 − 110万円 − 特別控除390万円
贈与税48.5万円0円
特別控除の残り―2,500万円 − 390万円 = 2,110万円
父が亡くなったとき相続財産に加算する額加算の期間内(後述)なら500万円。払った48.5万円は相続税から差し引く期間に関係なく390万円
非課税の1,000万円加算しない加算しない

省エネ等住宅以外で1,500万円もらう場合

非課税は500万円なので、課税価格に入るのは1,000万円です。

暦年課税相続時精算課税
贈与税の計算(1,000万円 − 110万円) × 30% − 90万円1,000万円 − 110万円 − 特別控除890万円
贈与税177万円0円
特別控除の残り―1,610万円
父が亡くなったとき相続財産に加算する額加算の期間内(後述)なら1,000万円期間に関係なく890万円

同じ1,500万円でも、省エネ等住宅かどうかで暦年課税の贈与税は48.5万円と177万円に分かれます。非課税の枠が倍になるうえ、累進税率がかかる部分が小さくなるためです。

非課税の特例が使えない場合

たとえば受贈者の合計所得が2,000万円を超える場合や、床面積が240平方メートルを超える場合です。2027年以降の贈与で、特例が延長されなかった場合も同じです。1,500万円の全額が課税価格に入ります。

暦年課税相続時精算課税
贈与税の計算(1,500万円 − 110万円) × 40% − 190万円1,500万円 − 110万円 − 特別控除1,390万円
贈与税366万円0円
特別控除の残り―1,110万円

相続時精算課税の特例のほうは、所得と床面積の上限がありません

親が60歳未満のときに使う「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税選択の特例」があります。こちらは受贈者の合計所得金額の要件がなく、床面積も40平方メートル以上で上限はありません(国税庁No.4503)。非課税の特例の要件から外れる人でも、こちらは使える場合があります。

全額が非課税の範囲に収まる場合

省エネ等住宅で1,000万円なら、全額が非課税です。暦年課税でも贈与税は0円なので、相続時精算課税を選ぶ理由はありません。

親が60歳未満で住宅資金の特例を使う場合について、国税庁No.4503は、非課税の特例と併せるときの条件を示しています。非課税の特例を適用したあとに、なお課税価格に入る額があるときに限るという条件です。

選んだら暦年課税には戻れない

ここがいちばん重い条件です。国税庁はこう書いています。

なお、この制度は贈与者(父母または祖父母など)ごとに選択できますが、一度選択すると、その選択に係る贈与者(「特定贈与者」といいます。)から贈与を受ける財産(「相続時精算課税適用財産」といいます。)については、その選択をした年分以降すべてこの制度が適用され、「暦年課税(注)」へ変更することはできません。

出典:国税庁 No.4103

相続税法も、届出書は撤回できないと定めています(第21条の9第6項)。

住宅資金の1回のために選んでも、その後の父からの贈与はずっと相続時精算課税です。 2年目以降は届出を出し直す必要はなく、自動的にそうなります(国税庁No.4103のQ&A Q4)。

みぞれ
みぞれ

父だけ選んで、母からの贈与は暦年課税のまま、というのはできる?

しぐれ
しぐれ

できます。贈与者ごとに選ぶ制度だからです。 国税庁No.4409の例も、父からの贈与だけ相続時精算課税にして、母からの贈与は暦年課税で計算しています。誰からの援助を相続時精算課税にするかを、先に親と話しておくと決めやすくなります。

届出の期限:翌年3月15日を過ぎると選べない

相続時精算課税を選ぶには、「相続時精算課税選択届出書」を所轄の税務署へ出します。期間は最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までで、受贈者の戸籍の謄本などを添付します(国税庁No.4103・No.4304)。

期限を過ぎた届出は認められません

国税庁のQ&Aは、期限を過ぎて届出書を出した場合について、こう答えています。

相続時精算課税の適用を受けることはできません。

出典:国税庁 No.4103のQ&A Q3

さらに、2,500万円の特別控除は、期限内に申告書を出した場合に限って使えます(国税庁No.4103(注3)、相続税法第21条の12第2項)。期限に遅れると、暦年課税の累進税率か、特別控除なしの計算になります。

2026年中に援助を受けるなら、期限は2027年3月15日です。非課税の特例の申告と同じ期間なので、同じ書類の束で出します。

非課税と相続時精算課税を一緒に使うときの申告

非課税の特例だけでも、非課税の範囲に収まっていても申告が必要です(国税庁No.4508)。相続時精算課税と組み合わせる場合は、1つの申告にまとめます。

2026年中に援助を受け、2つを組み合わせる場合

  • 提出期間:2027年2月1日〜3月15日(国税庁No.4429)
  • 出すもの:非課税の特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書
  • 添付するもの:相続時精算課税選択届出書、受贈者の戸籍の謄本など、非課税の特例の添付書類(新築や取得の契約書の写し、省エネ等住宅なら住宅性能証明書など)
  • 贈与税の申告書を出す場合、届出書は申告書に添付して出します(国税庁No.4103・No.4503)

国税庁は、住宅取得等資金の特例ごとに「チェックシート」と添付書類の区分を公表しています。年分ごとに更新されるので、申告の年に国税庁のページで最新の版を確かめてください。

住宅ローン控除の取得対価から差し引く額

住宅ローン控除は、「年末の借入残高」と「家屋と土地の取得対価の額」の少ないほうをもとに計算します。このとき、住宅取得等資金の贈与の特例を使った額は、取得対価から差し引きます(国税庁No.1211-1(注2)、No.1213のQ&A Q1)。

何を差し引くかは、租税特別措置法施行令第26条第1項に書かれています。

当該住宅取得等資金の額(法第七十条の二第一項の規定又は相続税法第二十一条の十二第一項の規定の適用を受けた部分の金額に限る。第二十六項において同じ。)

出典:e-Gov法令検索 租税特別措置法施行令 第二十六条第1項

「法第七十条の二第一項」は非課税の特例、「相続税法第二十一条の十二第一項」は相続時精算課税の特別控除です。つまり、

  • 非課税の特例を受けた額 → 差し引く
  • 相続時精算課税の特別控除を受けた額 → 差し引く
  • 暦年課税で受けた分(贈与税を払った分を含む) → 政令の文言では差し引く対象に入っていない

例:取得対価4,500万円、省エネ等住宅で1,500万円の援助、年末残高3,200万円(当方計算)

暦年課税相続時精算課税
取得対価から差し引く額非課税の1,000万円非課税の1,000万円+特別控除の390万円
差し引いたあとの取得対価3,500万円3,110万円
控除の計算のもとになる額年末残高の3,200万円取得対価の3,110万円
0.7%をかけた額22万4,000円21万7,700円

この例では、相続時精算課税を選ぶと控除の計算のもとが90万円小さくなります。差が出るのは、年末残高が3,110万円を下回るまでです。借入限度額がそれより低い住宅なら、限度額で頭打ちになるので差は出ません。実際の控除額は、所得税と住民税から引ききれる額でも頭打ちになります。

2つの点は、税務署で確かめてください

  • 相続時精算課税の基礎控除110万円の部分を差し引くかどうか。政令は「特別控除の適用を受けた部分」と書いていますが、これを直接説明した国税庁の資料は見つけられませんでした
  • 親が60歳以上で、通常の相続時精算課税を選んだ場合。政令の文言では特別控除を受けた部分を差し引く対象に読めますが、国税庁No.1211-1の注記は、非課税の特例と60歳未満からの特例(措法70の3)だけを挙げています

1年目の確定申告で、贈与税の申告書の写しなどを添付します。書類の一覧と、補助金も引く計算は住宅ローン控除の1年目の確定申告にまとめています。

親が亡くなったとき、何が加算されるか

相続税の計算そのものには入りませんが、選ぶうえで知っておく範囲だけ書きます。

暦年課税:加算の期間が3年から7年に延びている

令和6年1月1日以後の暦年課税の贈与は、相続財産に加算する期間が相続開始前7年以内になりました。ただし段階的に延びます(国税庁No.4161)。

親が亡くなった日加算する期間
〜2026年(令和8年)12月31日相続開始前3年以内
2027年1月1日〜2030年12月31日2024年(令和6年)1月1日から亡くなった日まで
2031年(令和13年)1月1日〜相続開始前7年以内

延びた4年分(3年より前の分)は、合計100万円までは加算しません。加算された贈与に払った贈与税は、相続税から差し引きます。

なお、この加算の対象は、相続や遺贈で財産を取得した人です(国税庁No.4161)。

相続時精算課税:期間に関係なく加算する

選んだ年以降の贈与は、何年前のものでもすべて加算します。2024年以後の分は、年ごとに110万円を引いた残りです(国税庁No.4103)。

どちらでも、非課税の特例を受けた分は加算しない

国税庁No.4161は、暦年課税で加算しない財産の1つとして、次を挙げています。

(2) 直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち、非課税の適用を受けた金額

出典:国税庁 No.4161

相続時精算課税の加算でも同じ扱いです。租税特別措置法第70条の2第3項が、相続税法の2つの加算の規定(第19条第1項と第21条の15第1項)に、非課税の特例の分を加算から外す読み替えを入れています。

相続税がかからない家庭なら、加算されても税は生じません

相続税は、遺産の合計から基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を引いた残りにかかります(国税庁No.4152)。加算された額を含めても基礎控除に収まるなら、相続税はかかりません。

反対に、相続税がかかりそうな家庭では、どちらを選ぶかで将来の税額が変わります。その場合は、援助を受ける前に税理士か税務署に相談してください。

親が60歳未満なら、相続時精算課税は住宅資金の特例でだけ選べる

相続時精算課税は、本来は贈与者が60歳以上でないと選べません(相続税法第21条の9)。住宅取得等資金に限って、60歳未満の親からの贈与でも選べる特例があります(租税特別措置法第70条の3、国税庁No.4503)。

この特例も2026年12月31日までの贈与が対象です

国税庁No.4503はこう書いています。

令和8年12月31日までに、父母や祖父母などからの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得または増改築等(「新築等」といいます。)の対価に充てるための金銭(「住宅取得等資金」といいます。)を取得した場合で、一定の要件を満たすときには、贈与者がその贈与の年の1月1日において60歳未満であっても相続時精算課税を選択することができます。

出典:国税庁 No.4503

要件は非課税の特例と似ていて、翌年3月15日までに全額を充てて新築等をすること、遅くとも翌年12月31日までに住むことが求められます。

2027年以降は、12月の税制改正大綱で決まる

非課税の特例(措法70条の2)と、60歳未満からの相続時精算課税の特例(措法70条の3)は、どちらも2026年12月31日が期限です。暦年課税と、60歳以上からの通常の相続時精算課税は相続税法の本則にあり、期限の定めはありません。

国土交通省は、令和9年度の税制改正要望で、この2つを「現行の特例措置」として並べたうえで、こう要望しています。

住宅取得環境が悪化する中、高齢者からの資産の早期移転によって、住宅取得に係る負担を軽減し、住宅需要を喚起・創出するとともに、良質な住宅ストックの形成を図るため、住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置等について、必要な検討を行い、所要の措置を講じる。

出典:国土交通省「令和9年度国土交通省税制改正要望事項」

延長とも、打ち切りとも書いていません。 結論が出るのは、例年12月に公表される税制改正大綱です。要望のほかの項目は、省庁の審議会や白書をまとめている姉妹サイト「日本の審議会」の国土交通省の令和9年度税制改正要望に載せています。

しぐれ
しぐれ

2027年に援助を受ける予定なら、非課税の枠がある前提で計算を組まないでください。 上の「非課税の特例が使えない場合」の表が、延長されなかったときの姿です。

どちらにするかを決める前に確かめること

援助の額と家の条件から

  • ☐ 援助の額は、非課税の枠(省エネ等住宅1,000万円、それ以外500万円)に収まるか。収まるなら、相続時精算課税を選ぶ必要はない
  • ☐ 家は省エネ等住宅に当たるか。証明書を建築会社に頼めるか
  • ☐ 枠を超える分に、暦年課税ではいくら贈与税がかかるか(上の速算表)
  • ☐ 住宅ローン控除で、借入残高が「取得対価−差し引く額」を上回らないか

親の側の事情から

  • ☐ 援助してくれる親は、贈与の年の1月1日に60歳以上か。60歳未満なら、相続時精算課税は住宅資金の特例(2026年12月31日まで)でだけ選べる
  • ☐ その親から、今後も贈与を受ける予定があるか。相続時精算課税を選ぶと、以後の贈与もすべて相続時精算課税になる
  • ☐ その親の相続で、相続税がかかる見込みがあるか。あるなら、援助を受ける前に税理士か税務署に相談する

期限

  • ☐ 2026年中の援助なら、2027年2月1日〜3月15日に贈与税の申告書と届出書を出す
  • ☐ 屋根が載る時期と入居の時期から、贈与を受ける年を逆算したか(非課税の特例の記事)

まとめ

  • 住宅資金の援助は、非課税の特例を当てたうえで、超えた分を暦年課税か相続時精算課税で受ける
  • 暦年課税は、年110万円の基礎控除のあと累進税率。省エネ等住宅で1,500万円なら超えた500万円に48.5万円(当方計算)
  • 相続時精算課税は、年110万円の基礎控除のあと累計2,500万円まで0円、超えた分は20%。そのかわり親が亡くなったとき、110万円を引いた残りを期間に関係なく相続財産に加算
  • 一度選ぶと暦年課税に戻れない。 届出は翌年2月1日〜3月15日、期限を過ぎると選べない
  • 非課税の特例を受けた分は、どちらの方式でも相続財産に加算しない
  • 住宅ローン控除では、非課税の分と相続時精算課税の特別控除を使った分を取得対価から差し引く
  • 非課税の特例と60歳未満からの相続時精算課税の特例は2026年12月31日まで。2027年以降は12月の税制改正大綱で決まる
しぐれ
しぐれ

援助を受ける額と、受ける年と、課税方式。3つとも、契約や工事の日程と一緒に決めるものです。 金額が出れば、迷う範囲はぐっと狭くなります。

関連記事

出典

本記事は2026年10月17日時点で公表されている内容(国税庁タックスアンサーは令和8年4月1日現在法令等)に基づいています。計算例は、公表されている速算表と計算式から当方で計算した目安です。住宅取得等資金の非課税の特例と、60歳未満からの相続時精算課税の特例は令和8年12月31日が期限で、令和9年以降の取扱いは決まっていません。 相続税がかかるかどうか、どちらの方式が有利かは家庭ごとに異なります。個別の判断は、所轄の税務署または税理士にご確認ください。

よくある質問

住宅資金の援助を受けるとき、相続時精算課税と暦年贈与はどちらを選べばいいですか?

非課税の特例(省エネ等住宅1,000万円、それ以外500万円)の範囲に収まるなら、どちらでも贈与税はかからず、相続時精算課税を選ぶ必要はありません。超える部分があるときは、暦年課税なら超えた額に贈与税がかかり、相続時精算課税なら2,500万円の特別控除の範囲で贈与税は0円になる代わりに、親が亡くなったときに相続財産に加算されます。相続税がかかる見込みがあるなら、税理士か税務署に相談してから決めてください。

相続時精算課税を選んだあと、暦年課税に戻せますか?

戻せません。相続時精算課税は贈与者ごとに選びますが、一度選ぶと、その贈与者からの以後の贈与はすべて相続時精算課税になり、届出書も撤回できません。

相続時精算課税の届出はいつまでに出しますか?

最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までです。この期限を過ぎて提出した場合、相続時精算課税は適用されません。贈与税の申告書を出す場合は、申告書に届出書を添付します。

2024年から相続時精算課税は何が変わりましたか?

令和6年1月1日以後の贈与から、相続時精算課税にも年110万円の基礎控除ができました。この110万円以下の部分は贈与税の申告が不要で、親が亡くなったときにも相続財産に加算されません。一方で暦年課税は、相続財産に加算される期間が相続開始前3年から7年に段階的に延びています。

非課税の特例と相続時精算課税を一緒に使えますか?

使えます。非課税の特例を適用したあと、なお贈与税の課税価格に入る額がある場合に、その部分に相続時精算課税を使う形です。贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、非課税の特例を受ける旨を書いた贈与税の申告書に、相続時精算課税選択届出書と添付書類を付けて提出します。