先に結論
- 繰上げ返済・iDeCo・NISAは、得られるものの性格が違う。 繰上げは利息が減ることが確定し、iDeCoは税金が減ることが確定し、NISAは何も確定しない
- 住宅ローン控除の期間中、繰上げで減るのは「金利−0.7%」の分。 年末残高が借入限度額以下で、控除を引ききれている年の話
- 控除が終わったあとは「金利そのもの」が減る。 控除が減る心配がなくなる
- iDeCoは、所得税・住民税がどこまで残っているかで効き方が変わる。 原則60歳まで引き出せない
- NISAは、いつでも売れるが元本割れがある。 運用益に税金がかからない
- どれか1つに決めなくてよい。 先に手元に残すお金を分け、残りをどう配るかを考える

家を買ったあと、毎月の家計に余裕が出てきたときや、ボーナスが入ったとき。 そのお金を住宅ローンの繰上げ返済に回すか、NISA・iDeCoに回すかで迷うところです。
この記事は、どれかを勧めるものではありません。比べるときの物差しを、住宅ローン控除の期間中と終わったあとに分けて並べます。 買う前の「頭金に入れるか、NISAに回すか」は、頭金とNISA、どちらにお金を回すかにあります。 控除の期間中に繰上げたときの控除の減り方は繰上げ返済と住宅ローン控除で計算しています。
3つの行き先は、性格が違う
まず、それぞれに回したお金がどうなるかを並べます。
| 繰上げ返済 | iDeCo | NISA | |
|---|---|---|---|
| 確定するもの | 将来の利息が減る | 掛けた年の税金が減る | なし |
| 元本割れ | ない(減るのは借金) | ある | ある |
| お金を引き出せるか | 戻らない | 原則60歳まで受け取れない | 売ればいつでも |
| 税金の扱い | 住宅ローン控除が減ることがある | 掛金は全額所得控除。運用益は非課税 | 運用益が非課税 |
| かかる費用 | 繰上げの手数料(金融機関による) | 口座の手数料がかかる | 商品による |
出典:国税庁 No.1135、iDeCo公式サイト、金融庁NISA特設サイト
繰上げ返済は、借入金利の分だけ将来の利息が減ることが、繰り上げた時点で決まります。値動きはありません。 そのかわり、一度返したお金は手元に戻りません。
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、掛金が全額、所得から差し引かれます(国税庁 No.1135)。 iDeCo公式サイトの例では、毎月1万円・所得税10%・住民税10%で年2.4万円の税金が減ります。 ただし受け取りは原則60歳からで、60歳から受け取るには加入期間などが10年以上必要です。 口座を持つあいだは手数料もかかります。国民年金基金連合会に払う手数料は、2027年1月26日の引き落とし分から月120円になります。
NISAは、運用で増えた分(売却益・配当)に税金がかかりません(金融庁)。通常は約20%かかる税金です。 年間360万円、生涯で1,800万円まで使え、売れば翌年以降にその分の枠が戻ります。 ただ、投資した額を下回ることもあります。

iDeCoで税金が年2.4万円も減るなら、それがいちばん得なんじゃないの?

減る税金は確かに大きい場合があります。ただ、60歳まで使えないお金です。それと、住宅ローン控除で税金がすでに減っている人は、話が変わります。
先に、手元に残すお金を分ける
3つのどれに回しても、すぐに使えるお金は減ります。 繰上げとiDeCoは戻らず、NISAは売るときに値下がりしていることがあります。 だから比べる前に、手元に残すお金を先に分けます。
手元に残すお金を考えるときの材料
- 数か月分の生活費。 病気やけが、転職で収入が減ったとき用
- 数年以内に決まっている出費。 車の買い替え、子どもの入学、家の修繕
- 変動金利なら、金利が上がったときの返済の増加分。 0.25%上がると、残高3,000万円で1か月目の利息は6,250円増える
- 育休・時短で手取りが減る期間の不足分
何か月分を残すかは、家計によって違います。金利が上がったときに返済がいつから増えるかは変動金利が上がったら返済はいつから増える?に、育休中の家計は育休中の住宅ローン返済にあります。
住宅ローン控除の期間中:繰上げは「金利−0.7%」で考える
住宅ローン控除は、年末残高等×0.7% です(国税庁 No.1211-1)。新築なら控除の期間は原則13年です。 控除の期間中に繰上げ返済をすると、年末残高が減るので、控除も減ることがあります。
1年あたりで動くのは、次の2つです。
- 減る利息 … 繰り上げた額 × 借入金利
- 減る控除 … 繰り上げた額 × 0.7%(年末残高が借入限度額以下で、控除を引ききれている年だけ)
100万円を繰り上げたときの1年目(試算)
| 借入金利 | 減る利息 | 減る控除 | 差し引き |
|---|---|---|---|
| 0.5% | 5,000円 | 7,000円 | −2,000円 |
| 1.0% | 10,000円 | 7,000円 | +3,000円 |
| 2.0% | 20,000円 | 7,000円 | +13,000円 |
| 3.0% | 30,000円 | 7,000円 | +23,000円 |
(当方計算。1年目の目安。減る利息は2年目以降も、返済が終わるまで続く。年末残高が借入限度額を超えている年や、控除を引ききれていない年は、減る控除が0円になる)
借入金利が0.7%より低いと、控除の期間中は差し引きがマイナスになる年があります。 変動金利が上がって0.7%を超えると、この差し引きはプラスに変わります。
控除の期間中の繰上げで、もう1つ気をつけること
繰上げで返済の期間が10年未満になると、その年分から住宅ローン控除が受けられなくなります(国税庁 No.1225 の質疑応答)。 期間を短くする型(期間短縮型)で大きく繰り上げるときは、残りの期間を確かめます。くわしくは繰上げ返済と住宅ローン控除にあります。
iDeCoは、税金がどこまで残っているかで効き方が変わる
iDeCoで減るのは、掛金×(所得税率+住民税率) です。所得税率は所得によって5〜45%です(国税庁 No.2260)。住民税は10%で計算しています。
| 毎月の掛金 | 所得税5%+住民税10% | 所得税10%+住民税10% | 所得税20%+住民税10% |
|---|---|---|---|
| 1万円(年12万円) | 1.8万円 | 2.4万円 | 3.6万円 |
| 2万円(年24万円) | 3.6万円 | 4.8万円 | 7.2万円 |
(当方計算。掛金×税率。復興特別所得税は入れていない)
この表は、税金を払っている人の場合です。住宅ローン控除の期間中は、ここに注意が要ります。
住宅ローン控除は、まず所得税から引き、引ききれない分を住民税から引きます。 住民税から引けるのは、前年分の所得税の課税総所得金額等の5%(最高97,500円)までです(総務省)。 住宅ローン控除で所得税がほぼ0円になっている人は、iDeCoで所得税が減る余地が小さく、表の額より少なくなることがあります。
自分がどの場合かの見分け方は、iDeCoと住宅ローン控除の併用で源泉徴収票から計算しています。

iDeCoの税金の減り方と、繰上げの利息の減り方って、同じように比べていいの?

そのまま並べると取り違えます。iDeCoの軽減は掛けた年に1回で、お金はその後60歳まで動かせません。繰上げの利息の減りは、返済が終わるまで毎年続きます。
NISAは、何も確定しない
NISAに回したお金は、値上がりも値下がりもします。仮に年3%で増えたら、100万円は1年で3万円増えます。 ただしこれは仮定で、増えると決まっているわけではありません。下がった年に売れば、投資した額を下回ります。
NISAが他の2つと違うのは、売ればいつでも現金にできるところです。 手元のお金と繰上げ返済の間に置く、という考え方もできます。ただ、使いたいときに値下がりしていることもあります。
住宅ローン控除が終わったあと:繰上げは「金利そのもの」
控除の期間が終わると、繰上げで控除が減る心配はなくなります。繰上げで減るのは、借入金利の分の利息そのものです。 上の表でいえば、「減る控除」が0円になり、減る利息がそのまま残ります。
| 借入金利 | 100万円を繰り上げた1年目に減る利息 |
|---|---|
| 0.5% | 5,000円 |
| 1.0% | 10,000円 |
| 2.0% | 20,000円 |
| 3.0% | 30,000円 |
(当方計算。1年目の目安。2年目以降も返済が終わるまで続く)
iDeCoとNISAの仕組みは、控除が終わっても変わりません。 変わるのは、住宅ローン控除で減っていた所得税・住民税が元に戻ることです。そのぶん、iDeCoの所得控除が効く余地は広がります。
控除の終わる年は、年末調整で使う「住宅借入金等特別控除証明書」の残りの年分で分かります(住宅ローン控除の年末調整)。
年齢と時期でも、向き不向きが変わる
- iDeCoは原則60歳から受け取るお金です。2026年12月からは、条件を満たせば70歳未満まで加入できるようになる予定です(iDeCo改正は2026年12月から)
- 繰上げ返済は、返済の終わりが近いほど、減る利息の合計は小さくなります
比べる順番
ここまでを、比べる順番にまとめます。
繰上げ返済・iDeCo・NISAを比べる順番
- 手元に残すお金を先に分ける(生活費・決まった出費・金利上昇への備え)
- 60歳まで使わないと言えるお金かを考える。言えないお金は、iDeCoには向かない
- 所得税・住民税がどこまで残っているかを源泉徴収票で見る。iDeCoの効き方がここで決まる
- 控除の期間中なら、借入金利と0.7%を比べる。 年末残高が借入限度額を超えている年は、控除は減らない
- 控除が終わったら、借入金利そのものが繰上げの効果になる
- NISAは、値下がりしても売らずに待てる期間があるかで考える
どれか1つに全部を回す必要はありません。毎月の余裕を分けて、一部を繰上げ用に貯め、一部をNISAやiDeCoに回すこともできます。 割合は、手元に残すお金の厚さと、金利、年齢で変わります。
NISAやiDeCoの口座は、証券会社・銀行などで開けます。どの金融機関でどの商品を買うかは、この記事では扱いません。
まとめ
- 繰上げ返済は利息が減ることが確定し、iDeCoは掛けた年の税金が減ることが確定し、NISAは何も確定しない
- 3つとも、すぐに使えるお金を減らす。比べる前に手元に残すお金を分ける
- 住宅ローン控除の期間中、繰上げの効果は「繰り上げた額×(金利−0.7%)」が目安。年末残高が借入限度額以下で、控除を引ききれている年の話
- 繰上げで返済の期間が10年未満になると、控除がなくなる
- iDeCoは掛金×(所得税率+住民税率)だけ税金が減る。住宅ローン控除で所得税がほぼ0円の人は、それより少なくなることがある。原則60歳まで引き出せない
- NISAはいつでも売れるが、元本割れがある
- 控除が終わったあとは、繰上げの効果は借入金利そのもの
どこに回すかは、金利と税金と、いつ使うお金かの3つで決まります。その数字は、返済のお知らせと源泉徴収票に載っています。
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- こどもNISAは2027年1月から|年60万円・上限600万円・払出しの条件
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.1211-1「住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」
- 国税庁 タックスアンサー No.1225 関連の質疑応答
- 総務省「個人住民税における住宅借入金等特別税額控除」
- 国税庁 タックスアンサー No.1135「小規模企業共済等掛金控除」
- 国税庁 タックスアンサー No.2260「所得税の税率」
- iDeCo公式サイト「iDeCoのメリット」
- iDeCo公式サイト「iDeCoの加入資格・掛金・受取方法等」
- 国民年金基金連合会「iDeCo加入中の手数料の変更について」
- 金融庁 NISA特設ウェブサイト「NISAを知る」
本記事は2026年10月24日時点で公表されている内容にもとづく制度の説明です。試算は当方の計算で、金利や運用成績の予想ではありません。NISA・iDeCoで投資した商品は値下がりし、投資した額を下回ることがあります。特定の金融機関・金融商品をすすめるものではありません。住宅ローン控除・所得控除の扱いは所轄の税務署に、繰上げ返済の条件は借入先の金融機関の窓口でご確認ください。
よくある質問
住宅ローン控除の期間中は、繰上げ返済をしないほうがいいですか?
一概には言えません。控除の期間中は、繰り上げた額×借入金利の利息が減る一方、年末残高が借入限度額以下で控除を引ききれている年は、繰り上げた額×0.7%の控除も減ります。借入金利が0.7%より高ければ利息の減りが上回り、低ければ控除の減りが上回ります。返済期間が10年未満になると控除そのものがなくなる点にも注意が要ります。
iDeCoと繰上げ返済は、何を比べればいいですか?
iDeCoは掛金に所得税率と住民税率をかけた額だけ、掛けた年の税金が減ります。月1万円・所得税10%・住民税10%なら年2.4万円です。そのかわり原則60歳まで引き出せず、運用によっては元本割れします。繰上げ返済は減る利息が確定しますが、出したお金は戻りません。住宅ローン控除で所得税がほぼ0の人は、iDeCoで減る税金が小さくなる場合があります。
NISAに回すのと繰上げ返済は、どちらが得ですか?
前もっては決まりません。繰上げ返済で減る利息は借入金利で決まりますが、NISAの運用益は値動きしだいで、元本割れもあります。NISAは売ればいつでも現金にできる点が、繰上げ返済やiDeCoと違います。
住宅ローン控除が終わったら、比べ方はどう変わりますか?
控除が減る心配がなくなるので、繰上げ返済で減る利息は借入金利そのものになります。iDeCoとNISAの仕組みは変わりません。控除の終わる年は、年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書の残りの年分で分かります。



