注文住宅の請負契約の前に確かめること|契約金・解約・ローン特約

注文住宅の請負契約の前に確かめること|契約金・解約・ローン特約のイメージ家と住宅ローン

先に結論

  • 工事請負契約の書面に書く事項は、建設業法第19条で16項目が決まっています。支払い、遅れたとき、天災、不具合、違約金、紛争の解決方法などが、契約書か約款のどこかに書かれているはずです
  • 読むときの物差しは、国(中央建設業審議会)の「民間建設工事標準請負契約約款(乙)」。会社の約款と並べて、違うところに印を付けます
  • 自分から解約することは、完成前ならいつでもできます。ただし会社の損害を賠償します(民法第641条)。契約金がどこまで戻るかは、その時点でかかった費用しだいです
  • 構造と雨漏りの欠陥は引渡しから10年。その責任を支える保険か供託のどちらなのかは、契約書の欄で確かめられます。工事中の倒産は、この保険の対象ではありません
  • クーリング・オフは、訪問販売に当たるときだけ。展示場や会社の事務所で申し込んだ契約は、ふつう対象外です
  • 請負契約には、決まった形のローン特約がありません。 付けるなら、期限と返金の範囲を契約書に書いてもらいます

工事請負契約は、家づくりでいちばん金額の大きい契約です。 それなのに、約款(契約書に付いている細かい条件の冊子)は、署名の当日に初めて渡されることがあります。

静岡県の建設工事の相談窓口のページも、約款に説明を受けていない条件があっても、契約したあとで「納得できない」とは言えない、と注意しています。 読む時間をつくれるのは、署名の前だけです。この記事は、その時間で何をどの順に読むかをまとめたものです。

支払いの時期と割合(契約時1割・着工時3割…という国の記入例)と、前払いが多すぎるときの危うさは、注文住宅の支払いはいつ、いくら?に書きました。ここでは重ねて書かず、解約・遅れ・天災・不具合・保証・クーリング・オフ・ローン特約を扱います。

契約書に書かれているはずの16項目(建設業法第19条)

建設業法は、工事の請負契約を結ぶとき、次の事項を書面に書き、署名か記名押印をして、お互いに渡すよう定めています(第19条第1項)。 個人が家を建てる契約も、この対象です。

建設業法第19条第1項住宅の契約で何にあたるか確かめること
1 工事内容図面・仕様書・見積書契約書に「添付の図面○枚、仕様書○冊」と書かれ、実際に付いているか
2 請負代金の額契約金額見積書の合計と一致しているか。別途工事(契約に入っていない工事)は何か
3 着工と完成の時期工期・引渡し日日付か「契約の日から○日以内」か。ローンの資金が出る日・今の住まいの退去日と合うか
4 工事をしない日・時間帯休工日定めるときだけ書く
5 前払い・出来高払いの時期と方法契約金・着工金・中間金支払いの記事を参照
6 設計変更・工事の延期・中止のときの扱い打合せでの変更変更で増えた代金と工期をどう決めるか
7 天災その他不可抗力のときの扱い地震・台風で工事中に壊れたとき損害を誰が負担するか(下の「天災」の節)
8 物価の変動による変更資材の値上がり契約後に代金が上がる余地があるか
9 第三者に損害を与えたときの賠償近隣の家を傷つけたとき会社の負担か
10 注文者が資材・機械を出すときの扱い施主支給支給品の不具合の責任
11 完成検査の時期と方法・引渡しの時期竣工検査・施主検査検査に立ち会えるか
12 完成後の代金の支払時期と方法最終金引渡しと同時か
13 契約不適合(不具合)の責任と、保証保険などの措置アフターサービス・瑕疵保険期間と、保険か供託か
14 遅れ・その他の債務不履行のときの遅延利息・違約金工期遅れの違約金、支払い遅れの遅延損害金率はいくらか
15 紛争の解決方法調停人・建設工事紛争審査会どこに申し立てるか
16 その他国土交通省令で定める事項――

(建設業法第19条第1項から作成。中央の列と右の列は当方の補足)

契約の内容を変えるときも、変更の内容を書面にして、お互いに署名か記名押印をして渡すことになっています(第19条第2項)。打合せで決めた変更を口約束のままにしない根拠は、ここにあります。

契約の前に、会社から受け取れるもの

  • 材料費などを書いた見積書:建設業者は、注文者から求められたら、契約が成立するまでに、材料費・労務費などを書いた見積書を渡すことになっています(建設業法第20条第4項)
  • 値上がりのおそれの知らせ:資材が手に入りにくくなる・価格が高騰するなど、工期や代金に影響する事象のおそれがあるとき、建設業者は契約を結ぶまでに注文者に知らせることになっています(同法第20条の2第2項)。実際にそうなったときは、会社は契約のあとで工期や代金の変更の協議を申し出ることができます。注文者は誠実に応じるよう努める、という形です(同条第3項・第4項)
みぞれ
みぞれ

値上がりの知らせを受けて契約したら、あとで代金が上がることもあるの?

しぐれ
しぐれ

上がるかどうかは、契約のあとの協議しだいです。何が起きたら、どう決めるのか。契約書の「物価の変動による変更」の定めと並べて、署名の前に聞いておきたいところです。

国の標準約款(乙)を物差しにする

建設業法は、中央建設業審議会が標準請負契約約款を作って、その実施を当事者に勧めることにしています(第34条第2項。国土交通省の約款のページによる)。 個人住宅のような小さな民間工事向けのものが「民間建設工事標準請負契約約款(乙)」です。最新の改正は2025年(令和7年)12月2日で、12月12日から使われています。

住宅会社は、この約款(乙)をそのまま使うこともあれば、自社で作った約款を使うこともあります。 自社の約款でも、約款(乙)と並べて読むと、どこが注文者に厳しく、どこが手厚いかが見えます。下の表は、約款(乙)で見ておきたい条文です。

場面約款(乙)の条約款(乙)の中身(要約)
自分の都合で解約する第24条・第32条完成までは書面で通知して解除できる。会社の損害を賠償する。できている部分の代金を払い、前払金の残りは返してもらう
会社が着工しない・大きく遅れる第25条・第26条期間を決めて催告し、それでも履行しないとき解除できる。完成できないことが明らかなときなどは催告なしで解除できる
工期が遅れた第33条第2項違約金は、契約書の定めにより、遅れた日数に応じて請負代金額に年14.6%以内の割合
支払いが遅れた第34条第2項〜第4項遅れた額に年14.6%以内の違約金。最終金の支払いが済まないと、会社は引渡しを拒める
天災で工事中の建物が壊れた第14条(A・B・Cから選ぶ)・第15条どれを選んだかで負担が変わる。会社は工事中に火災保険か建設工事保険を付けて、証券の写しを出す
工期・代金の変更第20条〜第22条追加・変更は協議で決める。不可抗力などで工期の延長を求められる。資材高騰などで代金の変更を求められる(第22条(B))
引渡し後の不具合第23条・第35条修補を求め、直らなければ減額を求められる。期間は原則として引渡しから2年。構造と雨水は10年

(民間建設工事標準請負契約約款(乙)令和7年12月2日改正までの本文から作成)

ここから、お金にかかわるところを順に見ます。

自分から解約するとき(民法第641条・約款第24条)

民法には、請負の注文者が契約をやめられる定めがあります。

請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。

(民法第641条)

約款(乙)も同じ形で、次のように書いています。

発注者は、工事が完成するまでの間は、必要があると認めるときは、書面をもって受注者に通知して工事を中止し、又はこの契約を解除することができる。

(民間建設工事標準請負契約約款(乙)第24条第1項)

同じ項の続きで、発注者(注文者)は、これによって生じる受注者(建築会社)の損害を賠償する、とされています。 つまり解約そのものは止められませんが、無償ではありません。

解約したあとの清算は、約款(乙)第32条にあります。

  • 完成前に解除されたときは、注文者ができている部分(出来形)と検査済みの材料・設備を引き受け、その分の代金を払う
  • 前払金に残りがあれば、会社はそれを返す。注文者の都合の解除(第24条)なら、利子は付かない
  • そのほかの処理は、民法に従って協議して決める

契約金が「ほとんど戻らない」ことがある

国民生活センターの紛争解決委員会が公表した事例に、住宅展示場から話が進んだ注文住宅の契約を、着工前に解約したものがあります。申請者は契約時に100万円を払っていました。会社側は、設計・建築確認の申請・敷地調査がすでに済んでいたと主張しました。その費用を差し引くと、残りはほとんどないという説明です(設計68万4800円、建築確認10万円、敷地調査10万円などを挙げていた)。

委員会は、書面や録音が残っておらず、双方の主張のどちらが正しいか判断が難しいとしたうえで、和解金10万円の返金で和解しています。

(国民生活センター 報道発表資料 令和3年3月18日 事案19)

この事例から読み取れるのは、契約の直後から、設計や申請の費用が積み上がっていくことです。 契約前に、次の2つを聞いておくと、解約したときの金額を自分で見積もれます。

  • 契約から着工までに、何にいくらかかるか(設計・確認申請・地盤や敷地の調査など)
  • 解約したとき、どの費用を差し引くと約款に書いてあるか。「契約金は返還しない」とだけ書かれていないか

違約金の定めには上限の考え方がある

個人が事業者と結ぶ契約を、消費者契約といいます。解除したときの損害賠償の額や違約金を前もって決めておく条項は、同じ種類の契約の解除で事業者に生じる平均的な損害の額を超える部分が無効です(消費者契約法第9条第1項第1号)。事業者は、消費者から求められたら、その額の算定の根拠の概要を説明するよう努めることになっています(同条第2項)。

どこまでが「平均的な損害」かは、個別の契約と事情で決まります。金額に納得できないときは、消費者ホットライン(188)で近くの消費生活センターに相談できます。

会社が着工しない・工期が遅れるとき

約款(乙)では、会社が正当な理由なく着工しないときや、工程表より大きく遅れて工期内に完成する見込みがないときに、期間を決めて催告し、その期間内に履行がなければ解除できます(第25条第1項)。 会社が資金不足で不渡りを出すなど、工事を続けられないおそれがあるときや、完成させられないことが明らかなときは、催告なしで解除できます(第26条第1項)。

工期が遅れたときの違約金は、約款(乙)では「契約書の定めるところにより」となっています(第33条第2項)。 率を決めるのは契約書の側なので、契約書に遅延の違約金の欄があるか、率はいくらかを見ます。

支払いが遅れると、引渡しを受けられないことがある

約款(乙)では、注文者が最終金を払い終えないとき、会社は年14.6%以内の違約金を請求でき、建物の引渡しを拒むことができます(第34条第2項・第4項)。 住宅ローンの資金が出る日が引渡し予定日より後になると、この条文にかかります。ローンの資金が出る日の決まり方は、事前審査と本審査と支払いの記事に書きました。

天災で工事中の建物が壊れたとき(危険負担)

地震や台風など、どちらの責任でもない出来事(不可抗力)で、工事中の建物や現場の材料が壊れたとき、損害を誰が負担するか。 約款(乙)第14条は、3つの書き方から1つを選ぶ形になっています。

約款(乙)第14条損害の負担
(A)協議して重大なものと認め、かつ会社が十分な注意をしていたと認められるものは、注文者が負担する。火災保険などで補われる額は差し引く
(B)重大なものについて会社が十分な注意をしていたと認められるときは、損害額と双方の負担額を協議して決める。保険で補われる額は差し引く
(C)会社が負担する

(民間建設工事標準請負契約約款(乙)第14条から作成)

どれを選んでいるかで、同じ台風でも自己負担が変わります。 自社の約款なら、「不可抗力」「天災」「危険負担」の言葉で探します。 あわせて、約款(乙)では会社が工事中に火災保険か建設工事保険を付け、証券の写しを注文者に出すことになっています(第15条)。写しを受け取れるかも聞いておきます。

引渡し後の不具合(契約不適合)

引き渡された家が契約の内容と違う(不具合がある)とき、約款(乙)では、注文者は書面で修補を求め、相当の期間に直らなければ、その程度に応じて代金の減額を求められます(第23条)。

求められる期間は、約款(乙)第35条でこう分かれています。

部分約款(乙)の期間
原則引渡しから2年以内
設備の機器本体、室内の仕上げ・装飾、家具、植栽など引渡しのときに検査して、すぐに求める。そのときの一般的な注意で見つけられなかったものは、引渡しから1年
新築住宅の構造耐力上主要な部分・雨水の浸入を防止する部分引渡しから10年

(民間建設工事標準請負契約約款(乙)第35条から作成。会社の故意・重大な過失による不具合は、この期間ではなく民法による)

いちばん下の10年は、法律で決まっています。住宅を新築する請負契約では、請負人は引渡しから10年間、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分の瑕疵(欠陥)について責任を負い、これより注文者に不利な特約は無効です(住宅品質確保法第94条第1項・第2項)。

約款がなければ「知ってから1年以内に通知」

契約に期間の定めがなければ、民法の原則になります。注文者が不具合を知った時から1年以内に請負人に通知しないと、修補や減額などを求められなくなります(民法第637条第1項)。約款(乙)は、この規定を約款の期間には使わないと定めています(第35条第7項)。 会社の約款の期間が、約款(乙)より短くなっていないかを見ます。

10年の責任を支える「保険か供託」(住宅瑕疵担保履行法)

10年の責任があっても、会社がなくなれば直してもらえません。 そこで住宅瑕疵担保履行法は、新築住宅を引き渡す建設業者に、保険に入るか、保証金を供託する(法務局などに預ける)かのどちらかを義務づけています。

保険供託
仕組み国土交通大臣が指定した保険法人の保険に会社が入る会社が引き渡した戸数に応じた保証金を供託所に預ける。引渡し後10年間は基本的に取り戻せない
法律の要件など保険金額2,000万円以上、引渡しから10年以上有効。会社が相当の期間を過ぎても直さないときは、注文者が保険法人に直接請求できる1戸だけ引き渡した会社で計2千万円など、戸数に応じた額
契約前に受け取るもの契約書の「瑕疵担保責任の履行に関する措置」の欄に、保険法人の名称・保険金額・保険期間契約を結ぶまでに、供託所の所在地などを書いた書面を受け取り、説明を受ける

(住宅瑕疵担保履行法第2条第6項・第3条・第10条、国土交通省「住宅瑕疵担保履行法Q&A」、民間建設工事標準請負契約約款(乙)契約書「八」から作成)

国土交通省のQ&Aは、この措置は発注者や買主が「要らない」と考えていても、会社の義務だと説明しています。 対象は、品確法の10年の責任と同じ範囲、つまり構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分です。 保険が埋めるのは、引き渡した新築住宅にこの瑕疵があった場合の損害です(同法第2条第6項)。

みぞれ
みぞれ

この保険があれば、工事中に会社が倒産しても大丈夫?

しぐれ
しぐれ

そこが取り違えやすいところです。保険が見ているのは引渡しのあとの欠陥で、工事の途中で止まったときの前払いの損や引継ぎは、次の節の話になります。

工事中に会社が倒産したら(完成保証)

工事中に会社が工事を続けられなくなると、払った額のうち、まだ形になっていない分が宙に浮きます。この点と、前払いの割合の考え方は支払いの記事に書きました。

静岡県の建設工事の相談窓口のページは、工事の途中で請負業者が倒産したときに対応を求める先として、完成保証人と完成保証制度を挙げています。 同ページでは、完成保証制度を、会社が倒産などで工事を続けられなくなったときに、代わりの建設業者のあっせん、増えた工事費用、前払金の損害などを保証する制度として説明しています。

住宅瑕疵担保履行法が義務づけているのは、引渡し後の瑕疵への備え(保険か供託)です。工事中の倒産への備えは、この法律の対象ではありません。 完成保証に入っているかどうかは、会社と契約しだいです。

完成保証について聞くこと

  • この契約は、完成保証制度などの対象になるか。なるなら、保証書や申込みの書面を受け取れるか
  • 何を、いくらまで保証するのか(前払金の損害か、増えた工事費用か、その両方か)
  • 対象にならないなら、前払いの割合を工事の進み具合に近づけられるか

クーリング・オフができる場合、できない場合

請負契約にクーリング・オフ(一定の期間なら理由を問わず申込みの撤回や解除ができる仕組み)が使えるのは、特定商取引法の「訪問販売」に当たるときだけです。 建築会社がする工事の請負は、法律の言葉では「役務提供契約」で、場所などの条件に当てはまれば訪問販売になります。

訪問販売とは、事業者が営業所等以外の場所で契約の申込みを受けたり、契約を結んだりすることなどをいいます(特定商取引法第2条第1項)。営業所等は、営業所・代理店・露店などです(同法施行規則第1条)。消費者庁の通達は、「営業所」を登記された本店・支店に限らず、広く営業が行われる場所で、通常は店舗のことだと説明しています。

申込み・契約をした場所と経緯クーリング・オフ
会社の事務所・店舗で申込みも契約もした対象外(訪問販売に当たらない)
会社の事務所・店舗で申し込み、契約だけ自宅でした対象外(第9条第1項のかっこ書き)
会社が自宅に来て、自宅で申込みや契約をした(会社から電話でアポイントを取って来た場合を含む)対象。法律で決められた書面を受け取った日から8日以内
自分から「契約したいので自宅に来てほしい」と頼み、自宅で契約した対象外(第26条第6項第1号)
資料請求や問合せをしたら「説明に伺います」と言われ、承諾した自分から頼んだことにはならず、対象になりうる

(特定商取引法第2条・第9条・第26条、同法施行規則第1条、消費者庁 通達「特定商取引に関する法律等の施行について」〈令和6年11月19日〉から作成)

消費者庁の通達は、第26条第6項第1号の「請求した者」に当たらない場合を、次のように書いています。

販売業者等の方から電話をかけ、事前にアポイントメントを取って訪問する場合も同様に同号には該当しない。

(消費者庁・経済産業省 通達「特定商取引に関する法律等の施行について」令和6年11月19日)

訪問販売に当たる契約でクーリング・オフをすると、会社は損害賠償や違約金を請求できず、受け取ったお金を速やかに返します。工事で土地や建物の現状が変わっていれば、注文者は無償で元に戻すよう求められます(特定商取引法第9条第3項・第6項・第7項)。通知は書面か電磁的記録で、発信した時に効力が生じます(同条第2項)。

住宅展示場で申し込んだ場合

住宅展示場のモデルハウスが「営業所等」に当たるかどうかを直接述べた公的な資料は、見つけられませんでした。判断はその場所の実態によります。 展示場で申込書を書いた契約は、クーリング・オフの対象外になることがあります。 後から取り消せる前提に立たず、署名の前に読む時間をとっておきます。迷ったときは、消費生活センター(188)に場所と経緯を伝えて相談できます。

土地の売買は別の法律

不動産会社(宅建業者)が自ら売主になる土地の売買は、特定商取引法ではなく宅地建物取引業法第37条の2のクーリング・オフの対象になります。事務所等以外の場所で申込みや契約をした場合で、撤回できることとその方法を告げられた日から8日以内、などの条件があります。建築条件付きの土地を買う場合は、土地と建物で別々に確かめます。

ローン特約は「請負契約には標準の形がない」

土地の売買では、ローンが通らなかったときの扱い(一般に「ローン特約」)が、不動産会社の重要事項説明の対象になっています。 建物の工事請負契約には、そうした仕組みがありません。 国の約款(乙)にも、融資やローンについての定めはありません(本文に「融資」「ローン」の語は出てきません)。

ローン特約がないまま契約し、本審査が通らずに解約すると、法律の形としては民法第641条の、注文者の都合による解除になります。その場合は、上で見たとおり会社の損害を賠償することになります。

請負契約のローン特約で確かめること

  • 特約があるか。あるなら契約書の本文か、別紙の覚書か
  • 何が起きたら解除できるのか(本審査の否決、減額、金利の条件など)
  • いつまでに解除の通知をすればよいか(期限)。期限までに本審査の結果が出る日程か
  • 解除したとき、契約金が全額戻るのか、すでにかかった費用を差し引くのか
  • 申し込む金融機関・借入額が特定されているか(「本人が申込みをしなかった場合」の扱い)

土地の契約のローン特約の期限から逆算して本審査を出す時期は、住宅ローンの事前審査と本審査の「出す時期」の節に書きました。土地と建物の両方の契約にローン特約を付ける場合は、2つの期限が同じ本審査の結果を待つことになるので、日程を一つの表に並べておきます。

契約前の「申込金」と契約金

請負契約の前に、「申込金」「予約金」「設計申込金」などの名前でお金を求められることがあります。 これらの名前に、法律で決まった意味はありません。 同じ名前でも、会社によって扱いが違います。

  • 契約しなかったとき、全額戻るのか、何かを差し引くのか
  • 契約したとき、契約金に充てられるのか
  • そのお金で、どんな作業(プラン作成・地盤調査など)が始まるのか

この3つを、申込書や領収書に書いてもらうのが確かめ方です。口頭の「あとで返します」は、上の国民生活センターの事例のように、あとで書面がないことが問題になります。

一方、請負契約に署名したあとに払う契約金は、解約すれば、その時点までの費用や損害と清算されます(民法第641条、約款(乙)第24条・第32条)。署名と同時に払う契約金は「契約が進まなければ戻るお金」ではない、と考えておきます。

署名の前のチェック表

契約書・約款・見積書を手元に置いて、上から順に確かめます。

書類がそろっているか

  • ☐ 契約書・約款・図面・仕様書・見積書がそろい、契約書に添付の枚数が書かれている
  • ☐ 約款を署名の数日前に受け取って、読んでいる
  • ☐ 求めれば、材料費などを書いた見積書を受け取れた(建設業法第20条第4項)
  • ☐ 資材の値上がりのおそれについて、知らせを受けたか、受けていないかを確かめた(同法第20条の2)

お金と日程

  • ☐ 請負代金に入っていない工事(別途工事)と、その概算が分かっている
  • ☐ 支払いの回数・割合・時期が、ローンの資金が出る日と並べて無理がない(支払いの記事)
  • ☐ 工期と引渡し日が日付で書かれ、今の住まいの退去日・ローンの日程と合っている
  • ☐ 工期が遅れたときの違約金の定めと率
  • ☐ 支払いが遅れたときの違約金の率と、引渡しの扱い
  • ☐ 物価の変動で代金が変わる定め(何が起きたら、どう決めるか)

解約と特約

  • ☐ 自分の都合で解約したとき、契約金からどの費用が差し引かれるか(設計・確認申請・調査の費用の目安)
  • ☐ 「契約金は返還しない」などの一律の定めになっていないか
  • ☐ ローン特約の有無、解除できる条件、期限、返金の範囲
  • ☐ 契約前に払ったお金(申込金など)の扱いが書面にある
  • ☐ クーリング・オフの対象になる契約かどうか(申込み・契約の場所と経緯)

工事中と引渡し後

  • ☐ 天災で工事中に壊れたときの負担(約款(乙)第14条のA・B・Cのどれに近いか)
  • ☐ 工事中の火災保険・建設工事保険の証券の写しを受け取れるか
  • ☐ 瑕疵の措置が保険か供託か。保険なら保険法人の名称・保険金額・期間、供託なら供託所の所在地などの書面
  • ☐ 不具合を求められる期間(構造・雨水の10年と、それ以外の期間)
  • ☐ 完成保証制度などの対象か。何を、いくらまで保証するか
  • ☐ 紛争になったときの解決方法(調停人・建設工事紛争審査会など)

客先で契約の説明をするときの注意

住宅会社の営業担当の方が、お客様に契約を説明するときに確かめてほしいことです。

説明の前に

  • 約款を契約日より前に渡す。静岡県の相談窓口のページも、約款に目を通すよう注意している
  • 「解約したら契約金は戻りません」とだけ言わない。解約したときに差し引く費用の中身を、時期ごとに説明できるようにしておく
  • 瑕疵の措置が保険か供託かを伝える。供託なら、契約を結ぶまでに書面を渡して説明する義務がある(住宅瑕疵担保履行法第10条)
  • 自宅で申込みや契約をする場合は、訪問販売に当たるかどうかを社内で確かめる。当たるなら法律で決められた書面が要る
  • ローン特約を付けるかどうか、付けないならその理由を、お客様が分かる形で残す

まとめ

  • 請負契約の書面には、建設業法第19条の16項目が書かれているはず。変更も書面にする
  • 物差しは国の民間建設工事標準請負契約約款(乙)。会社の約款と並べて違いを見る
  • 完成前の解約はいつでもできるが、会社の損害を賠償する。契約直後から設計・申請・調査の費用が積み上がる
  • 違約金の定めは、平均的な損害を超える部分が無効(消費者契約法第9条)
  • 天災の負担は約款の選び方で変わる。工事中の保険証券の写しも確かめる
  • 構造と雨水の欠陥は引渡しから10年。保険か供託かは契約書の欄と事前の書面で分かる。工事中の倒産は対象外で、完成保証は会社しだい
  • クーリング・オフは訪問販売に当たるときだけ。展示場・事務所で申し込んだ契約はふつう対象外
  • 請負契約には標準のローン特約がない。付けるなら条件・期限・返金の範囲を書面に

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出典

本記事は2026年10月17日時点で公表されている内容に基づいています。工事請負契約の条件は、建築会社との契約書と約款で決まります。クーリング・オフの対象になるかどうかは、申込み・契約の場所と経緯によって個別に判断されます。個別の契約の判断は、契約先の建築会社のほか、消費生活センター(消費者ホットライン188)や、都道府県の建設工事紛争審査会などの窓口にご確認ください。

よくある質問

注文住宅の請負契約は、契約したあとでも解約できますか?

建物が完成する前なら、注文者はいつでも解約できます(民法第641条)。ただし、建築会社に生じた損害を賠償する必要があります。国の標準約款(乙)も同じ形で、解約したときは、できている部分や検査済みの材料を引き受けてその分の代金を払い、払いすぎた前払金は返してもらう、という清算になっています。

注文住宅の契約にクーリング・オフは使えますか?

使えるのは、特定商取引法の訪問販売に当たる場合だけです。自宅など、会社の営業所等以外の場所で申込みや契約をした場合が中心で、法律で決められた書面を受け取った日から8日以内です。会社の営業所で申し込んだ場合や、自分から「契約したいので自宅に来てほしい」と頼んだ場合は対象外です。

請負契約にもローン特約はありますか?

土地の売買契約と違い、請負契約には法律や国の標準約款に決まった形のローン特約がありません。付けるかどうか、期限や返金の範囲をどうするかは、建築会社との契約で決めます。特約がないまま契約し、ローンが通らずに解約すると、民法第641条の解除として損害の賠償を求められることがあります。

新築住宅の欠陥は、何年まで直してもらえますか?

柱・基礎などの構造耐力上主要な部分と、雨水の浸入を防ぐ部分の欠陥は、引渡しから10年間、建築会社が責任を負います(住宅品質確保法第94条)。これより短くする特約は無効です。それ以外の部分の期間は契約で決まり、国の標準約款(乙)では原則として引渡しから2年です。